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501/1565

501 それぞれの役割

誤字を見つけたので訂正しました。内容に変更はありません。

今のはKОパンチの手ごたえだった。

大陸の果てまで吹っ飛ばす勢いで食らわした一撃に、偽国王の体は闇の瘴気をまき散らしながら、部屋の外まで飛ばし出された。


だが、拳に手ごたえを感じると同時に、俺はいつの間にか腹に巻き付いた闇の触手に引っ張られ、

偽国王と共に部屋から外へと引っ張り出された。


「なにッツ!?」


「バカがッツ!油断したな!闇ならばどこでも操れるのを忘れたか!」


「くッツ!」


俺の腹に巻き付いた闇の触手は、いつの間にか偽国王の体に繋がっていた。


部屋中に充満している闇は、言わば全てが結び繋がっている。

そう考えれば俺の腹を掴む闇、それを自分と結びつける事に距離は関係ないという事か!



三階から外へ出された俺は、落下しながらも、目の前にいる偽国王と睨み合う形になった。

正確な高さは分からないが、ここから地上まで数十メートはあるだろう。

問題は、この高さから落ちて俺が耐えきれるかだ。



「死ねぇぇぇーーーッツ!」


闇の触手を操り、俺の体を自分の下に持って来ると、両腕を掴み押さえる。

このまま俺を地面に叩きつけるつもりだ!


「人を超越した俺はこの程度では死なん!だが貴様はどうかなぁぁーッツ!」


威勢よく大声でわめいているが、顔の左半分、特に頬と左目の辺りは深く抉れており、白い蒸気が絶え間なく吹き出ている。

態度に出さないのは大したものだが、さっきの俺の一撃は、やはり相当なダメージを与えていたようだ。

しかし、それでもこいつは闇の瘴気で護られている。

このまま地上に激突した場合、こいつはほとんどダメージを被らず。俺だけが致命傷を負う可能性は十分にあった。


「オラァァァーーーーーッツ!」


俺は足に光の力を集めて両膝を曲げると、反動を付け、両足を揃えて偽国王の腹に叩き込んだ!


「ぐぁっつ!」


俺の両腕を掴んでいた偽国王の手が緩む!

その機に偽国王の首に腕を巻き付け、体を入れ替えた!


「ぐッツ!オォォォォォーーーーーッツ!」


自分の体を下にされ、偽国王は俺の腕から首を抜こうともがくが、俺も全力で押さえつける!


「させるかぁッツ!」


地面が視界いっぱいに広がったその時、俺は全身を纏う光に全力を注ぎこんだ。

偽国王はこのまま地面に叩きつけるが、俺も自分の身を守らねばならない!


ぶつかる!


覚悟を決めた瞬間、凄まじい衝撃が全身を襲い目の前が真っ暗になった。


濛々と上がる土煙がアラタと偽国王を隠した。







「アラタさん!」


闇に引っ張られアラタの姿が消え落ちた時、エリザベートは声を上げローザの結界から飛び出そうとした。


「エリザ様!出てはいけません!」


慌ててローザがエリザの手を掴む。

壁が破壊され、偽国王が外へ出されたと言っても、室内にはまだまだ闇の瘴気が立ち籠っている。

触れるだけで体に負担のかかる瘴気の中に、エリザベートを出す訳にはいかなかった。


「ローザ・・・ですがあれでは!」


「・・・エリザ・・・落ち着き、なさい」


取り乱すエリザベートに、たしなめるように声をかけたのは、母である王妃アンリエールだった。


「お母様!」


体を起こすが、少し辛そうに額に手をあてている。


「お母様、大丈夫なのですか!?」


エリザベートが駆け寄ると、アンリエールは微笑んでエリザベートの頭に手を乗せた。


「エリザ・・・なにがあったか分かりませんが、落ち着きなさい。ローザ、状況を教えてください」


「アンリエール様、ご無事でなによりです」


顔を向けられたローザは、返事をして頭を下げると、アンリエールが起きるまでにあった事を説明した。



「・・・そうでしたか。ローザ、苦労をかけました。レイマートもレミューも私のために追って来てくださったのですね・・・」


話しを聞き終えたアンリエールは、ゆっくりと立ち上がった。


「お母様、まだ起きては・・・」


「皆が命を懸けているのに、私だけ寝ていられません。レイマート、レミュー、リーザに早くヒールをかけなければ。エリザ、アラタさんももちろん心配です。ですが、目の前で倒れている彼らにも、目を向けなければなりませんよ」


諭すようにかけられた言葉に、エリザベートはハッとしてリーザ達に目を向けた。


リーザもレイマートもレミューも、まだ息はあるが倒れ伏し、意識を失っているようだ。


「私がヒールをかけます。ローザ、結界を張ったままついて来てくれませんか?」


ローザが、もちろんです、と頷くとエリザベートも声を上げた。


「お母様!私もご一緒します!」


その言葉に、アンリエールも優しく微笑んだ。




「アンリエール様、お久しぶりです」


「バリオス様・・・お久しぶりですね」


話しの区切りがついたところで、バイオスが近づき声をかける。

その腕には眠っているマルスが抱かれ、隣には第二王子のオスカーが付いていた。


「マルス様が闇に蝕まれそうになってましたので、浄化しておきました。闇は全て取り除いたのでもう心配はありません。オスカー様もこの通りご無事です」


「母様!」


バリオスの隣に立っていたオスカーが、母の姿を見て抱き着いた。


「あぁ・・・オスカー・・・無事で良かった」


「母様・・・ごめんなさい!僕は・・・僕は母様の言葉を信じないで・・・母様をこんな目に!」


「いいのです・・・オスカー、あなたとマルスが無事でいてくれただけで、母はそれだけでいいのです」


アンリエールがオスカーを抱きしめ返す。


「オスカー兄様、ご無事でなによりです」


その様子を見ていたエリザベートが、後ろからそっと声をかける。


「・・・エリザ・・・エリザにも、大変な苦労をかけた。本当なら、僕と兄様がしっかりしなければならないのに・・・」


罪の意識に苛まれ、正面からエリザベートの顔を見れず俯くオスカーの手を、エリザベートの手が包み込んだ。


「オスカー兄様・・・まだ終わってません。まず私と母様でリーザ達を治癒します。黒魔法使いのオスカー兄様は、騎士団への指示をお願いします」


エリザベートの指示に、オスカーは、分かった、と答え頷いた。


「では、俺もオスカー様とご一緒しましょう。マルス様を早く安全な場所に移したいし、ブロンズ騎士や、序列の低いシルバーはこの闇にあてられ動けなくなっているから、結界は必要でしょう。ローザ、まだ魔力は持つか?」


そこでバリオスに言葉をかけられたローザは、額の汗を拭い頷いた。


「はい、大丈夫です。任せてください」


「・・・無理をするな」


バリオスはローザの目をじっと見つめる。

言葉こそハッキリとしているが、額から流れる大量の汗と、その瞳に映る疲労感は隠し切れない。


バリオスは抱いているマルスを右腕一つで抱き直し、左手をローザの肩に置いた。


「え、師匠・・・」


「ローザは昔からギリギリまで頑張るところがある。でも、辛い時は辛いと言っていいんだよ?ローザが倒れたら悲しむ人がいるのを忘れちゃいけない」


バリオスの手が青く光り、まるで空のコップに並々と水が注がれるように、ローザの体内に魔力が流れこんで来た。


同じ系統であれば、魔力を分け与える事は可能である。


白、青、黒、三系統全ての魔法を使いこなせるバリオスは、全ての魔法使いに魔力を分ける事ができる唯一無二の存在だった。


「・・・よし、これで大丈夫だ。ローザ、ここは任せるよ」


「はい!ありがとうございます!師匠もお気を付けて」


顔色の良くなったローザを見て、バリオスはニコリと笑うと、オスカーと共に騎士団の元へと足を進めた。



「・・・素敵な方ですね」


「はい、本当に・・・」


普段口数が少ないローザが、こんなにハッキリと大きな声で話す事にも驚いたが、少し赤く染まった頬を見て、エリザベートはローザの胸の内に秘めた想いに気が付いた。



「さぁ、エリザ、ローザ、治癒を始めますわよ」


そしてアンリエールに声を掛けられ、エリザベートはヒールを、ローザは瘴気から皆を護るための結界を。それぞれがやるべき事を始めた。


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