500 囮
読み返したら、分かりづらい表現がいくつかありましたので、少し言葉回しを変えました。
とった!
完全に偽国王の隙をついた一撃だった。
闇の化身である自分と互角に渡り合うアラタを相手に、他に注意をさく余裕などあるはずもない。
そして闇で掴み置いていた女の事など、もはや意識の外だっただろう。
リーザの背後からの一撃は、偽国王の闇の瘴気を切り裂き、そのまま頭に叩きこまれた。
「なっ!?」
リーザのイメージでは、このまま大剣で左右真っ二つに斬り落とすはずだった。
剣とはそういうものであり、岩や大木でもなければ、斬れて当然である。
そしてリーザの大剣は闘気を纏っていた。
先刻、レイマートとレミューが闘気を帯びた剣で、闇人形の腕を斬り飛ばした事からも、斬れて当然という認識だった。
それゆえに、リーザは驚きを隠せなかった。
「・・・貴様もその技を使うのか。だが、残念だったな?闇人形には通用しても、俺には効かんぞ!」
リーザの大剣はまるで刃が立たず、偽国王の頭の上で止まり、どんなに力を入れてもそれ以上刃を進ませる事ができなかった。
「うわぁぁぁぁーーーッツ!」
顔半分だけ後ろに向けた偽国王は、右手をリーザに向けて軽く振るうと、その体から発している闇の瘴気が強く激しくリーザにぶつかり、その体を弾き飛ばした。
「所詮まがいものの力という事だ」
「てめぇ・・・!?」
受け身すら取れず背中から床に、叩きつけられるように落ちるリーザを目にし、アラタが拳を握り飛び掛かろうとすると、一瞬早く二つの閃光が、アラタの両脇を駆け抜けた。
「うぉぉぉーーーーーッツ!」
叫び声を上げて、闘気を纏った剣を腰に構え、先陣を切るように一歩先を行くのはレミューである。
そして鋭く前を見据え、その後ろに続くのは、剣を持たずその右手に全闘気を集中させたレイマート。
闇人形を倒した二人は、アラタの脇を駆け抜ける時、ほんの一瞬だがアラタに目配せをした。
アラタはそれで理解した。
レイマートとレミューが捨て身で立ち向かったという事を。
「馬鹿が!その技は通用しないと、たった今見せたばかりだろうが!」
闇の瘴気は斬る事ができる。
だが、偽国王の首を狙ったレミューの剣は、リーザと同じくその体の表面で止められていた。
「あぁ、私の剣じゃ通用しない事は分かっているさ」
全て承知の上だと言わんばかりに笑うレミュー。
そのレミューの腹に手を当て、偽国王は闇の波動を放った。
吹き飛ばされるレミューの背から飛び出した影に、偽国王は顔を上げる!
「これを受けても涼しい顔でいられるかな?」
レイマートの右手に集められた強大な闘気、獅子の前足になぞらえられたレオンクローが、偽国王の頭上に振り下ろされる!
「ふん!この男は囮か?つまらん手を・・・むっ!?」
レイマートの闘気に、初めて偽国王の顔色が変わった。
直撃を受けても命を奪われる程ではない。だが、確実にダメージは受ける。
レオンクローの脅威を感じ取った偽国王は右手を上げ、闇の波動をレイマートに向け撃ち放った!
「ハァァァァァーーーーーッツ!」
自分に向け放たれた闇の波動に対し、レイマートは避ける事も防ぐ事も選択肢には無く、レオンクローをそのまま闇の波動にぶつけた!
「ほぅ、闇の波動を正面から止めるとは、思った以上に強力な技のようだな!だがどこまで耐えれるかな!?」
「ぐぅぅッ!た、確かに、俺の、レオンクロー、でも、ここまで、が、限界のようだ・・・だが、それで、いいんだ!」
「なに!?」
闘気を出し尽くしたレイマートは、右手のレオンクローが打ち破られ、闇の波動をまともに浴びてしまう。
「オラァァァーーーッツ!」
上空に打ち上げられたレイマートの背後から、アラタが拳を構え飛び出して来た!
そう、レミューは知っていた。自分の闘気では偽国王に傷の一つも付けられない事を。
だからレイマートがレオンクローの射程に入れるようにするため、自分を囮にする事を選んだ。
そしてレイマートは、レオンクローならば勝てなくても、闇の波動を受け止めて時間を作る事はできる。そう分析し、最後は自らを盾に偽国王の注意を引き、アラタへとつなげた。
二人の騎士は、偽国王の闇と互角にぶつかりあう、アラタの光の力に全てを託した。
「くっ!どっちも囮だと!?小賢しいマネをォォォォーーーッツ!」
アラタの拳が届く距離まで接近を許してしまった。
この距離では闇の波動を撃つ間も作れない。今できる最適な攻撃はなにか?
偽国王が選んだ攻撃は、体からあふれ出る闇の瘴気を、そのまま放出しぶつける事だった。
「吹き飛べぇぇぇぇーーーッツ!」
「今更そんな攻撃が効くかよッツ!」
咄嗟の判断でやむをえない事だったかもしれない。
だが、偽国王の選んだ攻撃は完全に悪手であった。
なぜなら先刻、両手で撃ち放った全力の闇の波動をアラタに突破されているのだ。
レミューとレイマートは力では歯がたたなかった。
だが二人の特攻は、偽国王の攻撃手段を奪うという意味で、その役目を果たしていた。
自分に向けて激しく放たれた闇の瘴気を、アラタは拳の一振りでかき消した。
「なっ!?し、しまっ・・・!」
自分の選択した攻撃の過ちに気付いた時には、もうすでに遅かった。
闇の瘴気をかき消したアラタは、そのままの勢いで突っ込み、全力の光の拳で偽国王の顔面を撃ち抜いた。
まともに食らった偽国王は、そのまま体を殴り飛ばされ、吹き抜けになった壁から外へと落とされる。




