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【225 誕生日パーティーと婚約】

3月30日


今日はジャニスさんの18歳の誕生日。

リサイクルショップ・レイジェスはお休みにして、みんなでジャニスさんのお誕生日会をしている。


レイジェスは週に一回の定休日を設ける事にしたけれど、それとは別に誰かの誕生日などに合わせて、毎月数回の休業日をとる事にした。


だから前もって、店の出入り口やレジ横に、休業日の張り紙を貼っておく事にしたのだ。



夕方から始まるパーティーに合わせて、ジョルジュさん一家と、パトリックさん一家、そしてエロール君とヨハン君も来た。


魔法兵団のエロール君とヨハン君は、去年のクリスマス以来だ。

パトリックさんに頼んで、声をかけてもらったのだ。二人とも来てくれて嬉しい。

少し背が伸びたかな?

このくらいの歳頃の男の子は、四か月も会わないと一気に成長するんだろうな。



二人の様子を見ると、エロール君は相変わらずの憎まれ口をヨハン君に向けているけれど、どうも前より距離が近い。仲良くなっているように見える。


「いらっしゃいませ。皆さん今日は楽しんでくださいね」


「おお!ヤヨイさん!今日もまた一段と美し、痛ッツ!」


玄関でご挨拶をするなり、距離を詰めて来るロビンさんの足を、モニカさんが思い切り踏みつけている。


「あなた、ヤヨイさんはパトリックのお嫁さんですよ?」

「え!?いや、母さん、まだ結婚しては・・・」

「パトリック、あなたもあんまり待たせて愛想つかされないようにね?」

「あ、はい・・・」


どうやらファーマー家では、モニカさんが一番強いみたい。


「ヤヨイさん、こんにちは。ねぇねぇ、これ見てちょうだい!昨日持ち帰ったスカートなんだけど、しっかり直しておいたわよ」


「あ!すごい!どこが切れてたか分かんないくらいですね!」


「でしょ~!私、早くヤヨイさんに見せて驚かせたかったんだから!」


モニカさんは、定休日以外は毎日レイジェスで働いてくれるようになった。

基本はレジ当番だけど、最近は買い取りにも入ってもらっているし、裁縫もできるので、持ち帰って家で修理してきてくれる事もある。本当に頼れる人だ。





「ジャニスさん、お誕生日おめでとう。これプレゼント」


ジョルジュさん家族は、ナタリーさんが代表してジャニスさんにプレゼントを渡した。


「ありがとうございます!開けていいですか?」

綺麗な包装紙を大事そうに開けていくと、栗色のセーターだった。


「ジャニスさんの髪の色に合わせてみたの。気に入ってもらえたら嬉しいわ」

「ナタリーさん、とっても嬉しいです!大事にしますね!」


ジャニスさんはセーターを抱きしめるように持ち、笑顔を見せる。




モニカさんからは、小さめのハンドバックだった。

「ジャニスさん、いつもショルダーバックだけど、小物入れみたいに使えるの一つあると、けっこう便利なのよ」


「モニカさん、ありがとうございます!デザインも可愛いし、嬉しいです!」


一人一人がそれぞれプレゼントすると、大変な数になるという事で、孤児院からは代表してブレンダン様がプレゼントを渡すという事が慣例のようだ。

今回もブレンダン様からジャニスさんへプレゼントを渡していた。


それは、以前街へでかけた時に、ジャニスさんが雑貨屋さんで見つけたお財布だった。

ブレンダン様に、何がいいか相談されて、私が教えておいたのだ。


ブレンダン様はジャニスさんに、これ欲しかったんです!師匠なんで分かったんですか?と喜ばれながら、私にチラリを目を向けて笑った。




それからお食事をして、ケーキを取り分けていると、玄関から、こんにちは~!と声が聞こえて来た。


「あ!レオネラちゃん!待ってたよ!」

玄関ドアを開けて、アラルコン商会のレオネラちゃんが顔を覗かせいる。


お仕事の関係で、少し遅くなるかもとは聞いていた。時間の都合をつけて来てくれたのだ。


「やぁ、遅くなってごめんねぇ~、今日はお招きありがとう」

「来てくれて嬉しいわ。寒いでしょ?どうぞ上がって」


レオネラちゃんは寒がりだ。

こう言うのもなんだけど、レオネラちゃんは褐色の肌なので、私は初対面の時、南米のイメージを持ってしまった。だから寒がりなのだろうと見てしまう。実際はロンズデール出身で、ロンズデールも普通に雪は降る。

だから、単純に寒さが苦手なだけなのだ。レオネラちゃん、決めつけてごめん。と私は心の中で謝る。


「あ!レオネラさん、来てくれたんだ!」

レオネラちゃんに気付いたジャニスさんが、駆け寄って来る。


「そりゃ来るさぁ~、友達のお誕生日じゃん、18歳になったんだね。おめでとう」

レオネラちゃんは、包装紙で綺麗にラッピングされた箱をカバンから取り出して、ジャニスさんに手渡した。


「はい、ジャニスちゃんにプレゼント」


「レオネラさん、ありがとう!開けていい?」


子供達も集まってきて、なにかな?なにかな?とジャニスさん以上に興味持って見ている。



「・・・綺麗・・・レオネラさん、これ何?すっごい綺麗・・・」


「ふふ~ん、それは海の宝石だよぉ~。ヤヨイちゃんのネックレスと同じ石なんだ。この前、青くて綺麗な石が取れてね、ブローチにしてみたんだ。どうだい?気に入ってくれると嬉しいな」


澄みきった海のように透明感のある青い石だった。

ジャニスさんは、とても喜んで、さっそく胸の付けると、子供達もみんな、綺麗!綺麗!と褒める。


「レオネラさん、とっても嬉しいよ!大事にするね!」

「良かったぁ~、うん。とても似合ってるね」



それから、レオネラちゃんをジョルジュさん達にも紹介した。

お誕生日パーティーは、クリスマス以来の大人数で孤児院は大賑わいだった。


メアリーちゃんの手作りショートケーキは、クリスマスの時同様に、子供達が奪う合うように取り合って大人気だった。


今日の主役のジャニスさんの周りにはみんな集まって、おめでとうと言葉をかけている。

リンダさんとニコラさんは、ジャニスさんを挟むように腰を下ろして、思い出話しも始めている。


実は二人は、最近孤児院に泊まる事が多くなっている。


レイジェスの帰りに、モニカさんはそのまま自宅に帰るけど、二人ともそのまま一緒に孤児院に来て、夕飯を食べてそのまま泊まっていくのだ。


週に1~2回は家に帰っているけれど、つまり5日程は孤児院に泊まっている事になる。

どっちが家なのか逆転しているみたいだ。


きっと、孤児院の居心地が良いのだと思う。

ブレンダン様も何も言わないし、部屋はあまっているから問題は無いし、私は賑やかで良いと思う。



みんなワイワイ盛り上がっているし、ジョルジュさんの父エディさん、パトリックさんの父ロビンさんは、ブレンダン様と三人でお酒を飲んで大いに盛り上がっている。


ナタリーさんとモニカさんは、しかたないと言うように溜息をつきながらも、チーズやナッツなどおつまみを持っていき、お酌もしている。

なんだかんだ言っても、やっぱり夫婦なんだなと感じる。




「あの・・・ヤヨイさん、ちょっと外に出れませんか?」


ケーキも食べて、あとはそれぞれが自由に過ごしている。

私とメアリーちゃんとキャロルちゃんで洗い物や後片付けをしていると、パトリックさんが声をかけてきた。


「あ、ヤヨイさん、こっちはだいたい終わりましたので、いいですよ」


キャロルちゃんの言葉に、メアリーちゃんも大丈夫ですよと乗せてくれる。

私は二人にお礼を言って、キッチンから抜け出した。




時計の針は9時前だった。

子供達は今ウィッカーさんがお風呂に入れているので、上がったらもう寝る時間だ。

ちなみに子供でも、一人で入れない女の子は、その時手が空く女性が入れているから問題ない。


三月も終わりと言っても、やはりこの時間は冷える。

私は白いケーブル編みのセーターを着ているけれど、庭に出て寒さを感じたので、コートを取りに中へ戻ろうとすると、パトリックさんが着ていたコートを背中にかけてくれた。



「ちょっと、大きいとは思いますが・・・」


「・・・パトリックさん・・・・・ありがとうございます」


白い息を吐くパトリックさんに、寒いでしょう?とコートを返そうと思ったけれど、こういう時は素直に好意に甘えた方がいいと思った。


「・・・それで、話しなんですけど・・・・・その・・・ですね・・・」


もう私とは普通に話せるのに、久しぶりに言葉を濁している。

パトリックさんの緊張が伝わってきて、私はパトリックさんが何を言おうとしているのか察した。



「えっと、その、あの・・・ですね・・・つまり、俺は・・・・・」


私と目を合わせず、パトリックさんは頭をかいたり、空を見上げたりしながら、落ち着きがない。


こういう時、普通の女性は苛立ったり、冷めるのかもしれない。


でも私は・・・




「パトリックさん・・・・・頑張って」





ハッとしたように、パトリックさんは私に顔を向ける。

目が合うと決意が固まったように、力強さが見える。



全く、パトリックさんはしかたない人だなぁ・・・


助け船出したんだから、カッコいいとこ見せてくださいね。



「ヤヨイさん・・・いつもあなたに助けられてばかりの俺ですが、俺は絶対にあなたを世界で一番幸せにしてみせます!俺と結婚してください!」



「・・・・・はい。私でよければ、どうかよろしくお願いします」



私が言うのもだけど、本当にカッコ良くて、思わず返事が一緒遅れてしまった。


私が了承した事で、緊張がとけたからか、パトリックさんはしゃがみこんで、良かった~、と声を絞り出した。



「あの~・・・パトリックさん、私、プロポーズ了承したんですよ?」

「え?はい。ありがとうございます。すごく嬉しかったです」

「嬉しいのに・・・それですか?」

「え?それとは?」

「・・・しゃがんで、力尽きたみたいな・・・もっと、なにかありませんか?」



パトリックさんは意味が分からないという顔をしている。

それはもう、目を開いて、口を少し開けて、見事にぽかーんとしている。



しかたないので、私はまた助け船を出す事にした。


しゃがんでいるパトリックさんの手を取り立たせると、私は両腕をパトリックさんに向けて少し広げる。


「・・・あ」


さすがのパトリックさんも分かったらしい。

すごくぎこちないけれど、私の背中に手を回すと、遠慮がちに力を入れて抱きしめる。


「・・・鈍くて、すみません」

「ふふ・・・パトリックさんらしいです。なんだか・・・安心します」


ジャニスさんの誕生日だけど、私にとっても記念日になった。

あとでジャニスさんにお礼を言うべきだろうか?

きっと、なんで?と首を傾げるだろう。そうしたらネタばらしかな・・・・・


この日、私はパトリックさんの婚約者になった。




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