表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
338/1555

【338 エロールとフローラ②】

「ご馳走様・・・」


手を合わせてスプーンを置き、皿を持って立ち上がると、フローラが、いいですよ、と言いながらエロールから皿を受け取りキッチンへ持って行く。


「片づけくらいやるぞ」


エロールが言葉をかけると、フローラはチラリと顔を向け笑って見せた。

くつろいでいるが、エロールもフローラも、白のパイピングに深緑色のローブという、いつもの白魔法使いの服装で過ごしている。


これは、現在の状況を考えての事だ。

敵がいつ攻めて来るかわからないから、こうしていつでも出られるように控えているに過ぎない。


「いいですよ。あ、先輩はカフェオレでしたよね?座って待っててください」


「そうか、何から何まで悪いな」


イスに腰を下し、部屋を見回す。

ブローグ砦内には、部隊長、指揮官クラスにだけ分け与えられた個室がある。

備えは、最低限の料理が作れるキッチンと、シングルベット、そしてイスとテーブルがあるだけだが、

平の兵士が大部屋という事を考えれば、贅沢と言える待遇だ。


「俺の部屋とほとんど同じ作りだな」


「そりゃそうですよ、結局は砦の個室なんですから、はいどうぞ」


カップを受け取り一口含む。ほんのりとした甘さと温かさに、ほっと息を付く。


「・・・美味いな」


「甘さ、それくらいで丁度良かったですよね?」


「あぁ、このくらいでいい」


「クッキーもありますよ。先輩、チョコとか何も入ってない普通のクッキーが好きでしたよね?」


「あぁ、それが好きなんだ」


エロールがクッキーをかじり、カフェオレを飲む。

フローラは正面に座り、ニコニコと満足気にその様子を見ている。


「・・・なぁ、クセッ毛」


「無造作ヘアですけど、なんですか?先輩」


「お前・・・戦えるか?」


チラリとフローラに目を向け、エロールが探るようにその言葉を口にすると、フローラの表情が曇った。


「・・・はい、私も部隊長に任命されてから、戦う覚悟は決めてきました。怖いですけど・・・頑張ります」


「・・・・・そうか」


エロールは腰を上げると、脇に置いていた紙袋を手に取りフローラの前に置いた。


「やるよ」


「え!せ、先輩が・・・私にプレゼントですか?」


フローラは目を開き、目の前の紙袋と、エロールの顔を何度も交互に見る。


「・・・驚き過ぎだ。ったく、話しが進まねぇな・・・ほら、これだ」


エロールはフローラの隣に腰を下すと、紙袋の中からマフラーを取り出し、フローラの首に巻いていく。


「え!えぇっ!?ちょっ、せ、せんぱい!・・・あ、これって?」


「俺と同じ魔道具、反作用の糸だ・・・と言っても、俺のと全く同じ効果があるわけじゃない。お前の今のレベルじゃ、攻撃も防御も全部使いこなすのは負担がでかすぎる。だから、防御だけだ。いいかクセッ毛、この反作用の糸がどんな攻撃からもお前を護る。だから安心しろ」


エロールに巻いてもらったマフラーの魔道具、反作用の糸を手に取り見つめるフローラ。

その口元が喜びでほころんでいく。


「・・・嬉しいです。先輩が編んでくれたんですよね?」


「俺以外に誰が編めんだよ?」


「先輩と同じ水色だ・・・えへへ」


「・・・あ~、他に糸が無かったからな」


「先輩、私・・・怖くなくなりました」


「おぅ、そりゃ良かった。・・・んじゃ、俺はそろそろ行くぞ」



エロールが立ち上がると、フローラが袖を掴み、エロールを引き留める。


「ん、どうした?」


「もう、帰っちゃうんですか?」


「・・・ん?食事もしたし、マフラーも渡したし、あと帰るしかないだろ?」


「・・・先輩って、ほんっとーに先輩ですよね?」


「なに言ってんだお前?」


エロールが心底理解できないという顔で首を傾げると、フローラは、もういいです!と少し強く言い、エロールの背中を押して部屋から追い出した。


「痛ってぇーなぁ!クセッ毛!お前本当になんなんだよ!?」


「先輩はもっと女心を勉強してください!」


バタン!と、勢いよくドアを閉められると、エロールは頭をぽりぽりとかきながら、わけわかんねぇ、と呟きフローラの部屋から離れる。



「先輩!なんでそこで帰るんですか!」

「あ!?」

今度は、バン!と、勢いよくドアが開き、口をへの字に曲げたフローラが顔を出す。


「普通、ドアの前で必死に謝って、なんとか機嫌直してもらおうと頑張るとこですよ!」

「あぁ!?お前何言ってんだ!?」

「もぅ!本当に先輩ですね!もういいです!じゃあ、早く入ってください!」

「いやいや、なんで?食ったし渡したし、あと何もする事ねぇよな!?」

「まだ七時じゃないですか!用事がないなら私の部屋でお話ししましょうよ!」

「なんで用事ねぇって決めつけてんだよ!」

「あるんですか!?」

「ねぇよ!」

「じゃあ私と一緒にいればいいじゃないですか!先輩、私の事嫌いなんですか!?」



「え?い、いや、そんな事ねぇけど・・・」


「・・・じゃあ、一緒にいてくださいよ・・・」


俯きながらエロールの前まで来ると、フローラはエロールの袖を摘まんだ。



「・・・面白い話しとか、なにも知らねぇぞ?」


「・・・先輩、ここは余計な事言わないで、ぎゅっとするとこですよ?」


「あぁ?なに言ってんだお前?」


「・・・もういいです。ほら、早く入ってください」


「はぁ~、わぁったよ。もうちょっと付き合うわ・・・」


エロールは諦めたように大きく息をつくと、フローラに袖を引かれ部屋に戻って行った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ