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402 話し終えて

今回からアラタ達の話しに戻ります。

257話からの続きです。

「・・・俺が知ってるのはここまでだ。この後カエストゥスと帝国が最後の戦いをやるわけだが、ここから先は店長も話してくれなかった。時間も無かったし、またそのうち聞ければなんて思ってたんだが、まさかここまで大事になるなんてな」


ジャレット・キャンベルは話し終えて一つ大きな息をつくと、ボリュームのあるパーマがかった髪を搔き上げて、事務所にかけてある時計を見上げた。すでに夜の10時を回っている。


長い話しを聞き終えて色々と思うところがあるのか、誰も口を開かない様子を見てジャレットは言葉を続けた。


「もう10時だな・・・ぶっ続けで話して俺も疲れちまったけど、なにか質問があったら聞くぜ」


ジャレットが全員を見て質問を促すように手の平を向けると、レイチェルが口を開いた。


「私からいいか?まずはジャレット、これだけの話しをありがとう。予想以上の長さだった。あぁ、嫌味じゃないぞ。長い時間一人で話しをさせてすまなかったな」


「何言ってんだよ。俺しか話せないんだから俺が話すのは当然だろ」


レイチェルはショートボブの赤い前髪を流すように払うと、確かにそうだ、と言って軽く笑った。


「ジャレットの話しのおかげで、確証が深まった事や、理解が得られた事も多い。偽国王だが、200年前もジャキル・ミラーという青魔法使いが変身してカエストゥスの国王を殺害した。国王は息子に変身したミラーに全く疑いを持たずに接近を許した事から、青魔法の変身の精度が分かるな。クインズベリーの偽国王の正体も、少なくともジャキル・ミラーと同レベルと考えた方がいいだろう」


レイチェルの分析に、エリザベートも頷いた。


「その通りです。青魔法を極めた者だけが使えると言われる変身魔法。私もこの偽国王以外では見た事がありません。そしてジャキル・ミラー以外の記録では、変身魔法の使い手はこの200年の帝国の歴史でも、ほんの数人しか現れておりません。それだけの実力のある者が偽国王として君臨しているのです。とても手ごわいでしょう」


クインズベリー国第一王女エリザベート・アレクサンダーの目は、この国を貶めようとしている敵に対して、断固立ち向かおうとする決意に満ちていた。



「ケイト、あんたは変身魔法使える?」


レイチェルが目を向けると、ケイト・サランディは、無理無理、と言って首を横に振った。

肩の下くらいまである明るいベージュの髪が、首の動きに合わせてなびき頬にあたる。


「変身魔法はアタシはできない。店長から聞いた事はあるし、いつか覚えたいとは思ってるけど、ありゃ本当に難しいわ」


「ケイトが使えないって言うと、本当に難度の高い魔法なんだね。見破るためには真実の花の薬が必要か・・・うん。どれだけの敵か分かったよ。みんな、この偽国王とは戦いはさけられないと思う。帝国の本質は今も昔も変わっていない。カエストゥスを滅ぼしたように、クインズベリーも武力を行使してでも手に入れるつもりだろう。覚悟決めなよ」


軽い口調だが、一人一人の目を見るレイチェルの表情は真剣そのものだった。


「あぁ、もちろんだ。俺達は王妃アンリエール様と行動を共にする。そう決めただろ?店長がいても同じ事を言ってただろうしな」


ミゼル・アルバラードはボサボサの髪をかき上げ笑って見せる。



「店長・・・大丈夫かな」


ミゼルの言葉にユーリが反応し俯き呟いた。

下を向いているからか、150cm程の小さな体がもっと小さく見える。

暗めのブラウンの髪が下がって顔を隠し表情は見えないが、声色から心配している事は感じ取れた。


「・・・ユーリ、大丈夫よ。だってあの店長よ?今まで一度だって約束を破った事はないでしょ?だからあのカエストゥスからだってもうすぐ帰ってくるわ」


シルヴィア・メルウィーはユーリに優しく微笑みかけた。

ユーリは、うん、と小さく頷く。



「・・・店長はカエストゥスの人間・・・か。どういう事だろうな。200年前に滅んでんだから、普通に考えれば先祖にカエストゥスの血が入っていたってとこかな・・・」


ジャレットが腕を組み天井を見上げる。

常識的にはそれが妥当な考えだが、ジャレットは自分の言葉にも納得はしきれていないようだ。



「・・・そうだな。そう考えるのが普通だろう。まぁ店長の生い立ちは、いつか店長が自分から話してくれるのを待つしかないがな・・・」


レイチェルは少し寂しそうにジャレットの言葉を拾った。

気になるが聞けない。店長バリオスに関わる事はいつもこうだった。



「・・・アラやん、大丈夫か?」


ジャレットの問いかけに、アラタは前を向き真っ直ぐにジャレットの目を見た。


「はい。俺はもう大丈夫です。やっぱり辛く感じますけど、弥生さんは幸せだった・・・それが知れて良かったです。ありがとうございました」


「おいおい、俺が礼を言われる事じゃねぇぞ・・・全く、お前は本当に真面目っつーか・・・まぁアラやんらしいわな」


ジャレットは軽く笑うとエリザベートに向き直った。


「エリザ様、明日の朝早くに発たれるんですよね?今日はもうお開きしましょうか?俺達は全面的に協力しますから、いつでも声をかけてください」



エリザベートは護衛のリーザ・アコスタに顔を向けると、意思を確認するように頷いた。

二人はゆっくりと立ち上がり、レイジェスの全員に顔を向け頭を下げる。


「皆様、本日は急な来訪にも関わらず温かく迎えてくださり、心より感謝申し上げます。

私とリーザは明日の早朝に立ち、城へ戻り次第王妃にこの真実の花の薬を渡し、レイジェスの皆様とお話しした内容を報告いたします。これから、この国がどうなっていくか不安は絶えませんが、私はこの命を懸けてクインズベリーの国民のために尽力いたします。どうか、お力をお貸しください」


「・・・エリザ様、リーザも頭を上げてください」


レイチェルの言葉で、エリザベートとリーザが頭を上げると、レイチェルは二人の前に移動しニコリと笑って見せた。


「王女としてのエリザ様のお覚悟はしっかり受け止めました。でも、私達は身分を越えてのお友達なんですよね?でしたらそう畏まらないでください。何度も言いましたが、私達はアンリエール様、そしてエリザ様と行動を共にします・・・・・よろしくねエリザ」


最後はくだけた調子で言葉にし、右手を前に出す。


エリザベートはレイチェルの右手を驚いたように見つめたが、すぐに満面の笑顔でその手を両手で握った。


「ええ!こちらこそよろしくね!」


いくら言葉で友達と言っていても、どうしても王族と平民という身分の差はある。

レイジェスのメンバーもエリザベートに言われれば多少は気安く話すようにしていたが、相手から手を差し出され友達としての握手を求められた事は初めてだった。


エリザベートにとって、これほど嬉しいものはなかった。


「あはは、強い強い、そんなにぎゅっとしないでよ。リーザもよろしく」


感激しているエリザベートに右手を強く握られ、レイチェルは空いている左手をリーザに出した。


「ああ、こちらこそよろしくな。レイチェル・エリオット・・・姫様の心をこれほど掴むとはな」



レイチェルの手を握り、リーザは隣で喜びを露わにしているエリザをベートに表情を緩めた。



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