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32 背中預けて

脱字を見つけたので修正しました。内容に変更はありません。


6/18 改行がおかしかったので直しました。内容に変更はありません。

「アラタ!私が仕留めるから、フォローお願い!」


レイチェルは正面を向いたまま声をあげる。一歩遅れてオレも続く。


レイチェルに狙いを定めた瘴気の鞭は、勢いよく頭上に振り下ろされるが、身をひるがえし軽々とかわすと、ジャーマルに向かって加速した。


直感だが、この瘴気の鞭は触れては駄目だ。普通の鞭のようにただの打撃で済むとは思えない。

レイチェルもそれは察しているはずだ。


「オラァッッ!」


手首を返し、かわされた瘴気の鞭を横殴りにレイチェルに向け振るう。

あと一歩で懐に入れる距離まで詰めていたが、膝と腰を曲げ低い姿勢で横なぎをかわす。


レイチェルが視線を上げ、下から突き上げるように、ジャーマルの心臓目掛けナイフを走らせる。


だが、ジャーマルもいつの間にか右手にナイフを握っており、レイチェルの喉元目掛けて切りかかった。


「死ね!クソ女!」


「さっきから、俺を無視してんじゃねぇよ!」


一瞬早く、俺の左フックがジャーマルの顔面を打ち抜いた。


それは文字通り、ジャーマルの顔面を俺の拳が貫通して打ち抜いていた。

右の頬から顎にかけて、ごっそりと抉り、それは瘴気になって散っていく。


煙でも殴ったかのように、拳にはまるで手ごたえが無かった。しかしそれは予想通りだった。


切り落としたはずの首は無く、瘴気によって再生する。

どんな魔法か分からないが、そのままの体の作り。つまりコイツの体は瘴気でできている。

俺はそう考えていた。


ダメージは無いだろう。だが、仰け反らせる事はできた。ジャーマルはバランスを崩し、ナイフは空を切った。

俺は殴った勢いそのままに体を前方に流すと、レイチェルのナイフがジャーマルの体を斬り裂いた。


ナイフは左胸から肩にかけて深く肉を抉り取った。普通なら致命傷だ。

だが、レイチェルのナイフは止まらなかった。


突き上げた右手のナイフをそのまま逆手に持ち替え、魔力の柄を持つ左の肩口目掛けて、勢いよく振り下ろし、切り落とした。

落ちた左腕は黒い瘴気へと姿を変え、塵のように風に吹かれ散らされていった。


「て、テメェッ!このクソ女が!」


下顎が無いが怒りに満ちた声が漏れ聞こえる。首が無くても言葉を発していたし、魔法かと思ったが、果たして同じ人間なのか?


瘴気が集まり再生が始まるが、レイチェルの斬撃は再生が追い付かない程の速さだった。

逆手のまま腹を真横に切り開き、左手に持ち返すと、今度は全く同じ位置を逆方向に刃を走らせる。


二撃で上半身と下半身を真っ二つに斬り裂いた。


一瞬浮いた上半身に狙いを定めると、目にもとまらぬ速さで、縦横無尽に斬り裂いていく。

斬り落とされた肉片は瘴気となって消え、とうとう首から上だけが残るだけになった。



「あら?こんにちは。さっきと逆になっちゃったようだね。体はどこにいったんだい?」


顔の再生は終えていたが、頭だけになったジャーマルは、レイチェルにその顔を踏みつけられ、言葉にならない怒りの唸り声を上げていた。


「アンタ、不死身だって言ってたけど、それは無い。死ぬ条件は絶対にある。

さっきは頭が無くても生きていたけど、このまま頭を踏みつぶして、残りの下半身も切り刻めば、消滅するんじゃないかい?」


そう言ってレイチェルは足に力を込めたが、なにかを察知したのだろうか、突然後ろに大きく飛んだ。


次の瞬間、レイチェルのいた場所に数発の光弾が撃ち込まれ、爆発で土煙が上がり視界が悪くなる。

自然と、俺とレイチェルは背中を合わせて身構えていた。


「もう一人のヤツか!?」


「ミゼルが相手をしていたはず・・・まさか!?」


その時、頭上から声が降ってきた。


「弟をここまで一方的に倒すとはな。強者とは意外な場所にいるものだ」


見上げると、ジャーマルによく似た長身の男が空中に立っていた。

足元には風が渦巻き、それで宙に浮いているようだ。


顔の右半分が焼けただれており、深紅のマントは至る所が焼け焦げ穴が開き、もはやマントとしての体を成さない程ボロボロだった事から、激闘の様子が伺えた。


そしてその両手はジャーマルの頭を持ち、下半身を抱えている。


「あ、兄貴!」


頭だけのジャーマルが歓喜の声を上げるが、兄貴と呼ばれた男は反応を示さず、俺とレイチェルから目を離さなかった。


「・・・ミゼルはどうしたの?」


「あの男なら死んではいない。弟の命の方が大事なのでな、止めは刺せなかった。こんな店の人間が、なぜこれほどの力を持っているのか気になるところだが、私もここまでダメージを負い、

深紅のマントも使い物にならなくなった。大した連中だ・・・敬意を表し名乗ろう、私は黒い太陽のジャームール・ディーロ」


「そう、あんた達二人はどこにも属さない殺し屋って聞いたけど、今はブロートンの使い走りなのかい?」


「女、安い挑発だな?ジャーマルは頭に血が上りやすい。うまくそこを付いたようだが、

私は違うぞ・・・まぁいい、今日のところは引き下がろう」


ジャームールの足元の風が勢いを増し、体がより高く上がった時、突然の風切り音と共に、ジャームールの頭をなにかが貫いていった。


「あ~・・・今のかわしちゃう?ぜってぇ決まったと思ったのに」


後方頭上から声が聞こえ、振り向き見上げると、店の屋根の上でリカルドが弓矢を構え、ニヤリと不適な笑みを浮かべていた。


「でもまぁ・・・無傷って訳じゃ、ねぇみてぇだな」


矢はジャームールの左耳を奪っていた。

ジャームールの左頬から首、肩を、溢れた出す血が赤く染め上げていた。


「・・・この距離で姿が見えなかった・・・そうか、そのマント、幻視のマントだな?」


「お、さすが殺し屋!その通りだ。俺はずっとここでマントに身を隠し、てめぇの頭を射貫くチャンスを狙ってたんだよ」


「・・・本当に面白い連中だ・・・」


ジャームールは俺達の顔を一人一人、ジッと、まるで決して忘れないように見ると、それ以上は口を開かずゆっくりと距離を取り、やがて見えなくなっていった。




「・・・行ったか?」


姿が見えなくなり、緊張状態が解けると深く息を吐いた。


「アラタ、ナイスフォロー。際どいタイミングだったから、助かったよ」


両膝に手を付いて呼吸を整えていると、レイチェルが背中を軽く叩いてきた。


「いや、俺は何もしてないよ。レイチェルの力だって。あんなに強いと思わなかったよ。

動きを目で追うのがやっとだった」


「・・・アラタ、私の動き見えたんだ?」


レイチェルは意外そうに目を丸くしていたが、すぐに優しく微笑んだ。


「私が思ってたよりずっと強いんだね・・・そう言えば、さっき自然と背中も預けたしね。これからも頼りにさせてもらうよ」


レイチェルが手を差し出してくる。


「あぁ、こっちこそよろしく」


俺はその手を握った。本当の意味で仲間になれた気がした。



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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[良い点] いい戦闘シーンだ 緊迫感があった
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