表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
445/1556

445 沢山の力

●いつもお読みいただいてありがとうございます。

お知らせです。

この作品を書いている合間の時間を使って、気分転換で新作を書きました。

『俺と友と追放と』というタイトルです。

完結近くまで書けましたので、本日から投稿します。

ご興味お持ちいただけましたら、ご覧になってみてください。

それは一つ一つが、俺やカチュアなんてあっさり呑み込んでしまうような、大きな炎の塊だった。


そしてフィゲロアが杖を振るうと、天井を埋め尽くすほどに広がった炎の塊が、次々と俺達に向かって降りかかってきた。


「魔風の羽よ!」


カチュアが魔風の羽を前に出し魔力を放つと、風の盾が俺達を包み囲み、炎を防いだ。


「うぅっ・・・うっ・・・」


「カチュア、大丈夫か?」


数発防いだだけで、すでにカチュアはキツそうに眉をよせ、額には汗が滲み出ている。


フィゲロアの一発を防ぐだけで、相当な魔力を消費をしているようだ。

本気を出されれば地力がものを言う。フィゲロアの魔力の高さがどれほどか嫌でも分からされる。


「す、すごい、威力・・・頑張るけど、あんまり、持ちそうにない・・・」


そう話している間にも、カチュアの風の盾には何発もの炎が頭上から降り注ぎ、防いだとしてもその衝撃の大きさに、まともに立つ事でさえ困難になる。



「・・・カチュア、少しだけ耐えてくれ」


まるで炎の雨だ。

しかも一発一発が馬鹿みたいにでけぇ。フィゲロアの野郎はさっきの大地の矢で受けたダメージがでけぇみたいだが、これだけの炎を出し続けている事を考えると、まだ余裕があるんだろう。


このままフィゲロアと根競べをしても、先にへばるのはカチュアだ。

そしてカチュアの魔力がつきれば、逃げ道のねぇ俺達は一瞬で丸焼きにされちまうだろう。



「俺が必ずあの野郎をぶっ倒してやる」



俺が最後に頼ったのは自分の腕だった。


絶対に大陸一の弓使いになってみせる。そう強く思って毎日訓練を続けて来た。

ジョルジュ・ワーリントンには今は及ばないだろう。

でも、必ず追い抜いて見せる。俺なら追い抜ける!


そう自分を信じて弓を引いて来たんだ・・・・・



「うぉぉぉぉぉぉーッツ!」



穴を空けられた左腕を無理に動かしたため、左肩の傷がものすごく傷み、ぶるぶると震えて狙いが定まらない。



「リ、リカルド君!?なにやってるの!?その怪我で弓が引けるわけ・・・」


「カチュァーッツ!俺を信じろ!俺は大陸一の弓使い、リカルド・ガルシアだ!」


カチュアの言葉にかぶせて俺は声を張り上げた。

この風の盾の外は、炎が荒れ狂い、とても視界が効くものではない。


でも俺は知っている。目に頼らないでも正確に矢を射った人を。







店長は言っていた、目に頼るのではなく風を感じるんだと。


俺はレイジェスに入った時には、すでに親父から鍛えられてそれなりの腕前だった。

だけど、働き出して少し経った頃、店長が外で弓を引いているのを偶然見て、その姿に目を奪われた。


矢を放つまでの一連の動作が、まるで自然と一体になったのかと思う程、そこだけ時が止まってしまったかと思う程に静かだった。



そして店長は目を閉じていた。

この時の俺の常識では、目を閉じて矢を射るなんて事は全く考えられなかった。

頭がおかしいんじゃねぇのか?とさえ思った。


けれど、店長はその状態で的とした樹の中心に見事に矢を当てたのだ。



「・・・リカルドか、どうした?」


俺は音を立てていなかった。けれど店長は、後ろに立った俺に振り返らずに気が付いた。

一体なにをどうしたらこんな事ができるんだ?


「え、いや、店長よ、すっげぇな・・・魔法使いなのに、なんだよその弓の腕?」


「・・・魔法使いでも、弓や剣が使えないわけではないからな。訓練を積めばできるものだぞ」


「いや、今見てたけど、目を閉じてたよな?それで的に当てるなんてよ、ちょっと頭がおかしいレベルだぜ?店長何者だよ?どこでそんな技覚えた?」


さらりと言っているが、店長のやった事は俺にはとてもできない。

魔法使いが習得できる技術ではなかった。


「・・・悪いな、リカルド。言えないんだ。けれど、俺は目に頼ってはいない。風を感じてるんだ。リカルド、キミが技術の先に行きたいのならば、自然に耳を傾ける事だ・・・風にも、土にもな」



それから俺は店長に弓を師事するようになった。







自然を感じるんだ・・・


俺は目を閉じて、心を静かに自分の立つこの二本の足で土を感じた


石造りの床だが、この石だって自然の産物、精霊は宿っているはずだ



なぁ、土の精霊・・・俺に力を貸してくれ。フィゲロアの場所を教えてくれねぇか?

結局よ、戦いってのはどっちにも正義があると思うんだ

俺には俺の、フィゲロアにはフィゲロアの、でもよ偽国王は、この国をダメにしようとしてんだ

それは止めなきゃならねぇ


だから俺に力をかしてくれ


・・・祈りが芽を出した


カチュアの風の盾が、フィゲロアの降らす炎の塊を防ぐ、それによって起こる爆発、空気の振動、それらあらゆる全てが、足元から俺に伝えて教えてくれる・・・・・


・・・フィゲロアはここにいると・・・・・




捉えたぜ!

目に頼らなくてもてめぇがどこにいるか体で感じる事ができる!



「カチュア!正面の風を解け!」


フィゲロア!てめぇは俺の正面10メートル先、体二つ分左だ!


「リカルド君!」


頭上からは巨大な炎の塊が降り注いでいる。一部でも一瞬でも、風の盾を解く事は大きな恐怖のはずだ。だが、カチュアは躊躇なく風の盾を解いた。


何も聞かず俺を信じてくれたって事だ!これで決めなきゃ男じゃねぇ!


「いけぇぇぇぇぇーッツ!」



左腕の震えがなんだ?これまでいったいどれほど弓を引いてきたと思っている!?


俺は放った矢は吸い込まれるように、荒れ狂う炎と風の中に消えていった







結界にぶつかる金属音に目を向けると、一本の鉄の矢がぶつかり落ちた。


あの体力型の男が撃ったのだろうが、この炎と風が荒れ狂う状況で、矢を射って届かせたというのか?そう思った時だった・・・



「ば、馬鹿な!?」


二本、三本、瞬く間に同じ個所に鉄の矢がぶつかり落ちていく。


ま、まさか・・・この悪条件で、こんな事が可能なのか!?

最初の時とは比べようも無い程だ!地面に落ちた炎は燃え上がり、風が吹き荒れているのだぞ!?


四本目の矢が当たった時、結界に亀裂が入るのが目に入った。


「くっ!この男、どういう腕をしている!?・・・だが、なめるなよ!」


体の底から魔力を引き出す。

結界がより強い光を放ち、輝きを大きく増していく。



「このライース・フィゲロアの天衣結界、破れるものなら破ってみろ!」






五本・・・六本・・・七本・・・そうか、これでも結界を破れねぇって事は、野郎は結界のレベルを上げやがったって事か。

この局面で使う結界は、天衣結界しかねぇだろう。おもしれぇ・・・やってやんよ!


クインズベリー国で最高レベルの四勇士、その青魔法使いの天衣結界だ、どれだけ撃ち込めば破れるだろうな?


俺の矢が尽きるまで、てめぇの結界が持てばてめぇの勝ちだ。

だが、俺が結界を破れば、確実にてめぇの心臓を撃ち抜いてやんよ!


「勝負だくそ野郎ぉぉぉぉぉぉーッツ!」







八・・・九・・・十・・・・・


続けて十本、全く同じところに当ててきやがった・・・・・天衣結界でなければ、とっくに破られている。


大した男だ、敬意を払おうじゃないか。


お前は俺の結界に勝負をしかけているんだろ?

お前の矢が尽きる前に、俺の結界を破れるかどうかを?


いいだろう。ここまで俺を追い詰めたんだ、俺もプライドの回復には、お前を真っ向から叩き潰す必要がある。だから受けてたとう!


「さぁ、どんどん撃って来い!そんな矢で破られる程、俺の結界はあまくねぇぞ!」








「うっ・・・はぁ・・・はぁ・・・あ、あつ、い・・・・・」


正面の風を外したため、そこから入り込む強烈な熱波に私は眩暈を覚えた。


まだ・・・まだ、だめ・・・私が気を失ったら、上を護るこの風の盾は解けてしまう。

もし風の盾が解けたら、今も降り注ぐこの炎の塊に、私とリカルド君は押し潰されてしまう。


・・・・・魔力回復促進薬を飲んでおいてよかった。


本当だったら、多分もう尽きている・・・でも、もう少しだけ頑張れそう・・・・・

だから振り絞るの・・・魔力の最後の一滴まで・・・・・



リカルド君・・・・・

私は自分の一歩前で、矢を撃ち続けるリカルド君に目を向ける。


信じてるよ・・・リカルド君なら、きっと勝てるって・・・・・






十五・・・十六・・・十七・・・


まだか?これだけ撃っても破れない程、天衣結界は強力だというのか?

間隔を空けずに連続で射撃している俺の矢は、フィゲロアの結界の同じ個所に直撃し続けているが、いまだに手ごたえが感じられない。


矢も残り少ない、このまま続けて果たして破る事ができるのか?

焦りで心が乱れそうになる。


いいや、余計な事は考えるな・・・この非常に繊細な感覚は土の精霊の加護によるものだ。

心を乱せば、二度と取り戻せないだろう。


自分を信じろ!精霊を信じろ!俺の矢が続く限り勝機はある!



気力が精霊に呼応し、矢に力が加わった。






「なにっ!?」


それはこれまでとは違った音だった。突如結界にぶつかる矢の威力が増し、受ける衝撃も大きくなった。


それに続く矢も同様の威力を持っている事から、まぐれ当たりではない。

なぜだ?なぜ突然威力が増した?


結界を通じて感じる衝撃はかなりのものだった。

冷たい汗が頬を伝う。これは初めての経験だった。


四勇士たる俺の天衣結界に、ここまでのダメージを与える程の攻撃力を、ただの一介の弓使いが持っているというのか?


「これほどの使い手だったとは・・・なっ!?」


受ける矢の数がニ十五を数えた時、とうとう結界に亀裂が入った。






二十八・・・二十九・・・・・これで最後だ・・・・・


もう左肩の感覚がねぇ・・・・こんな状態でここまで射る事ができたのは、土の精霊のおかげだ。


店長、俺分かったぜ。心を鍛える事の本当の意味が・・・


俺は一人で戦ってんじゃねぇんだ。


仲間がいて、精霊がいて、色んな力を借りて戦ってんだ。


呼吸を整える。こんな状況なのに、心は波一つたたない静かなものだった。


目を閉じたまま矢をつがえる。

見える・・・・・フィゲロアのまで続く矢の通り道が見える。


「・・・ありがとよ、土の精霊」


体全体で感じる軌道に矢を乗せて放った。








「がっ!・・・あ、ぐぁ・・・」


深く胸に刺さった矢に目を落とす。


この一射は来ると分かっていても躱す事はできなかった。


俺の天衣結界を突き破り、まるで矢が意思を持っているかのように、淀みなく俺の胸を貫いたのだ。


喉の奥からなにかがせり上がって来て、口の中に一瞬溜まり吐き出すと、真っ赤な血だった。

この俺が、血を吐かされるとはな・・・・・


「敗北を・・・認める・・・しか、ねぇか・・・」


立っている事も出来ない程足から力が抜けて、俺は膝から崩れ落ちた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ