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【162 ウィッカーとメアリー】

誤字を見つけたので訂正しました。内容に変更はありません。

「今日のウィッカー兄ちゃん、なんかちょっと乱暴だった」

食事中、トロワがずっと俺に文句を言っていた。


乱暴と言うとまるで暴力を振るったかのように聞こえるが、俺は暴力は振るっていない。

ただ、つい毛布をはぎ取ってしまったのだ。


「うん、私も見ててちょっといつもと違うなって思った。いつもなら、ウィッカー兄さんは揺すって起こすよね?なんか今日は揺すり方も雑だったし、トロワの毛布はぎ取るし・・・兄さん機嫌悪いの?」


テーブルの斜め前に座るキャロルが、首を傾げながら、おかしいなという風に声をかけてくる。


「いや、そんな事ないって、ごめんトロワ、俺が悪かったよ。なんでもないんだ。ただ、ちょっと雑になっただけなんだ。次からは気を付けるから許してくれよ」


言い訳せずに謝ると、トロワもそれ以上は文句を言わず、しかたねぇな、と言ってパンにかじりついた。

俺が悪いのだが、相変わらずトロワは態度が大きい。


キャロルも俺とトロワを交互に見て、問題解決としたのか、だまってミルクを飲み、食事の続きを始めた。



「ウィッカー様、お食事足りてますか?パンもベーコンも卵もありますから、足りない時はおっしゃってくださいね」


隣に座るメアリーが、空になった俺の皿を見て声をかけてきた。


「お、おぉ・・・大丈夫。お腹いっぱいだよ」


「そうですか。では、紅茶をお入れしますね」


そう言って空いた俺の皿を持つと、師匠にも声をかけてキッチンへ入って行った。



「・・・ねぇ、ウィッカー、あんたメアリーの事、意識してない?」

「え、な、ジャニス、何言ってんだよ?」


正面に座るジャニスの突然の言葉に、俺は動揺を隠せずつっかえながら言葉を返してしまった。


「え?ウィッカー兄さん、ついに?」


「あら、ウィッカーさん、そのうちとは思ってたけど・・・とうとうおちたのかしら?」


キャロルとヤヨイさんも、ジャニスの言葉に反応し、身を乗り出してきた。

ここの女性陣は、みんなこの手の話しが好き過ぎるんじゃないか?


そして、師匠は興味を無さそうに窓の外に目を向けているけど、ジャニス達の言葉に、聞き耳を立てているのもなんとなく分かる。



しどろもどろに言葉を濁していると、メアリーが俺と師匠の分の紅茶をトレーに乗せて来た。


「ブレンダン様、どうぞ」


先に師匠の前に紅茶のカップを置くと、師匠は微笑ましいものを見る顔で、メアリーに何か言葉をかけている。

すると、メアリーが輝かしい表情で足早に俺に近づいてきた。



「ウィッカー様!私になにか大事なお話しがあると聞きましたが!?」

「え!?」


焦りながら、テーブル端に座る師匠に顔を向けると、美味しそうに紅茶を口に含み、あえて俺を見ないように外の景色を眺めている。



「ウィッカー様・・・私に大事なお話しと言うと、一つしかないと思うんです。私は心の準備はできておりますので、ご遠慮なくおっしゃってください」



紅茶を乗せたトレーを置いて、メアリーは少し頬を赤く染めながら、両手を握り合わせて俺を真っ直ぐに見ている。


「ウィッカー、あんた女の子がここまで気持ち固めて待ってんのよ?喜ばせてあげなさいよ」


ジャニスが早く言え!と言わんばかりに俺を見て手を振ってくる。


「ウィッカー兄さん、私も姉さんと同じ気持ち。むしろメアリーちゃんは兄さんにもったいないくらいなんだから、待たせるなんて失礼!」


キャロルは俺を指してなぜか厳しめに言葉を投げかける。


「ウィッカーさん、私はお似合いだと思います。メアリーちゃんより良い子なんていませんよ」


ヤヨイさんはものすごい優しい笑顔で俺とメアリーを見ている。

絶対に間違いなく俺がメアリーを好きで、告白しないなんてありえないと確信している笑顔だ。



トロワと他の子供達は食事の手を止め、ドキドキした顔でじっと俺とメアリーを、本当に目を逸らさず凝視している。恋愛がまだ分からない小さい子達も、この場の特別な空気を感じ取ったのだろう。




「ウィッカー様・・・・・」


俺が黙っている事に、不安を感じてきたのだろうか。メアリーが少し沈んだ声で俺の名前を口にした。


「えっと・・・その、メアリー・・・・・」


あまりに予想外で突然の事に、俺もうまく言葉がまとまらない。

まさか朝食の席で、こんな事になるなんて予想できるはずがない。


けしかけてきた師匠に、少しばかり恨み言を言ってやりたくなった。




「ウィッカー様・・・・・私、毎日ウィッカー様の事をお呼びする時、幸せを感じるんです。

だって、ウィッカー様をお呼びできる距離に、私がいるという事ですから・・・・・」


メアリーは俯きがちに話し始めた。



「私は、ウィッカー様のお名前が大好きです。だって、口にすれば、それだけで私を幸せにしてくださるんですから。これからも毎日、ウィッカー様のお名前をお呼びしたいです。

でも、私はわがままなので、それだけでは我慢できなくなっている自分がいるんです・・・ウィッカー様、私ではだめでしょうか? 私は・・・・・」




自分でも驚いている。

無意識と言うか、気が付いたら席を立って、メアリーの両肩を掴んでいた。



「・・・メアリー」


「ウィ、ウィッカー・・・様?」



メアリーと目が合う。突然肩を掴まれ、驚いているようだ。



なんで俺は席を立ったんだろう?

なんで今、メアリーの言葉を遮って、メアリーの肩を掴んでいるんだ?




・・・・・・あぁ、そうか・・・・・俺は少しかっこつけたかったのか





「メアリー、俺・・・メアリーの事が好きだよ」






ここまで女の子に言わせて、自分の気持ちに気付かないふりをしている事はできなかった。

やっぱり俺は、メアリーに惹かれていたんだ。



そして、あの夜・・・・・俺はメアリーを好きになったんだ。




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