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442 カチュアの魔道具

フィゲロアを中心に、炎が地面を放射状に走り襲いかかって来た。


「へぇ、分かりやすい魔道具だな。火を出す杖か?」


放たれた炎は徐々に大きく勢いを増して、リカルドの腰程の高さになる。



使い手のフィゲロアから離れる程、火力が増して大きく強くなるのか・・・・・

俺にはこの炎を防ぐ事はできねぇ、サークル状で隙間もないから、横に躱す事はできねぇ。


つまり上に飛ぶしかねぇな。カチュアは・・・



顔半分振り返ると、カチュアは羽を握り締めて炎を真っすぐに見つめていた。

その表情には怯えの色は一切見えない。


俺を頼る事はしないか・・・・・


「大丈夫って事だな、だったら!」



目の前に迫った炎を高く飛んで回避する。

当然のように、フィゲロアは俺を目で追って来た。


「そうだ、上に飛ぶしかないよな?だが空中では自在に動けまい!喰らえ!」


右手の杖を俺に向かって突きつける。先端の赤い石に魔力が込められ、赤い石が光輝く。


「へっ、何度も言うが舐めてんじゃねぇぞ!体力型の俺が、そんな事も考えねぇで飛んだと思ってんのか!?」


「なんだと!?」



その時、一陣の風が炎を吹き飛ばし、勢いそのままにフィゲロアに向かって突き進んだ。


「なっ、風だと!?ちっ・・・!」


フィゲロアは俺に向けていた杖を下し、自分に向かって迫ってくる突風に左手を向けた。


「そうだ!そうするしかねぇよな?」


フィゲロアが結界を張り、突風をやり過ごしているうちに、俺は着地し弓を構え体勢を整えた。

後ろは振り返らない。



カチュア、お前はよく泣くから気弱そうに見られっけどよ、一度やるって決めた事は、責任もってやるヤツだって俺は知ってるぜ。








私の魔道具、魔風の羽。


リカルド君は私を助けに来なかった。

リカルド君が炎を飛んで避けたのを見て、私はリカルド君が私を信じてくれてる事を感じた。


嬉しかった。

リカルド君は、私が駄目そうだったら多分助けに来ていたと思う。

でも、私を助けに来ないで攻撃を躱したという事は、私が自分の力でこの炎をなんとかできるって信じてくれたって事だから。


だから私は迷いなく羽を振るった。勇気を持って羽を振るった。









「カチュア、これをキミにあげるよ」


「あ、はい・・・うわぁ、綺麗な羽ですね。これ、なんの羽ですか?」


ある日の仕事上がり、私が白魔法コーナーの後片付けをしていると、店長が私に白く綺麗な羽を渡してくれた。


なんの羽だろう?

そう思って羽を見ていると、店長は私を椅子に座らせてゆっくり話してくれた。


「これは俺が作った魔道具で、魔風の羽って言うんだ。魔力を込めて振るえば風を起こす事ができる。縦に勢いよく振れば風の刃を放てるし、羽を面で振るえば突風だって起こせる」


「え、それって、風の黒魔法が使えるって事ですか?どうして・・・」


なんでそんな物を私に?

不思議に思いそう訊ねると、店長は私の目を見て優しく笑ってくれた。


「カチュア、キミが争い事を嫌いなのはよく分かってるよ。本当は魔道具だって、補助的な物が良いだろうなって俺も思った。でもね、力ってのは使い方次第、使う者次第なんだよ。カチュアの優しい心は、きっとこの羽を正しく使ってくれる。そう思ったから渡すんだ。もらってくれないかな?」


「店長・・・はい、ありがとうございます。大事にしますね」


「よかった・・・じゃあ、説明を続けるよ。この羽はね、魔力を込めて振れば風を起こせる。でもそれだけじゃない。この羽の本当の力は・・・・・」








「ふん、こんな風で俺を倒せるとでも思ったか!?」


なかなかの威力の風だが、俺の結界を破るにはとても足りない。

警戒すべきは弓使いの方だろう。この風が治まった後、さっきのように連射してくる事は十分考えられる。


「もちろん、思ってないよ」


女の声が風に混じって聞こえたと思ったその時、白い羽が結界に突き刺さった。



「・・・羽?・・・なっつ!?」



結界に刺さったその白い羽は、徐々に青く色を染めていき、それに伴い結界が薄く脆くなっていった。


「な、なんだと!?俺の結界が・・・」


白い羽が青く染まりきると同時に、俺の結界が解ける。羽はゆっくりと風に舞い落ちた。


「リカルド君!」


合図を送るように女が叫ぶ。

俺の結界を解いた原因であろう羽を目で追ってしまい、風切り音への俺の反応が一瞬遅れる。


鉄の矢が俺の左肩に突き刺さった。


「ぐうっ!」


強烈な衝撃に体を支えきれず、背中から床に倒れてしまう。


「・・・く、ぐぬ・・・お、お前、その羽は、なんだ?」


矢の刺さった左肩をかばいながら、上半身を起こし女を睨み付けた。


「これは私の魔道具魔風の羽。もう結界は通用しません!」


気弱そうな外見からは想像もつかない強い声で、女は俺に言い放った。




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