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478 騎士団の分裂

暖かい・・・・・


体中の痛みが引いていく優しい感覚に、薄れつつあった私の意識が戻っていく。


アルベルトを倒し、アラタ達が三階に行った事を見届けて、私の緊張の糸が切れた。


体中から力が抜けて倒れてしまったと思うのだが・・・誰かに抱き留められたような・・・・・



私は瞼を上げた




「・・・お、気が付いたようだね」



「・・・て、ん・・・ちょう?・・・店長・・・」



店長の肩の下まである金色の髪が、吹き抜けになった壁穴から吹く風になびく


ややたれ目がちで、髪と同じその金色の瞳は、いつもと変わらず優しい色で私を見つめていた



「遅くなってすまない。店に行ったらレイチェルの置手紙を見つけて、急いで来たんだが・・・俺がいなくても四勇士、ゴールド騎士を倒してしまうとはな。みんな強くなった・・・レイチェル、よくここまでみんなを引っ張って、頑張って来たね。レイチェルは俺の誇りだよ」



そう言って優しい笑顔を向けてくれる店長に、私は目頭が熱くなった



「・・・てん、ちょう・・・おかえりなさい」


「うん・・・ただいま、レイチェル」


店長のヒールで傷は癒えたようだ

だけど、もう少しだけ・・・ほんの少しだけでいい・・・


この腕の中で温もりを感じさせてください


私は瞼を閉じてそう願った







・・・時は少し遡る


レイチェルがアルベルトと、マルコスがフェリックスと、それぞれ戦いを繰り広げていた頃、王妃アンリエールと護衛の青魔法使いローザ・アコスタは、騎士団に城内を追われていた。


その騎士を指揮している男はこそ、王女エリザベートとの婚約をもくろむ公爵家の長男にしてゴールド騎士の、トレバー・ベナビデスである。


身長185cm以上の長身で、金色の長髪を後ろに撫でつけている。

公爵家としての権力が自分の力と思い込んでおり、その権力をかさに着た自信が顔にも表れているのか、その目には自惚れ、おごり、蔑みがあった。


全身を金色のプレートメイルで固め、最後尾に立ち、少し厚めの唇から声を張り上げ支持を出している。


「なにをしている!王妃とはいえ国王陛下のお命を狙った罪人だぞ!陛下の命令もでているのだ!遠慮する事はない!抵抗するのならば死なない程度に痛めつけてやれ!」


一階の通路角に追い込み、逃げ場なく囲んだまではいいが、ローザ・アコスタの鉄壁と言える結界と、その後ろに控える王妃、アンリエールの威厳ある立ち振る舞いに、騎士達は攻めるに攻めきれないでいた。


「ちっ、ブロンズのゴミ共が!こっちは何人いると思ってんだ?怖気づきやがって・・・おい、レイマート、もうお前が行って決めて来い。あんな結界なんとでもできるだろ?」


トレバーの隣に立つ男はレイマート・ハイランド。

シルバー騎士の序列1位に数えられる男である。


他の騎士達と同様にプレートメイルを着ているが、その色は白銀で染められていた。


透明感のある青く長い髪を搔き上げ、トレバーの命令に軽く息をついた。

髪と同じ青い瞳にはトレバーへの嫌悪感もにじみ出ている。


「トレバー様、本当によろしいのですか?王妃様のあの訴え、耳を傾けるべきかと思います。あの王妃様が錯乱して、陛下に剣を向けるなんてありえますか?俺は騎士として、真に正義のある方に付くべきかと・・・」


レイマートがそこまで話したところで、トレバーはレイマートの胸を強く押した。


「レイマート!貴様この俺に意見するのか!?シルバー騎士ごときが!ゴールドの俺に意見するってのか!?子爵家の貴様が公爵家の俺に意見するってぇのか!?あぁぁぁぁぁん!?」


ぐいっと顔を近づけて、口を曲げレイマートを睨み付ける。

口答えする者は恫喝し黙らせる。トレバーのいつものやり口に、レイマートは溜息を付いて言葉を返した。



「口が臭ぇんだよ。離れろよ」

(申し訳ありません。すぐに結界を打ち破ります)



レイマートの言葉に、トレバーは目が点になり、周囲でやりとりを見ていた騎士達は戦慄し震えていた。


「・・・あれ?トレバー様、どうしました?」


「・・・レ、レイマァァァトォォォォーーー!」


額に青筋を浮かべる凄むトレバー。

何がなにやら分からず首を傾げるレイマートに、近くにいたブロンズ騎士の一人がかけより、耳打ちをした。


「レ、レイマート様!さっきの言葉です!さっき、口が臭ぇとか言ったじゃないですか!怒って当然ですよ!早く謝ってください!」


「えっ!?お前なんで俺の心の声知ってんの?・・・あ、もしかして本音と建て前が逆に出てたか?・・・めんどくせぇな・・・おい、どうする?お前どうしたらいいと思う?わざとじゃねぇんだぜ?」


「えぇー!?なんですかそれ!?そんな間違いあるんですか!?ってか、私に聞かないでくださいよ!いや、やっぱり謝ってください!早く謝ってください!トレバー様ぷるぷるしてますよ!早く!早く謝ってください!」



ブロンズ騎士の切羽詰まった懇願に、レイマートは渋々といった表情で、トレバーに顔を向けた。


「トレバー様、申し訳ありませんでした。さっきのは心の声です。本心ではありません」

「あぁぁぁぁ~!?心の声だぁぁぁ!?それはつもり本心なんじゃねぇのかよ!?」



「しつけぇなぁ!だから口が臭ぇんだよ!」

(そんな事ありません。俺はトレバー様を尊敬してます)



「あぁぁぁぁぁぁ!?レェイムワァトォォォォォォォォォーーーーーッツ!」


トレバーの怒りが頂点に達し、腰に下げている剣に手をかけたその時、前方のブロンズ騎士達から悲鳴が起きた。


「あぁぁ!?なんだ今の悲鳴は!?何事だ!?」


数十人もの騎士がトレーバの前にいるため、トレバーには最前線が見えていなかった。

突然の悲鳴を確認するために声を上げると、周囲の騎士達を押しのけ一人のブロンズ騎士が、前方からトレバーの元に走り寄って来た。


「ト、トレバー様!た、大変です!レ、レミュー様が・・・シルバー騎士のラヴァル・レミュー様が突然我々を攻撃して、王妃様に寝返りました!」


「はぁっ!?」


「・・・へぇ・・・」


その言葉にトレバーは顔を歪めた。


レイマートは楽しくなったと言わんばかりに、薄く笑った。



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