39 繋ぎ
誤字を見つけたので修正しました。内容に変更はありません。
翌日、朝食を終えるといつものようにマルゴンが来て、取り調べ室へ連れて行かれた。
取り調べはいつもと変わらず、最初に連れて行かれた時と同じ部屋で行われる。
部屋の中には俺以外に、マルゴンとフェンテス、そしてもう一人の隊員がいるだけだった。
俺はイスに座らされて、前回同様に聞かれた事だけに答えた。
聞かれる内容も前回と同じ事の繰り返しで、8回目にもなると、少しだけ余裕が出てきた。飽きずによく同じ事を延々と聞けるものだと思った。
数時間が立った頃、マルゴンは両手で顔を覆い、急に沈んだ声で語り掛けてきた。
「あぁ・・・サカキアラタ、あなたはなぜ正直に話してくれないのですか?正直に話してくれれば、手荒な事をしないですむのに・・・」
マルゴンの言葉に俺はとっさに身構えた。
両手で顔を隠しているので表情は見れないが、静かで鋭い殺気が漏れ出し、俺に向けられている。
だが、両手首は馬に乗った時に付けられた物と同じ、魔道具の縄で縛られているので、今なにかされてもほとんど抵抗はできない。一筋の冷たい汗が頬を伝う。
「フフ・・・そう身構えないでください。あなたにはちゃんと話してもらわないといけません。ですから、今はまだ何もしませんよ。今はまだね・・・」
手を下ろしたマルゴンは、今の殺気が嘘のように穏やかな表情をしていた。
そしてフェンテスに俺を独房に戻すよう伝え、そのまま一人で部屋を出て行った。
「おい、今の内に話した方がいいぞ。このまま黙っていればお前は死ぬ」
マルコスがいなくなると、フェンテスが俺を見下ろすようにして言葉をかけてきた。
「・・どっちみち俺を殺す気なんだろ?」
「・・・マルコス隊長は、不穏分子を生かしておく事はしない。お前が隊長を納得させる言葉を持たない限り、死ぬだろう。だが、今ならまだ俺が働きかければ、自由な生活には戻れないだろうが、命は助かるだろう。お前には待っている女がいるんだろう?」
予想もしないフェンテスの言葉に驚き、返事に窮してしまう。そんな事を考えてくれるのか?
「えっと、いや、確かにそうなんだけど・・・あんた、やっぱ意外と良いヤツだな。こないだも思ったけど」
なんだか力が抜けてしまい、さっきまでの緊張感がまるで消えてしまった。
フェンテスは言葉を発しなかった。余計な事は言わず、俺の返事を待っているようだ。
「せっかくだが、無い記憶は無いとしか言えない。そして俺はこんなところで死ぬ気も無い。絶対に生きて帰ってみせる」
フェンテスは何も言葉を返さなかった。ゆっくりと目を伏せると静かに息を吐き、そして俺の腕を取った。
「・・・立て、牢へ戻るぞ」
俺はおとなしくイスから立ち、フェンテスの前を歩き、部屋を出た。
「ありがとよ」
前を向いたままフェンテスに声をかける。フェンテスは何も答えなかった。独房まで言葉は交わさなかったが、少しだけ歩調が遅くなった。ゆっくりと歩く事で少しだけ気持ちが落ち着いた。
独房に戻ると、フェンテスは無言で牢を開け中に入るよう顎で促す。
今更抵抗する気も無いのでおとなしく入ると、フェンテスは牢に鍵を掛け、鉄格子の隙間から手を伸ばし、俺の両手首を拘束する縄を外した。
「フェンテス、ちょっと話があるんだが、いいか?」
用が済み立ち去ろうとするフェンテスを、隣の牢のヴァンが呼び止める。いつも無表情のフェンテスが、意外そうに目を開いている。ヴァンとはあまり話さない仲なのだろうか?
「珍しいですね、ヴァン副長。何です?」
「もう辞めたから、副長じゃねぇけどな。マルゴンに聞かれたら怒られんぞ?」
「・・・俺にとってはまだ副長です。それで、話とは?」
「お前のその気持ちは嬉しいけどな・・・あぁ、用件だけどな、カリウスに会わせてくれないか?」
その言葉にフェンテスの表情が曇った。カリウス・クアドラス。治安部隊の前隊長だった男だ。
三年前、マルゴンに敗れ隊長の座を失ってからは命令無視の単独行動が目立ち、今では孤立しているらしい。
「・・・カリウスさんですか?なぜです?」
「一度じっくり話したくてね。アイツもまだ治安部隊にいるつもりなら、今のままじゃ駄目だろ?そういう話だよ」
「副長・・・本当にそれだけですか?俺は今、マルコス隊長の補佐官です。カリウスさんと接触することはあまり好ましくない」
「分かってるよ。なぁ、頼むよフェンテス」
ヴァンの言葉をそのまま信じたわけではないだろう。なにか裏がある事には勘づいている。
だが、フェンテスはそれ以上追求してこなかった。少しの間目を閉じ、なにか思案していたが、やがて、分かりました、と僅かに首を縦に振ると独房を出て行った。
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