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【332 磔(はりつけ)】

数十人による上級魔法の一斉攻撃。

パトリックは咄嗟に天衣結界を弥生に向け使ったが、結界はダメージも蓄積するし、耐久力を越えた場合は当然崩壊する。


パトリックの天衣結界ならば、上級攻撃魔法であってもある程度は耐えられる。

だが、あれだけの人数の上級攻撃魔法を一斉に受けては、とても持たない。




逃げ場は無かった。

事前の訓練が伺える程、見事に統率された連携で、上下左右、隙間なく弥生を包囲し魔法を撃つ。

そして巻き添えを避けるため、高速で場を離脱する動きにも淀みが無かった。


光源爆裂弾が大爆発を起こし上空に爆煙が上がる。それは雲も吹き飛ばし、地上のパトリックにも、爆発による荒れた風に叩き付けられる程だった。


灼炎竜の炎が燃やし、爆炎がより強く大きな炎として空を赤く染める。

爆発による風は熱を帯び、火の粉を地上に散らす。


トルネードバーストの竜巻が打ち砕く。

濛々とする爆煙に竜巻がぶつかり、爆煙はさながら炎を帯びた巨大竜巻となった。

竜巻の中では激しい爆音も響かせながら、炎が踊り、荒れ狂う。



たった一人の弥生に向け放たれた攻撃魔法は、街一つ壊滅できるのではと思える程の破壊力を見せた。





あまりに凄まじい威力に、帝国軍もカエストゥス軍も、しばしその光景に釘付けになってしまっていた。


生存は絶望的だろう。

いかに天衣結界でも持たない。弥生の風を使った防御でも凌ぎきれるとは思えない。



「弥生ーッツ!」


パトリックは弥生の名を叫んだが、返事が返って来るはずもなく、ただ茫然とその場に立ち尽くした。





「・・・へへ、終わったな」

「ああ、あれだけ上級魔法を受けて生きてられるわけがねぇ」

「そうだ、俺達の・・・ん?」


まだ収まりそうもなかった爆煙が突如風に吹き飛ばされる。


「な!?なんだ・・・あれ?」

「そんな!?あれだけの攻撃を受けて・・・」


煙を吹き飛ばし現れた弥生を見て、帝国の魔法使い達はその姿に驚き、感じたままの言葉を口にする事しかできなかった。



「・・・こっちの世界に来て、ずっと気になってたんだよね。アタシの中に、なにかすごい力が眠ってるって・・・これかぁー・・・」


弥生の体は眩いばかりの光に包まれていた。

とても力強いその光は、弥生を護るようにその輝きを発している。



「む、無傷だと!?」

「馬鹿な!あ、あれだけの上級魔法を受けて傷一つないのか!?」

「こ、この女、いったい・・・」



弥生は自分の体を見つめていた。

あふれ出る力に弥生は少しの戸惑いも感じていた。



凄まじいな・・・これ程の力が私の中にあったとは・・・

この力が無ければ、あれだけの魔法を防ぐ事はできなかっただろう。

危ないところだった・・・・・


そして、おそらくこの力は私の生命力・・・

これだけのエネルギー、そして体にかかる疲労感・・・あまり長くは持たないな・・・



「・・・一瞬で決めさせてもらう」



帝国兵達が再び攻撃に移ろうと構えたその時、弥生の薙刀から光の刃が放たれた。







「な、いったい何が起こってる!?」


マイリスは、驚きのあまり声を荒げた。

先行させた黒魔法使い達の魔力反応が、一瞬で百以上も消えたのだ。


「あの上級黒魔法の一斉攻撃に耐え、さらに一瞬のうちに、百以上の黒魔法使い達を仕留めたと言うんですか?こ、この敵は一体・・・」



マイリスが言葉を口にしている間にも、帝国黒魔法使いはその数を減らしていっている。


「くっ、このままでは!」


右手人差し指を前に出し、マイリスは指門の筒に魔力を集中させる。


「・・・先行の黒魔法使いが、全滅・・・そして、こっちに向かっている。コイツ、僕の位置まで捉えてますね?」


どうやって探っているかは分からない。

だけど、この敵は何らかの方法で僕の位置を捉えている。この迷いの無い動きは間違いない。


「やっかいな敵ですね。逃げられそうもないし、僕との相性は最悪です。詰められる前に終わらせたいですね・・・」



マイリスは目を細めて神経を集中させる。

体力型である弥生には魔力は無い。だが、研ぎ澄まされたマイリスの感覚は、自分に向けられる殺気を捉え、そこに狙いを付けた。


「指門の筒を使った僕の光源爆裂弾・・・・・受けて見ろ!」


マイリスの指先から強烈な光と共に、膨大な魔力を秘めた破壊のエネルギーが撃ち放たれた。








数百人の帝国の黒魔法使い達を、ほとんど一人で倒した弥生は、そのままマイリスの元に飛んで向かっていた。


「つっ!?」

僅かな光が見えたと思った瞬間、弥生の体は強烈な衝撃を受けた。

黒い爆煙が全身から尾を引き、体が打ち上げられる。


「くっ・・・この威力!?」


光を纏った弥生はマイリスの一撃に耐える事はできた。帝国兵数十人の上級魔法でさえ、無傷で防いだ弥生の光の力ならば、一撃でダメージを通す事は無い。

だが、マイリスの魔法の威力は、弥生をその場に踏みとどまらせる事までは許さなかった。


体制を立て直そうと上半身を起こすが、すでに目の前には二発目の光源爆裂弾が迫っていた。


咄嗟に両腕を交差させ身を護るが、再び直撃を受けて、爆発に体を大きく吹き飛ばされる。


「うぐっ!こ、こいつ!?」


マイリスの魔法は弥生の光によって防がれている。

魔法によるダメージはまだ与えられていない。


だが、爆発で吹き飛ばされる衝撃までは無効化する事はできない。

少なからず、弥生は体に痛みを感じ始めた。


そして、弥生が吹き飛ばされた先に、マイリスの光源爆裂弾が三度直撃する。


「ぐっ・・あぁっ!こ、こい・・・つ!まち、がい・・ない!ア、アタシを・・・」



アタシをこのままはりつけにするつもりだ。



吹き飛ばされる。体制を立て直そうとすると、追撃にまたも吹き飛ばされる。


抜け出せないマイリスの正確無比な連続攻撃に、弥生はなすすべなく撃たれるままになっていた。







「ずいぶん防御力が高いようですけど・・・もう、お終いですよ。僕は絶対に外しません」


この指の先の相手こそが、カエストゥスの指揮官クラス、中心人物だろう。

何をやって防いでいるのか分からない。結界の魔道具を大量に持っているのかもしれない。

だが、そんな事はどうでもいい。



「死ぬまで撃ち続けるだけです」


氷のように冷たい微笑を浮かべ、マイリスは指先から魔法を放った。



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