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【142 試し撃ち】

「・・・こりゃあ~、ヤヨイさんの事情も説明した方がええのう。ヤヨイさん、構わんかな?」


「はい。ご説明していただいて大丈夫です。その方が・・・よろしいみたいですし」


師匠は呆れた目をロビンさんに向けるが、ヤヨイさんはいつまでも頭を下げ続けるロビンさんに、大丈夫ですよ、と声をかけながら、頭を上げるよう促し続けている。



「あ、ウィッカー様!皆様おかえりなさい!」


なかなか、頭を上げないロビンさんに、どうしようか?と悩んでいると、

子供達用の大部屋から、メアリーとキャロルが、スージーとチコリを抱きながら出て来た。


「あら?ロビン様?」


ヤヨイさんの前で頭を下げ続けるロビンさんは、メアリーの声に反応して顔を上げると、驚いたように目を丸くした。


「メアリーじゃないか!休職していたのは知っているが、どうしてここに?」


ロビンさんは状況がつかめず、メアリーと、メアリーが抱っこしているチコリを交互に見て、なぜ?と一人言ちている。



「ロビン様、私情で長期のお休みをいただいてしまい、申し訳ありません。ご縁があって、今はこちらでお世話になっております。王宮でのお仕事ですが・・・ずっと悩んでおりましたが、辞めさせていただこうかと思っております」


メアリーはロビンさんに頭を下げ、これまでの経緯を説明しだした。

ロビンさんも、真剣な面持ちで黙って話しを最後まで聞き、聞き終えると、メアリーの肩に手を置き、優しく言葉をかけた。


「・・・うむ、よく分かった。王宮の仕事が全てではないぞ。それにブレンダン様の元でなら、私も安心だし、ご両親も心配されないだろう。離職の手続きは、団長権限で私が全て済ませておこう」


ロビンさんの優しく口調と、思いやりのある言葉に、メアリーは何度もお礼を口にし、頭を下げた。


「ハッハッハ、気にするな。それとな、私もこの孤児院にはたまに来ているんだ。私で力になれる事があれば、いつでも相談してくれ、メアリーは本当によく働いてくれたからな。あれだけ資料を分かりやすくまとめられるのは、メアリーくらいだ。惜しい気持ちはあるが、メアリーの今後を応援するよ」



「・・・はい!ロビン様、これからも孤児院に遊びに来てくださいね!あ、今日はまだ、ゆっくりされますよね?私、紅茶入れてきます!」


メアリーは少し目を赤くして返事をすると、チコリをジャニスに預け、小走りにキッチンにかけて行った。

ロビンさんのこういうところを、俺は尊敬している。

魔法兵団の団長としてだけでなく、人として本当に大きな器を持っている。


「ふぅむ、ロビンや、お主は息子の事から離れると、本当に良い男じゃな。どれ、立ち話しもなんだしな、そこで座って話そうではないか。メアリーの茶はうまいぞ」


「はは・・・返す言葉もありません。ヤヨイさん、すみませんでした。どうも息子の事になると、熱くなってしまって・・・お邪魔してよろしいですか?」


ロビンさんが、頭を掻きながらまたヤヨイさんに頭を下げると、ヤヨイさんはおかしそうに笑いをもらした。


「フフ・・・あ、ごめんなさい。私、失礼ながらロビン様の事、もう少し怖くてお堅い方なのかと、勝手に思ってました。でも、とてもお優しい方だと分かったら、なんだか緊張が解けて・・・つい、笑ってしまいました。失礼いたしました」


ヤヨイさんが、とても柔らかい表情で笑みを見せると、また綺麗な姿勢で頭を下げた。


あまり気にならなかったが、確かに最初に玄関口で会った時より、硬さが無いように見える。


185cmの長身で、髭を生やした体格の良い男を見れば、初対面では怖い人と思われてもしかたないかもしれない。

でも、短いながらも、ここまでのやりとりでロビンさんの人となりが、多少分かったようで、ヤヨイさんも安心できたようだ。


ロビンさんは、またも見惚れてしまったようで熱の入った視線をヤヨイさんに向けていたが、師匠に頭を叩かれ、我に返ると、照れ隠しのように咳払いをし、広間の長テーブルのイスに腰をかけた。


もし、ロビンさんが独身で20、いや10歳若ければ、きっと自分の妻にと口説いていたと思う。




メアリーは紅茶を持ってくると、ジャニスからチコリを受け取り、ごゆっくりどうぞ、と言って子供達のいる大部屋に歩いて行った。

本当に気が利くのでメアリーがいると大助かりだ。


それから俺達は、まずヤヨイさんの事情をロビンさんに説明した。

名前以外の記憶を失っているという事には、ロビンさんも驚いていたが、すぐに、でも今日初めてお会いしたヤヨイさんが全てですから、と笑顔で言葉をかけていた。



「皆さんのお顔を見れば、ヤヨイさんがまだ日が短い間ながらも、ここで慕われている事が分かります。ですから、以前の記憶が無かったとしても、あなたが信用できるお人だというのは分かるつもりですよ」


ロビンさんの嘘の無い言葉が伝わったのだろう、ヤヨイさんは嬉しそうに笑えむと、ロビンさんへのお礼の言葉を口にした。




「では、そろそろ、大臣との試合の話しをしようかの」

話しの区切りがついたタイミングで、師匠が本題に話しを移した。


その言葉に、これまでの和やかな雰囲気も一変し、微かな緊張感が漂い出した。


「ヤヨイさん、すまんがメアリーを呼んで来てくれんかの?大人は全員、話しに参加してもらおう」


分かりました。と返事をし、ヤヨイさんが席を立った。

しばらくすると、大部屋からヤヨイさんとメアリーが連れ立って歩いてくる。


スージーとチコリは、キャロルとトロワに任せたようだ。

トロワだと泣かれそうで少し心配だが、どうしようもない時は、柵の付いたベッドに寝かせて、人形を渡しておけば、そのうち勝手に遊びだすので、なんとかなるだろう。



俺、ジャニス、ヤヨイさん、メアリー、師匠、ロビンさん、全員が揃うと、師匠の後を付いて外に出た。



外に出ると、師匠はあらためて、今回なぜベン・フィングと試合をする事になったのかを、話し出した。城に行っていないヤヨイさんとメアリーに説明するためだろう。

二人とも、ものすごく驚いていた。


ヤヨイさんには昨夜、ベン・フィングに付いて話して聞かせたが、まさか試合をする事になろうとは、全く頭の片隅にも無かったようで、本当ですか!?と驚きの声を上げ、口に手を当てていた。

まぁ、確かに、まさか大臣と試合になるなんて、俺も本当に驚いたし、普通に予想できる事ではない。


「ブレンダン様、それで、一体どうやって戦うのですか?魔道具も使わず、結界のみでなんて無茶です」


メアリーが心配そうに、師匠に言葉をかけると、師匠は左手で右手首を押さえながら、感覚を確かめるように右手首を回し始めた。


「ほっほっほ、案ずるなメアリー、それをこれから見せてやろう。ウィッカー、では付き合ってもらうぞ。そこに立って、合図をしたらワシに爆裂弾でも火球でも好きに撃ってこい」


師匠は右手を回し終えると、今度は左手首を右手で押さえ、ぐるぐると回しだした。


「えっと、この辺でいいですか?」


孤児院の庭はそこそこ広い。俺とジャニス、ヤヨイさん、メアリー、師匠、ロビンさんの6人が集まっても十分スペースが空いている。


師匠は玄関から少し離れた、俺がいつも休んでいる大木の前に立って、数メートル離れた辺りを指した。


「そうじゃな、そこで5~6メートルくらいかの?まぁ試合は闘技場だし、ここより十分広さもある。本番ではベンも距離をとって撃ってくるじゃろうから、むしろ本番の方が楽かもしれんな」


「えっと・・・どういう意味ですか?」


「あぁ、いいんじゃ、いいんじゃ、すぐに分かるからな。よし、ではヤヨイさんとメアリーは、ロビンの後ろにおれ。心配いらんと思うが、万一のためにな。ジャニスも少し離れてな」


これから何をするのか、要領を得ないまま進められているので、みんな行動が少し遅くなっているが、それでも支持された通りの場所に付くと、師匠は少しだけ腰を落とし、やや両足を広げながら左足を少し後ろに引くと、右手のを胸の前、左手を腰の位置で構えた。両手とも、手の平を俺に向けている。



「ウィッカー、撃っていいぞー、何発でも遠慮なくこい」



師匠のやや間延びした言葉を合図に、俺は爆裂弾を一発撃ってみた。


師匠の実力を疑ってはいない。結界で防ぐ事も分かっているが、今回は俺達も知らない特別な方法で防ぐという事なので、とりあえず最初の一発は、様子見で軽く一発だけ撃つことにした。



そして俺は、いや俺達は青魔法を極めた者の戦い方というものを、見せつけられた。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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