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【386 光と炎】

赤く染まった身体、血を呑み込み赤をより赤く染めた刀身・・・セシリアの体から発せられる気は弥生を上回っていた。



「ぐうぅっ!」

セシリアの振るう一撃を受け止めきれず、弥生はその体を吹き飛ばされた。

女の細腕の打ち込みとは思えない、とてつもない膂力だった。


「ヤヨイーッツ!」

嬉々とした表情でセシリアがヤヨイに迫りくる。

一瞬で目の前に現れ、振り下ろされた深紅の刃が弥生の頭を狙う。


「あっ・・・ぐぅッ!」

薙刀の柄を前に出し受け止めるが、そのままセシリアに振り抜かれ、体ごと押し潰すかのように弥生は地面に叩きつけられた。


「あがッツ!」

地面を割る程の強い衝撃を全身に受け、一瞬視界が真っ白になるが、続けて襲い来るセシリアの殺気をその身に感じ、意識ではなくその体が反射的に弥生の体を動かした。


「あら!?すごいじゃない!あの体勢から躱すなんて、あなた本当に最高よ!」


躱すとほぼ同時に、一瞬前まで弥生の体があった場所に、斬撃が撃ち込まれる。


セシリアから大きく距離を取った弥生だったが、セシリアは開いた距離を一瞬で埋めて弥生の眼前に現れた。


「どうしたの!?あなたの力はこんなものじゃないでしょ!?私をがっかりさせないで!」


「くそっ!」


下がりながら苦し紛れに振るった一撃だが、セシリアは右手一本で弥生の刃を受け止め、そのまま驚きの顔を浮かべた弥生の左脇腹を蹴り抜いた。


「あぐッ・・・!」

蹴り飛ばされた弥生はそのまま地面に叩きつけられ、何度かその体を跳ねさせた後、体中を土と砂にまみれさせてやっと動きを止めた。


脇腹に残る強い痛みに顔を歪めながら体を起こし、口の中に入った砂利を吐き出す。

血液が混じったそれは茶色の地面に赤く色を付ける。



「・・・ねぇ、どうしたの?ヤヨイ、あなた本当にこれで精いっぱい?・・・だとしたらガッカリだわ。何年も待ち続けたのに、あなたも血狂刃の本性は受け止めきれないの?」


膝に手を着いてなんとか体を起こす弥生を見て、セシリアは溜息を付いた。

かつてカエストゥスの城で初めて弥生を目にした時、その体の中に眠る秘めた力・・・そう、魔法とは違う、なにか大きな力を感じ興味を持った。


それがなにかは分からなった。

だが、セシリアは弥生に対し運命めいたものを感じていた。

いつか自分はこの女と戦う時が来るだろう。そしてその時は持てる力の全てをぶつけられるはずだと。



血狂刃の第一段階は互角だった。


セシリアは確信した。

弥生が隠し持っている力、そして自分の血狂刃の本性・・・・・


互いの全力をぶつけられるはずだと




「・・・期待しすぎちゃったのかしらね。ヤヨイ、本当にそれが全力なら、もう終わりにしましょうか。あなたの代わりに、そうね・・・ウィッカーにでも相手してもらおうかしら。あの男も血狂刃の本性を見せるだけの力はあったしね」


ゆっくりと弥生の前まで歩いてくると、セシリアは深紅の片手剣を弥生の顔に突きつけた。


「・・・さよなら、ヤヨイ」


落胆の色をあらわにした冷たい声で別れを告げると、剣を上げ弥生の首筋を狙い振り下ろした。






「・・・え?」

セシリアの目が驚きに開かれる。

何かを隠しているとは思っていた。風の力も強力な武器だが、それだけではないと思っていた。



「・・・ヤヨイ、意外に人が悪いのね・・・こんなの初めて見たわ」



全身から眩いばかりの光を発し、弥生は右手一本でセシリアの剣を止めていた。


さっきまでは両手でも受けきれなかった。

だが今はセシリアが力を込めて押し切ろうとしても、弥生の薙刀も押し返そうと力をぶつけて来る。


「あはっ!すごいじゃない!なによそれ!?その光はなんなのよ!?」


「セシリア・・・見せてやるよ、アタシの全力を!」


声を上げて薙刀を振るいセシリアの剣を弾き返す。

その勢いでセシリアの体が右に流れて胴が空くと、弥生はその気を逃さず左拳をセシリアの右脇腹に叩きこんだ。


「ぐっうぅッ・・・」


セシリアの顔が痛みに歪む。今度はセシリアが弥生から距離を取る番だった。

大きく後ろに飛び退くと、ダメージを確認するように脇腹に手を当て軽く撫でる。


「・・・一発、返させてもらったよ」


弥生は薙刀を軽く振るい体を半身にすると、刃は地面と平行にし、左手で片端を上から持ち、右手は腰の辺りで下から持ち構えた。脇構えである。



「この光がなんなのか、アタシもよく知らないんだ。でもアンタのその炎に対抗できる力なのは間違いない。セシリア、覚悟しな!」


弥生の体から発せられる光は、セシリアの炎に勝るとも劣らない気を放っていた。

そのプレッシャーは木々を揺らし、舞い散る葉を破裂させる。



「うふふ・・・いいわ。それでこそ、私の見込んだ女よ。来なさい、弥生」


自分の体を吹き飛ばさんとする程の気を浴びせられるが、セシリアは狂気と愛情の入り混じった赤い瞳で、愛しい恋人でも見るかのように目を細めて微笑み浮かべながら、血狂刃を構えた。



二人の視線は交わり合っているが、もはやセシリアに瞳の力を使うつもりはなかった。

そんな決着は望んでいない。弥生に求めるものは血と肉が感じられる魂のぶつけ合い。



睨み合う両者の間に一枚の葉が舞い落ちる。


空気を破裂させる乾いた音が鳴り響き、木の葉が二つに割れた時、弥生とセシリアの刃がぶつかり合った。



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