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【192 弥生の目覚め】

読み直したら、なぜか同じ話しがコピーで繰り返し掲載される状態になっていたので、修正しました。すでに読まれた方は意味が分からず混乱されたと思います。確認不足ですみませんでした。

ディーロ三兄弟の絆は強かった。


とりわけ、次男のジャーグールは、両親の虐待から体を張って守ってくれる兄ジャーゴルを尊敬していた。

そんな兄の背中を見て育ったジャーグールは、弟のジャーガルは、兄ジャーゴルのように自分が護らなければという使命感を持っていた。


尊敬する兄と、守るべき弟、ジャーグールは兄弟の中で一番強い情を持って育った。


ジャーグールが12歳になったある日の夜、いつものように三兄弟は身を寄せ合って寝ていると、突然大きな音を立てて父親が部屋へ入って来た。


酒に酔い、もはや何を言っているのかも分からないが、兄弟は身の危険を感じた。


兄のジャーゴルが前に出て弟二人の盾になり、ジャーグールは、三男のジャーガルを体で包むようにして護った。


ジャーグールとジャーガルは、目を閉じ痛みに耐える準備をした。

いつも殴られているからの反応だった。


兄が殴り倒されれば、次は自分達だ。

そう覚悟を決め、キツく目を閉じていた。


兄ジャーゴルが父親と激しく怒鳴り合う声が続き、机や箪笥たんすが大きな音を立てて倒れていく事が分かる。


そして声の様子から、ジャーゴルが父親に倒され、部屋から引きずり出されて行く事が分かった。


ジャーグールもジャーガルも助けたい気持ちは強く持っていた。

だが、長年に渡る虐待で植え付けられた恐怖心はぬぐえず、ただ黙って震えている事しかできなかった。




どのくらいたっただろう。


怒鳴り声と争うような物音は、離れていてもすぐそこにあるように耳に届く。


1分が1時間にも感じる長い恐怖の時間・・・・・


そしてそれは兄ジャーゴルの声によって解放された。




「おい・・・行くぞ。今日から俺達は三人で生きて行くんだ」




ジャーグールの目に映った兄は血まみれだった。


突然の言葉の意味が理解できなかったが、兄ジャーゴルは出て行くと言う。


ジャーグールとジャーガルは顔を見合わせ、恐る恐る部屋を出ようとすると、兄ジャーゴルは言葉を続けた。



「目を閉じろ。お前達見なくていい。俺と手をつないでこの家を出るんだ」



ジャーグールは12歳。弟ジャーガルも10歳。

兄が何をしたのか察する事はできた。


これからは三人で生きて行く・・・・・


そこから三人は裏世界に足を踏み入れて行く。

今から二十年前の事である。



もし、この時三人がブレンダンと出会っていれば、全く違った人生になっていたであろう。





「フハハハハ!なかなか楽しかったぜ。青魔法のくせに、ここまで戦えたのは褒めてやるよ」


孤児院の庭では、パトリックが倒れ伏し、ジャーグール・ディーロに背中を踏みつけられていた。


結界でジャーグールの魔法を防ぎつつ、黒魔法が込められている魔道具、破壊のナイフで応戦したが、

空中から攻撃魔法を放つジャーグールには分が悪く、ジリジリと削られ、ついにパトリックの魔力が尽きた。


「ぐぅぅ・・・ヤ、ヤヨイさん・・・すみま、せん」


「あぁ?ヤヨイ?・・・あ~、一緒にいた女か。良い雰囲気だったなぁ、見てたんだぜ。そうか、お前らそういう仲か?安心しろ、お前を殺したら次はあの女だ」


ジャーグールが右手を振り上げると、手首から先が氷で覆われていき、それはまるで氷でできた刃のように鋭かった。


「ぐッ、き、貴様!ヤヨイさんに手を出したら・・・」


「うるせぇぇッツ!」


ジャーグールは足を高く上げると、力任せにパトリックの背中を踏みつけた。


「ガァッ!・・・ハァ・・・ァ・・・・」


背骨を踏み砕かれたかと思う程の衝撃が体を突き抜け、呼吸すらままならない程の痛みがパトリックを襲う。


「俺の兄貴と弟の痛み・・・・・貴様らを皆殺しにしても全然足りねぇんだよ」



それまでの、どこかヘラヘラと軽い調子で話していたジャーグールとは打って変わり、ゾッとするような冷たい声をパトリックの背にかけると、氷の刃を纏った右手を、パトリックの首に目掛け振り下ろした。



パトリックは死を覚悟して目を閉じた。

思い起こすものは家族・・・父と母・・・そしてシンジョウ・ヤヨイ・・・・・


これまでの人生が次々に頭によみがえり、そしてこれからのパトリックが願う人生が頭に浮かぶ。



ヤヨイさん・・・・・あなたと生きたかった・・・・・・



パトリックは死を覚悟した。

だが、命を奪う刃が喉を切り裂く寸前、突然ジャーグールの体が、横からの強い風に吹き飛ばされ、庭の塀に激しく叩きつけられた。


「ぐうッツ・・・な、なんだ!?」


地面に手を付き、上半身を起こすジャーグール。


パトリックは起き上がる事ができず、顔を地面に付けたままだが、風を起こし自分を助けてくれた人物に目を向ける。




「おい、そこのドレッド野郎、よくもアタシの彼氏候補を傷めつけてくれたな。万倍にして返してやるよ」



サラリとしたロングストレートの黒髪。

いつもどこか寂し気に見える切れ長の瞳は、今は怒りの炎に満ちている。


「ヤ・・・ヤヨイさん?」


パトリックの目には、物干し竿を地面に突き立て、ジャーグール・ディーロを睨みつける新庄 弥生の姿が映った。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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