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【350 自爆】

ルシアンの叫びが耳に入ってくるが、エロールはもはや音が気にならなくなっていた。



腹に開けられた穴にヒールをかけ続ける。

しかしそれは角が刺さったままだった。


エロールの行った治療は、一定の延命の効果はあった。

だが、いくらヒールをかけ続けても、角が刺さっているかぎり傷口は塞がらない。


本来であれば、意識を失った時点で死亡していて当然ともいえた。


だが、エロールの生きなければという強い意思が、無意識化でもヒールをかけ続けた。

偶然と幸運が重なり、エロールは意識を取り戻す事もできた。




・・・俺にしちゃ、上出来だったな・・・


魔力はのこっている。

だが、エロールはもはや自分にヒールをかける事もできない状態だった。


・・・まぁ、こいつを倒す事はできなかったけど・・・あとは、なんとかなるだろ・・・


エロールはゆっくりと瞼を閉じた。




・・・クセッ毛・・・悪い・・・・・



自分はここまでだ・・・


消えそうな思考の最後にその思いがよぎった時、ふいに体が温かくなり心地よい光に包まれる。

腹の痛みが急速に治まり、息苦しさも消えていく。





「・・ール!エロール!」


「・・・う、ん」



暗闇に沈みそうだった意識が戻り始めると、聞き覚えのある声が耳に届く。

声に導かれるように、ゆっくりと目を開けると、懐かしい顔が目に映った。



「・・・ジャ、ニス・・・様?」


「ふぅ・・・良かったぁ~、ギリギリだったけど、なんとか間に合ったね」




なんでここに?

真っ先にうかんだ疑問だったが、それを聞くより先に、エロールは自分の体の状態に気付く。


腹に開けられた穴は、傷一つ残らず綺麗に塞がれていた。

まるで最初からそんな怪我など負っていないかと思える程の、見事な治療だった。


それはルシアンの蹴りで砕かれた左腕も同様だった。

意識せず左腕を着いて上半身を起こすが、起こした後でエロールは気が付いた。


「あ、左・・・腕・・・?」


「あぁ、一緒に治しておいたよ」


ジャニスはなんでもないように話すが、エロールは、ありがとう、と口にし小さく息をついた。




気を失ってたようだから、はっきりとは分からねぇけど、そんなに時間は経ってないはずだ。

せいぜい2~3分てとこか?


その短い時間で、腹の穴を塞いで、砕かれた腕まで治したってのか?



「・・・本当、敵わねぇな」


「ん?なに?」


「・・・いや、なんでもねぇですよ」


この数年で、少しは差が埋まったと思っていた。


だが、まだまだジャニスには遠く及ばない。

白魔法使いとしての実力差を痛感させられ、エロールの心に悔しさと嫉妬が沸き出て来る。


だが、すぐに首を横に振り、いつものぶっきらぼうな口調で、ジャニスに言葉をかける。


「ジャニス様、あいつは?ルシアンはどうなったんです?」



その質問に、ジャニスは言葉では返さず、視線を向ける事で答えた。




10メートル程度だろう。エロールから少しだけ離れて、ジョルジュとルシアンが睨み合っていた。

しかし、ルシアンは右足を吹き飛ばされ、左足も膝を破壊されている。

もはや立つ事はかなわず、ジョルジュが見下ろしているという形になっていた。



「・・・ジョルジュ・ワーリントン・・・残念だ。せっかく貴様と再び相まみえたのに、私はこの通りのざまだ・・・もう戦う事はかなわない」


言葉とは裏腹に、軽い口調で話すルシアンを見て、ジョルジュは眉をひそめる。

前回、あれだけ自分に対して憎しみを向けた相手にしては、物分かりが良過ぎる。このまま大人しく自分の弓で頭を射られて終わるつもりだろうか?


そして、この状況で、帝国兵が誰一人としてルシアンの救出に乗り出して来ない事にも、違和感を感じていた。



「お前との格付けはあの日に済んでいる。俺にとっては、もうお前はこのまま射殺すだけの存在だ」


ジョルジュが弓矢を構えると、ルシアンの口から笑いがもれだした。


「フッ・・・クックック・・・ハッハッハ・・・」


「・・・なにがおかしい?」


「フッフッフ・・・貴様の事だ、おかしいとは感じているのだろう?なぜ誰も、俺を助けに来ないのか?」


ジョルジュに向けるルシアンの目は、なにもかも見透かしているかのようだった。

事実、ルシアンの指摘は当たっていた。ジョルジュには、指揮官であるルシアンの窮地に、誰一人助けに来ないどころか、黙って様子を見ている姿が異様に映っていた。



「・・・教えてやろう。私の指示だからだ。こうなってしまっては、もう救出の必要がないのだよ」


「死を覚悟しているという事か?愁傷なものだな」


「フッ・・・そう思うか?まぁいい・・・貴様らはここで・・・私と死ね」



ルシアンの体が炎に包まれる。

天高く燃え上がる炎は、まるで巨大な柱のようにその存在感と強さを見せる。



ナパームインパクトは、火の精霊の力を使う事でいつでも任意に発動できる。




こいつ!自爆する気か!?


ジョルジュの目が驚愕に開かれる。

風を纏い一歩大きく後ろに飛ぶが、到底間に合うはずがない。






フッ・・・帝国は負けてはならんのだよ。

・・・皇帝、申し訳ありません。私はここまでです。


ですが、この男・・・ジョルジュ・ワーリントンはここで道連れにします!


火の精霊よ、私はここで終わりだ。だから遠慮はいらん。

全力のナパームインパクトを見せてやれ!


ルシアンは自分がダメージを受けないよう、ナパームインパクトを使う時は、火の精霊の加護で防げるレベルにまで威力を押さえていた。


だが、死を受け入れた男にもうそんな必要はない。



目を開けていられない程の強い光がルシアンから放たれたと思った瞬間、左右一発づつ、計二発分のナパームインパクトが大爆発を起こした。




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