16 米とパン
基本的に誤字脱字以外は修正しません。
修正した場合は、何のために修正したか、前書きに記載いたします。
読み返したら見づらいと思いましたので、改行だけやり直しました。
内容に変更はありません。
「んでよぉ?、兄ちゃんよぉ、ニホンってとこにいたんだろ?どんなとこなんだよ?」
テーブル席に腰を下ろすと、両手を頭の後ろに組んで、椅子を前後にギコギコ揺らしながら、リカルドが話しかけて来た。
「ん~、どんなって言われてもなぁ・・・まぁ、こことは全く違うぞ。日本には車や飛行機ってのがあって、あ、車ってのは地面を高速で走る大きな鉄の塊で、飛行機ってのは空を高速で飛ぶ巨大な鉄の塊なんだけど」
「はぁ!?なんだよそれ!?鉄の塊が地面走って、空を飛ぶのか!?兄ちゃんよぉ、酔っぱらってんじゃねぇだろうな?俺が純粋だからってからかってんなら許さねぇぞ?」
「いやいや・・・お前ってなんかすごいな?車も飛行機も本当だって。俺も詳しくは分からないけど、いろんなエネルギーを使って、鉄の塊を走らせたり飛ばすんだよ。日本はこっちの世界とは全然違うんだよ。あとは電話ってのがあって、遠くに離れた人と自由に会話ができるんだ。声だけ飛ばす感じかな」
「あ、それなら写しの鏡と似てるかも」
疑いの眼差しを向けるリカルドに、一生懸命説明をしていると、カチュアがトレーにオムライスを乗せて持って来た。
はいどうぞ、と目の前に置かれたオムライスは、2人前くらいはありそうな量だった。けっこうあるなと思っていると、リカルドの皿には俺のよりも倍以上はありそうな、とても大きなオムライスが乗せられていた。
「冷凍のブロッコリーもあったから、玉ねぎとハムで炒めてみたよ」
小皿に乗せて配ると、カチュアは俺の隣のイスに腰を下ろした。
「お!こりゃまたうまそうだな!いっただっきまーす!」
そう言うなり、リカルドがガツガツとオムライスを食べ始めた。
ちゃんと噛んでいるのか?いや飲んでるのか?とにかく早い。
「・・・すげぇな・・・あの量食えるのか?」
テレビで見た大食い選手のようなスピードでかきこむ姿に、呆気にとられてしまう。
「リカルド君って、このくらいはいつも食べてるよ。アラタ君は普通の大盛りにしたけど、大丈夫かな?」
「あ、うん。そうだね、これくらいなら食べれるかな、美味そうだし。じゃあ、いただきます」
見るからにふわふわのオムライスはとても美味しそうだ。
ソースとバターの香りにも食欲を刺激される。
早速スプーンを入れ、とろりとした半熟の卵を乗せて口に運ぶ。
「・・・」
「・・・ア、アラタ君、口に合わなかった?」
黙って口を動かしている俺を、カチュアが心配そうに俺の顔を覗き見る。
「めっちゃ美味い・・・日本で食べたオムライスより、ずっと美味い!カチュアすごいな!」
「もー!びっくりさせないでよ!いきなり黙るんだもん!美味しくないのかなって思った!」
「んだよ兄ちゃん、知らねぇのか?カチュアとレイチェルのメシは美味いんだぜ、なめんなよ?」
すでに半分以上食べていたリカルドが、水を飲みながら口を挟んできた。
確かに昨晩の焼き魚、朝の目玉焼きとトーストも、焼き加減など丁度良く家庭的な落ち着いた味だった。
一見簡単そうに見えるものほど腕前が分かるというし、レイチェルも料理が得意なのだろう。
「ふふふ、ありがとう。でも私よりシルヴィアさんの方が料理上手だよ?」
「いや、アレはメシじゃねぇ。おやつだ」
リカルドが手を振って即否定すると、カチュアが不思議そうに首をかしげる。
「おやつって、お菓子作りが得意って事か?」
確かに言ってる意味がいまいち分からない。つい俺も口を挟むと、リカルドは眉間にシワを寄せ、首を横に振って話し出した。
「いやいや、そうじゃねぇ、そういう意味じゃねぇんだ兄ちゃん。まぁよ・・・そりゃあ、シルヴィアはお菓子も作れるよ。こないだなんかドーナツ作って持ってきたんだ。みんな喜んだよ。俺も美味しくいただきました。でもよぉ、昼にクロワッサンで午後働けるか? 夜にフルーツサンドで今日も1日頑張ったって満足できるか?シルヴィアはパンしか食わねぇんだよ。ドーナツとかプリンとか。そりゃ美味いよ?俺も甘いの好きだし食べるよ。でもよ、主食がパンなんだよ?んで、俺にもパン食わせるんだ。いっつもパン!毎日パン!絶対パン!パンばっか!米出せよ米!」
両手をテーブルに付いて身を乗り出し力説するリカルドに、俺もカチュアもたじろいでしまう。
リカルドはご飯に並々ならぬこだわりがあるのか、いや、俺も朝はパンでもいいが、昼や夜はラーメンやご飯が食べたい。なにかにつけてパンだと、確かにうんざりしてしまうかもしれない。
そう考えると、リカルドの気持ちが分からないでもない。
「だから俺は昼休憩は外に食いに行ってんだよ。自分で弁当なんか作れねぇし、店にいるとシルヴィアがパン持ってくるからな。あいつ俺をなんだと思ってんだ!?パンの精霊じゃねぇんだぞ!本当にいい加減にしろよ!」
ひとしきり言いたい事をぶちまけてスッキリしたのか、リカルドはフンと鼻を鳴らすと、残りのオムライスをかきこみ始めた。
こいつも大変なんだな。俺はリカルドの気持ちが理解できないわけではないから、少なからず共感してそう思ったんだけど、カチュアはシルヴィアさんに寄った考えだったらしく、少し不満そうに口を開いた。
「えー、シルヴィアさんのパン美味しいのに。リカルド君が一人暮らしだから、心配していつも作ってくれるんだよ?シルヴィアさん、食費だってとってないんでしょ?お姉ちゃんみたいでいいじゃない?」
そう言われると、リカルドはガバッと顔を上げて、目を吊り上げてカチュアを睨みつけた。
「あのなぁッ!俺はご飯にしてくれってハッキリ言ってんだぞ!何回もシルヴィアに言ってんだよ!それなのになんでパン作ってくんだよ!?白米が食べたいって言ったらパン出されんだぞ!嫌がらせだろ!」
「あ、ちょっと!ご飯飛ばさないでよ!・・・もー、そこはシルヴィアさんの譲れないところなんだよ。美味しいパンをリカルド君に食べてほしいんだよ。それなのにリカルド君がご飯食べたいって言うから、シルヴィアさんも悲しくなってパンを出しちゃったんじゃないかな?リカルド君がパンを食べればいいだけなのに」
「はぁぁぁぁ~~~~!?おまっ、お前!カチュア、お前シルヴィアの手先かよ!?だからな、俺だってパンは嫌いじゃねぇし食うよ!食いますよ!でもな、朝も昼も夜もパン持って来んだぞ!?おかしいだろ!?なんで三食パンなんだよ!?俺は麦畑から産まれたんじゃねぇんだよ!譲れよ!一食くらい譲れよ!」
リカルドはかなり感情的になっているが、それほどパンが続いたという事だろう。
食事の好みや食べる量というのもあるし、これはしかたない事だろう。
「あ~、もう!カチュアがこんな話し通じねぇなんて思わなかった!お前シルヴィア好きすぎなんだよ!なぁ、兄ちゃんはどっちの味方だ?常識的に考えてよ、三食パンはありえねぇだろ?人間の発想じゃねぇよな?」
「え!?いや、人間の発想じゃないって、流石にそこまでは言えないけど、俺は米もパンも好きだし、どっちかの味方ってのはないかなぁ・・・」
突然リカルドに話を振られ、一瞬戸惑ってしまう。
正直どちらかと言えば俺は米の方が好きだが、シルヴィアさんを否定する物言いはしたくない。
「はぁ~?んだよ兄ちゃん、ガッカリさせんなよ。あれか?あっちこっちに良い顔するタイプかよ?米かパンの二択くらい、バシっと決めろよな?白けたぜ」
俺のどっちつかずの返事にリカルドは不満をそのまま口に出す。
それでやっと気が済んだのか、ようやくこの話しを終わらせて、オムライスの残りを食べ始めた。
それにしても、リカルドは思った事をなんでも口に出すタイプのようだ。
俺も流石に疲れてしまい、言い返すのも面倒になったから、黙って食事を再開した。
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