表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
451/1557

451 余力

「やる気を出せと言っても、やる気のある人間は言われなくてもだすからな。ミゼル、お前にやる気がない以上、俺が無理に教える事は無い」


「え、店長、それって俺を見捨てるって事ですか?」


そりゃ確かに訓練にはいまいち力が入っていないけど、見捨てられるのはさすがに困る。

そもそも俺が面倒くさがりなのは店長も知ってるだろう。

それを今更つけ放されても・・・・・


「ははは、見捨てるなんて事はしないさ。今まで通りだよ。ただ、訓練はやる気になるまでやらなくていい。ミゼルの気が向いたらその時にやろうか」



今思えばずいぶん自分勝手な言い分だったが、店長はそんな俺にも変わらず接してくれた。


その日から俺は魔法の訓練をしなくなった。

レイジェスの仕事だけやって、訓練はしないで酒を買って家に帰る日々。


そもそも、俺は戦いをしたいわけじゃない。店長が俺を拾ってくれた事には感謝している。

色々隠し事も多いけど、その人間性は尊敬もしている。

けれど俺は金がほしくて働いているわけで、魔法を覚えて戦いたいわけじゃない。


だから、店長がどういうつもりで魔法を教えてくれのか分からないけど、乗り気でないにはそれなりの理由もあるんだ。







「・・・ぐぅっ・・・ははは、甘えていた報いだな・・・帰ったら・・・店長に鍛えて・・・もらわねぇと・・・な」


俺は自分の左腕に深く突き刺さるナイフを見ていた。

腕を貫通して、真っ赤な血に濡れた刃先が目に映る。危なかった・・・なんとか間に合ったが、タイミングがずれていたら、胸を抉られていただろう。



一人、倒しきれなかった。

俺が体に纏う灼炎竜に躊躇なく飛び込み、炎に焼かれながら体ごと俺にぶつかってきた。


行動不能になるまで襲ってくる・・・・・痛みを感じない分身体だからできる事だ。

一瞬で炭になるほどに焼き払わなければ、これほど体が焼かれても向かってくるのか。


俺の左腕にナイフを突き立てたクアルトの分身体は、焼かれながらも表情一つ変える事はない。しかし力尽きたのか、ナイフから手が離れるとその場に膝から崩れ落ち、二度と立つ事は無かった。



「・・・はぁ、はぁ・・・くそっ!こんなに、痛ぇのか、よ・・・」


左腕の刺さったナイフを引き抜いて投げ捨てる。血が勢いよく流れ出るが、まだ戦いは続いている。

クアルトから目を離す訳にはいかない。



「へぇ、なかなか気持ちが強いんだね?まぁ、頭か腹を狙ったんだけど、結局腕だしね。戦意も衰えて無さそうだ」


全ての分身体を灰にすると、クアルトが両手を叩き合わせてにこやかに、楽しそうな声を出した。


「・・・ふん、このくらいで・・・俺達は命懸けてきてんだ!なめんなよ!」


痛みで額から汗があふれ出て来る。だが、傷薬を塗る余裕はない。

さっき俺がクアルトを待ったように、クアルトが俺を待つ保証はどこにもない。

視線を切った瞬間、なんらかの攻撃を受ける可能性は十分ある。


しかし、このまま放置すれば、もって数分のうちに、出血多量で戦闘不能になるだろう。

動けるうちに決着をつけなければならない。


最悪相打ちでも構わない。

俺は残りの魔力を全開し、灼炎竜の力を高めた。



「へぇ・・・まだ灼炎竜でくるの?」


「俺は炎が得意なんでな・・・俺の弱点に気付いたようだが、分身体を失ったお前にまだ勝ち目はあるのかな?」


「・・・これならどうかな?」


クアルトの様子から、まだ何かあるだろうとは思っていた。

手の内を全て出したとは思えない余裕が見えたからだ。


だが、それは俺の予想の範囲をはるかに裏切っていた。



さっきの倍は優に超えているであろう、数十人の分身体がズラリと並び立ち、同じく全員が俺に向けナイフを構えた。



「・・・てめぇ、一体何人出せるんだよ?」


「魔力が許す限りだ。試した事はないが、百は軽く出せるだろうな。ここが狭い室内で良かったな?」


「なにっ!?」


俺だって魔法使いの端くれだ。自分で使った事はないが、この実体を作り出す魔道具に、どれほどの魔力を使う想像はできる。


・・・これだけの数を出して、まだ余力があるというのか・・・?



「さぁ、おじゃべりはお終いだ・・・その出血でどこまでやれるか見せてもらおうか!」



クアルトが俺に指先を突きつけると、数十個もの殺意を持った目が一斉に俺に向けられた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ