表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
439/1558

439 北西の塔 決着

「・・・・・う・・・ん・・・」


「バルデス様、気が付きましたか?」


目を開けると、見慣れたキツイ目の女の顔が映った。


「・・・サリー、私は・・・?」


体を起こそうとすると、額に手をあてられ押さえられてしまう。


「バルデス様、20分程ですが気を失っておりました。折れた顎と右腕は治療致しましたが、どうかもうしばらくはこのままお休みください」


見上げる形でサリーの顔が目の前にある事から、自分がどういう姿勢かを理解する。


膝枕など初めてされたが、そう言えばサリーは、スキンシップは恥ずかしがらないところがあったな。



20分・・・気を失っていたのか・・・


だんだんと意識がハッキリしてくるが、自分がなぜ気を失っていたのか思い出せない。




「もう大丈夫?なら、話していい?」


声のした方に顔を向けると、私達から少し離れて、さっきまで戦っていた青魔法の男と、白魔法の女が床に座って私を見ていた。



「・・・貴様ら・・・あぁ、そうか・・・私は、負けたのか」


気を失っていた自分と、座っている彼らを見て、この戦いの勝者がどちらかを理解した。


「バルデス様、申し訳ありません。大障壁は・・・」


「サリー・・・気にするな。勝者は彼らだ」


私が倒れた後、大障壁を渡したのだろう。

おそらく私を護るためだ。そうでなければ、敗者の私がこうものんびり寝ていられるわけがない。



まだ私の体を気にかけるサリーを止めて、私は体を起こし彼らに向き直った。


「・・・いまいち記憶がハッキリしないが、どうやら私は負けたようだな。大障壁は貴様達の好きにすればいい。破壊すればこの塔からの結界は消える」


「最後、なんで撃たなかったの?ハッキリ言えば、アタシ達はあんたが手加減してたから勝てた。勝ちを譲られたと言っていい。何考えてんの?」


私の話しなど聞く気もないのか、女は自分の知りたい事だけを問いかけてきた。

まったく、ずいぶん面白いヤツだ。


「・・・おい、なんで笑う?顎にもう一発食らわせるぞ?」


自分でも気づかないうちに笑っていたようだ。

白魔法使いの女が拳を握り腰を上げたので、私は手を前に出してそれを制する。


顎にもう一発・・・そう言えば私はあの最後の瞬間、この女が突然目の前のから消えて、一瞬のうちに懐に入られていたのでは・・・・・



「あぁ、待て待て。貴様らを馬鹿にしたわけではない。少しばかり、面白い連中だと思っただけだ。目的の物はサリーが渡したのだろう?さっさと破壊してここを出て行けばいい。それなのにわざわざ私が起きるまで待って、なにかと思えばそんな事を聞いてくるのだから、つい・・・な」


そう話すと、白魔法使いの女は特に表情を変える事もなく、起こした腰をまた床に下ろした。

納得したのか分からないが、とりあえず話しはできそうだ。



「・・・それで、手加減の理由か?そうだな、貴様らも気付いているだろうが、この塔を破壊する訳にはいかない。私が全力で魔法を放てば、この塔が耐えられんからな。魔道具大障壁は、この塔から外に出しても使用する事は可能だ。だが、この塔は見張りの役割もある。いよいよとなればしかたないかもしれんが、できるだけ破壊したくはなかった。まぁ、もし敵が私以上の魔力をもっていて、他国からの侵入者だったとすれば、私はこの塔を破壊してでも倒す気持ちはあった。だが、貴様らの魔力は私に遠く及ばない。半分の魔力で倒せるくらいだ。そういう事だ」


「・・・それだと答えの半分。もう半分に答えていない。なんで最後撃たなかった?」



「・・・なんの事だ?」


白魔法使いの女が睨んでくるが、私は視線を逸らさずにその目を見返した。

緊張感のある沈黙に、場の空気が張り詰めて来る。


「・・・バルデス様、私も知りたいです。あの時バルデス様は、撃てたのに撃たなかった。確かに迷っておられました。なぜでしょうか?」


「サリー・・・」


遠慮がちに訊ねているが、こういう時のサリーは、納得のいく説明がない限り引く事はない。


全く、面倒な侍女が付いたものだ・・・・・



「・・・・・お前達と戦って、少しだけ迷った。私は国王からお前達は国賊だと聞いていた。王妃様と王女様を言葉巧みに操り、国家を転覆させようとする悪党だとな。さすがにその言葉全てを真に受けたわけではないが、国王がそこまで言うのだから、始末せねばならない敵だとは思っていた。だが・・・・・正直分からなくなった。お前達の戦いには正義がある。とても国家転覆なんて考える愚か者には見えん。そう考えたら、撃てなかった・・・・・」



「ふ~ん・・・・・なかなか見る目のある男。今日はこのくらいで勘弁してあげる」


私が話し終えると、白魔法の女は満足したように腕を組んで頷き、隣の青魔法の男へ顔を向けた。



「ジーン、私は納得した。嘘を言ってるようにも見えないし、この男とはもう戦う理由は無い。大障壁も壊してしまおう」


「あぁ、僕もそう思うよ。ちょっと死にかけたけど、平和的に終わってなによりだ」


青魔法使いの男は、手にしていた十数センチ程の銀のプレート、大障壁を頭の上くらいの高さに軽く放る。すると、次の瞬間プレートは真っ二つに斬り裂かれ落ちた。二つになったプレートが床にぶつかり、それぞれ金属音を響かせる。



「・・・仲間がいるんだろ?まだ他三つの大障壁は解けていないようだ。加勢に行くのか?」


女と男が立ち上がったのを見て声をかける。


「いや、僕達の役目はここまでだ。まぁ、後は仲間達がなんとかしてくれる。信じて待つさ」


「そうか・・・だが、塔を降りて戻るのなら、一つ忠告しておこう。私と戦ったお前達は運がいい。他三人の四勇士は、私のように甘くはない。気を付ける事だ・・・えぇと」



「ん?・・・あぁ、僕はジーン、こっちはユーリだ。覚える気になってくれたようで嬉しいよ」


それじゃ、そう言い残してジーンとユーリは部屋を出て行った。





「・・・バルデス様、大障壁を渡した私が言う事ではないかもしれませんが・・・本当によろしかったのですか?」


屈んで真っ二つになった銀のプレートを拾うと、サリーは私の顔を見ずに小さな声で聞いてきた。自分の行いが間違っていたのでは、そう感じているような不安そうな声だった。


「・・・サリー、気にするなと言っただろ?私を護るために渡したという事は分かっている。それに、今話したように迷いが出た。残る塔はあと三つ・・・彼らがどこまでやれるのか見て見たくなったよ。もし、国王の言葉が偽りであるのならば・・・・・考えなくてはならない」


私は自分の雷で空けた天井の大穴から空を見上げた。

冷たく心地の良い風が肌に触れる。


「・・・青い、綺麗な空ですね」


隣に立ったサリーが、空を見上げてポツリと呟く。



「・・・サリー、もし私が・・・この塔を降りるとしたら・・・どうする?」


少しだけ首を動かし、隣に立つサリーに目を向けた。



サリーはゆっくりと私に顔を向けると、目を細め、まるでおかしな事を聞かれたと言うようにクスリと笑った。



「ふふ・・・ご一緒するに決まってるじゃないですか?」



「・・・サリー、ありがとう」


「ふふ・・・変なバルデス様ですね」



サリーがこの塔に来てから五年。

ここから外を見るだけの何もないモノクロの生活に、温もりと笑顔と言う色が付いた。







「ジーン、休もう」


最上階の部屋を出て、螺旋階段を一段一段ゆっくりと降りている。

アタシは前を行くジーンの背中に声をかけた。


「・・・ユーリ、疲れたのかい?」


「アタシじゃない。ジーンが疲れている。座って。少し休憩する」


そう言ってアタシはジーンの返事を待たずに石段に座り、休む意思を態度で表した。

ジーンはそんなアタシを見て小さく息を付くと、ごめんね、と呟いてアタシの一段前にゆっくりと腰を下ろした。


「ジーン、けっこう危なかった。血もいっぱい出てたし、回復してもまだ満足に動けるはずがない。アタシ達はやり遂げた。だから降りるのはゆっくりでいい」


「・・・心配かけたね。うん、実はね、まだ足にあまり力が入らないんだ。最後の雷には全魔力を込めて天衣結界を張ったけど、それでも防ぎきれなかった。しかもあれでもまだ全力じゃないんだ・・・本当に雲の上の強さだったよ・・・ユーリ、助けてくれてありがとう。キミと組んで良かった」


「・・・助けてもらったのはアタシ。ジーンが護ってくれたから、アタシは怪我一つしなかった。ジーンは最後までアタシを護ってくれた。ありがとうジーン」


素直な気持ちを伝えると、ジーンは優しく微笑んだ。


「じゃあ、僕達はお互いに助け合えたって事だね」



・・・ジーンは優しい。言葉の一つ一つに思いやりが感じられる。

ケイトが好きになるのも分かる気がする。


それからアタシ達はもう少しだけ休んで、ジーンの体力が回復した頃を見て階段を降りた。


残る塔はあと三つ。


アタシはみんなが無事に帰って来る事を祈った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ