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200/1557

【200 弥生と新】

誤字を見つけたので訂正しました。内容に変更はありません。

そして冬が来た。


吐く息も白くなり、毎朝ベッドから起きる事が少し辛くなる。

私は冷え性なので、冬は手と足の指先がいつも冷たい。だからよく両手をすり合わせる。



12月。

日本ならクリスマスを意識する頃だ。


日本で働いていたリサイクルショップ ウイニングでも、この時期は繁忙期だから忙しかった。


私、と言っても、もう一人の弥生は忙しくなると、よくあらたに仕事を押し付けていた。


【新~、なんで毎年クリスマスってこんなに混むんだよ】

【新~、ラッピング代わりにやっといて】

【新~、私ちょい疲れたから、後は頼むよ】


思い返せば、弥生は本当にあらたといつも一緒にいたと思う。


新はとにかく弥生にかまわれていた。仕事も色々やらされていたけど、不思議と嫌な顔一つしないで、しかたないな、という感じに笑って引き受けていた。



弥生は、人付き合いがヘタな新が周りから浮かないように、孤立しないように、いつも周囲との関係に気を配っていた。


最初は早番や中番など、ローテーションで勤務していたのに、新が入ってから閉店までの遅番固定にしたのは、新のためだった。



ほうっておけなかったのだ。


新をバイトに誘った村戸修一以外とは、なかなかうまく付き合えず、いつも悩みながら仕事をしている新を見て、弥生はある日、新に声をかけて昼食を一緒にとった。


弥生は直球をぶつけた。

【新、あんた人間関係下手でしょ?】


そこまでハッキリ言われた事のない新は、さすがに少し驚いたけれど、それでもストレートに言われた事で逆に言いやすくなったのか、これまでの自分を話し始めた。


学校を出て、やりたい事も見つからずブラブラしていた事、なにかバイトを始めても、すぐに人間関係で居づらくなり辞めてしまう事。

頭が固く、自分が正しいと思う事は曲げない事。新は自分の欠点も理解していた。

そして、親子関係がうまくいかず、父親との折り合いも悪い事も話した。


弥生は最後まで黙って聞いた。

そして、最後まで聞いて弥生は決めた。



【じゃあ、アタシが遅番一緒に入ってやるか。修一とは話せるんしょ?遅番は三人いりゃいいんだから、アタシと新と修一の三人が固定で入れば、アンタもちょっとは気が楽でしょ?だから、ウイニングは続けなよ?他の人とは、時間かけて付き合えるようになればいいよ】



以来、弥生はずっと新と遅番に入っている。



ほうっておけなかったのだ。


弥生も母親との関係で何年も悩んできたから。

ずっと自分を殺して生きて来た弥生は、家を出てウイニングで働き、やっと毎日が楽しいと思えていた。


新にも、この店で働いて良かったと思ってほしい。

弥生はそう思った。


見返りを求めたわけではない。

だけど、三年間一緒に遅番で働き、新との間には、特別な信頼関係ができたと感じている・・・






私は窓の外へ目を向けた。

ガラス越しに見える外は、一面白く染まった雪景色だった。



昨日は降っていなかったので、夜の間に積もったのだろう。

どうりで今朝はいつも以上に寒さを感じるわけだ。


時計を見ると、丁度6時だった。

多分、メアリーちゃんはもうキッチンで朝食の準備をしているはずだ。

メアリーちゃんは朝も強くて、どんなに天気が悪くても、毎朝6時には必ずキッチンにいるのだ。

本当にすごい子だ。



私も子供達を起こしに行かないと。

寝巻をぬいで、ケーブル編みの白いセーターに袖を通す。


着替えながら、私はやはり日本の事を考えてしまう。


私がこの世界にいるのなら、新もこの世界にいる可能性は高いと思う。


いつか・・・いつか会えるのかな・・・・・


共有している記憶で、私も新に対して特別な感情を持っている。


それは、まるで生き別れた弟に対するようなものかもしれないけれど、弥生は私以上にとても気にしている事も分かる。


直接の付き合いがあったのは弥生なのだから、当然だと思う。




ねぇ、新・・・あなたもこの世界に来ているのかな?


修一はどうなったかわからないけれど、記憶にある最後のあなたは、呼びかけても返事が無くて、死んでしまったように見えた・・・・・そして私もそこからの記憶がないの



私達は、あそこであの男に殺された・・・・・・


それは、悔しいし辛いけれど、どういう運命なのか、この世界で二度目の命をもらい生きている。


それなら、この世界では悔いのない人生をおくりたい。幸せになりたいと私は思う。


新・・・・・あなたにも、そう思って欲しい。

弥生は、私達はあなたを気にしているから・・・あなたもこの世界にいるのなら、もう一度会いたい。


私達はあなたを探すから、あなたにも私達を探してほしい。


いつかまた・・・いつかまた会える事を願っているから

どうかそれまで元気でいてね



着替え終えた私は、少しだけ目を閉じてこの世界に祈った



今日も一日幸せでありますように

そう願い、私は部屋を出た




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