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36 牢屋の隣人

誤字・脱字を見つけたので修正しました。内容に変更はありません。

クインズベリー国

土の精霊の加護を受け、農業が盛んな国である。

穀物、野菜、果物など、多種多様な農産物の生産量は大陸一であり、それらの輸出による貿易で、

この国は大きく発展を遂げてきた。


隣国ロンズデールは、水の精霊の加護を受け、

豊富な水源による水産業と造船を生業としている。

国民の1/3は漁によって生計を立てているが、決して乱獲はせず、水生生物と共存した国造りを行っている。


ブロートン帝国は大陸1の軍事国家である。

火の精霊の加護を受け、銅や鉄鉱石が盛んに取れる鉱山がいくつもあり、

それを元に軍事力を強化していた。


三国は上手くバランスが取れ、友好関係を維持していたが、

昨年、保守的だったブロートン帝国・皇帝ローレンス・ライアンが崩御すると、

継承権を持つ皇帝の世継ぎ、親族が次々と不慮の死を遂げる。


皇帝の座をいつまでも空位にしておく事ができず、

軍の最高司令官 ダスドリアン・ブルーナーが暫定的に皇帝に就く事となった。

そしてこの日を境に、三国の関係に不和が生じていく。



「俺が知ってるのはこんなとこだな。ダスドリアンが皇帝になってから、少しづつだが、確実に三国の力関係がおかしくなった。特にロンズデールだ。あそこは一体何があったんだ?貿易自体は続いているが、こっちに不利な条件での取引が明らかに多くなった。交渉が難航するとすぐにブロートンの名前を出して、鉄の卸値にも響くような事を言ってくる。今じゃ事実上のブロートンの飼い犬だな」


冷たい石造りの壁越しに、少しかすれた感じのハスキーな声が聞こえる。

「そっか、前にロンズデールはブロートンの傀儡だなって聞いた事があったんだけど、本当みたいだな。でも、具体的に何があってそうなったかは分からないんだ?」


俺が協会に連れて来られて3日目。

ここは四畳半程度の広さの石造りの独房だった。

用を足すための穴が部屋角にあり、あとは寝る時の毛布替わりに藁の束があるだけのだった。


一応窓を兼ねた通風口もあるが、逃亡防止のため、目の細かい金網が張られていて、外の様子はほとんど分からない。僅かに陽の光は入ってきて、昼か夜かを判別できる程度だった。


「そうだな。本業の情報屋なら、知ってるヤツもいるかもしれないが、あまり深入りしない方がいいぞ。俺の勘だが、そこは踏み入っちゃ駄目なとこだ」


「分かった。貴重な情報をありがとう」

「いや、俺も話し相手ができて助かるぜ。アラタがいなかったら暇で死んでたかもな」

そう言うと、壁越しにクックックッと、悪だくみをしているような含みのある笑い声が聞こえてくる。


隣の独房にいる男の名は、ヴァン・エストラーダと言い、ここにもう6ヵ月幽閉されているらしい。


食事は1日1回の粗末なパンと、野菜の切れ端が申し訳程度に浮いている味の無いスープだけ。

これが朝運ばれてきて、それでお終いだ。


6ヵ月もこの食事では、痩せ衰えて死んでしまうのではないか?

そう尋ねると、ヴァンは元治安部隊隊員だったと言う。

上の立場だったようで、今でもヴァンを支持する隊員が多く、幽閉はしたものの、もし死んだとなれば大事になるから、一日一食だが比較的まともな食事と、定期的に体調の診断は受けられているとの事だった。


「なぁ、ヴァンは何をやって幽閉されたんだ?」

「ん?大した事じゃねぇぞ。マルゴンのやり方に反対しただけだ。マルゴンが隊長になってから、

犯罪率が9割も下がった事は知ってるか?数字だけ見れば驚異的だ。だが、街の人の俺達を見る目はすっかり変わったな。カリウスが隊長だった時は、街の人とも仲良くやってたんだぜ?そりゃ、今と比べれば悪さするヤツは多かったし、隊の統率も今ほどビシッとはしてなかったけど、少なくとも仕事に誇りは持てたな。だから、マルゴンに話し合いを要求したんだ・・・」


ヴァンの口調が少し硬くなった。

苦い記憶に触れてしまったなと思ったが、黙って続きを待った。


「・・・結果は全く駄目だった。俺が何を言っても聞く耳もたずだ。それで俺は反逆罪でこのざまって訳だ。まぁ、もう今の治安部隊には嫌気がさしてたからな。その場で辞めてやったんだよ。清々したね」

投げやりな言い方だったが、本心では治安部隊にまだ気持ちが残っているのではと感じた。


今の治安部隊はマルゴンが権力を持ちすぎているのだろう。

マルゴンの行き過ぎた正義感が問題なのだ。ヴァンのような男が隊長になれば、また治安部隊と街の人間にも信頼関係が戻るのではないだろうか。

そう伝えると、また壁越しに含みのある笑い声が聞こえたが、それっきり静かになってしまった。


俺は藁の上にゴロリと寝そべった。無機質な石造りの天井が目に入る。


あの日、ここに連れて来られた時には、すっかり暗くなっていた。運よくトバリには出くわさなかったが、馬を走らせていたフェンテスや、回りの隊員からは、黙っていても緊張感は伝わってきた。


遠くから何度か見た事はあったが、間近で見ると、協会はとても大きな建物だった。

言わゆる日本の、神を崇める西洋建築風の教会堂と建物の造りは似ているが、

屋根の頂上に十字架などは無く、信仰の形を表しているような物は見当たらなかった。


ここ、クインズベリー国 首都では、治安部隊が約3,000人駐在している。

首都以外の街にも同様の協会が設置されており、街の規模にもよるが、隊員がそれぞれ500~1,000人程配備されているそうだ。

クリンズベリー国治安部隊の総人数では、およそ20,000人になるらしい。


後で、ヴァンから聞いた事だが、協会では神を崇める聖堂もあり、礼拝も行っている。


協会の役割は、礼拝に来た国民を導く事と、治安部隊が街の秩序を守る。大きくこの二つらしい。

礼拝は月に2回、月中と月末に行われる。聖堂は数千人は入れそうな大きさだが、毎回満員になるらしい。

それは信仰心からというより、マルゴンが恐ろしいからではないだろうかと思った。

協会への忠誠心を見せる意味で来ている人も多いのではないだろうか?

ヴァンの話しでは、カリウスが隊長だった時には、せいぜい500~600人しか集まらなかったそうだ。


俺はふと、以前助けたロイという男を思い出した。

カチュアと二人でキッチンモロニーに行った帰りに、襲われていたところを助けた男だ。


マルゴンに騒動の原因を聞かれた時、ロイは俺とカチュアに疑惑が向かないように、

一生懸命いきさつを説明してくれた。


その時マルゴンはロイの事を、礼拝にもいつも来ているから信用できると、そう言っていた。

その事を考えに入れてみると、やはり礼拝には来ていた方が、マルゴンの心証は良くなり、万一の時には恩恵を受けれるかもしれない。



無事に協会に着き中に入ると、100人以上はいただろう。待機していた隊員達が整列してマルゴンを出迎えた。

私語は一切なく、隊列も目を見張る程整っていた。空気は張りつめており、マルゴンの一挙手一投足を隊員達が見ている。なにを指示されても瞬時に対応できるよう、常に気を張っているようにすら見えた。


マルゴンについて行き、通された部屋は思いのほか広く、20人くらいは入れそうだったが、イスが一つあるだけで窓も何もなく、冷たい石の壁に覆われ、夏なのに寒気がしそうな暗い空間だった。


それからは何時間もずっと同じ話を繰り返すだけだった。

本当は何か知っているのではないか?

襲撃の原因は自分にあるのではないか?

本当に記憶が無いのか?

なにが目的でこの国に来た?


こういった質問が、ニュアンスを変えて延々と続けられた。

記憶の事は、本当の事を話すとよりマズイ状況に陥ると感じ、一貫して無いと言い張った。

その他の質問に対しても、知らないものは知らないとしか答えられなかった。

事実、ディーロ兄弟など初めて見たし、襲撃の原因など、個人に対してではなく、

むしろ協会にあるのではないかとさえ感じてしまう程だ。


明け方、ようやく話が終わったかと思うと、俺はそのままこの独房に入れられた。

「サカキアラタ、今日のところはここまでにしましょう。素直に話す気持ちになる事を期待しております」


最後にマルゴンはそう言っていた。

やはり、いくら否定をしても、マルゴンが決めつけている以上、納得させる事は難しいだろうと感じていた。


翌日もその次の日も、マルゴンの取り調べは連日続いた。毎日毎日、同じ質問を何度もされ、俺は何度も同じ返答をする。何時間もそれを繰り返すと、初めはイライラするが、やがて自分の言っている事が正しいのかどうか、分からなくなる瞬間がある。


きっと警察で理不尽な取り調べに負けて、やってもいない事をやったと言ってしまうのは、こういう心境なのだろうと思った。俺はいつまで持つだろうかと弱気になる。


「・・・まだ、たった3日じゃないか、頑張れよ・・・」

カチュアから借りているネックレスを手に取り眺める。


ずっと待ってるから・・・・・


最後に聞こえたカチュアの声を思い出す。


「そうだ、俺は絶対に帰らないといけないんだ。負けねぇぞ」

藁の上で体を横にして目を閉じる。正確な時間は分からないが、気温が下がってきたように感じるので、夜も更けてきたのだろう。トバリが気になるので、網目越しでも外は見ないようにする。


できる限り体力の消耗を押さえ、空腹を忘れるためには寝る事が1番だろう。

あれから店はどうなっただろう?みんな元気にしているだろうか?


これまでの事を色々と考えていたが、目を閉じていると、いつの間にか眠りに落ちていた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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