1348 心の内
みんなはまだ生きている。
確かめたわけじゃないけど、直感って言うのかな?アラタ君もジャレットさんも、みんな砂の上に倒れているし、指先も動いてないけど、私にはなぜかみんながまだ生きている事だけは分かった。
何の根拠もないけれど、私は自分の直感を疑わなかったし、間違っていないと信じられた。
だから私は絶望せずに、この真紅のローブを纏った金色の髪の女性の前に立つ事ができた。
「みんなに何をしたんですか?」
不思議と怖いとは思わなかった。
だから私はこの女性の目を真っすぐに見て、話しかける事ができた。
「・・・あなたは、この人達がまだ生きていると信じているのですね?」
「はい、みんなまだ生きてますよね?どうしてなのか分かりませんが、私にはみんなが生きている事だけは分かります」
「・・・そうなのですね」
私の答えをどう受け取ったのだろう?金色の髪の女性は、なぜか少しだけ優しい表情になった。
そして両手を私の前に向けると、その手のひらに四つの青い炎が浮かび出した。
「もしかしたら、あなたには生命の波動を感じ取る素質があるのかもしれませんね。おっしゃる通り、この四人はまだ生きています。そしてこの炎が魂です。この炎を戻せば、彼らの肉体もまた活動を始めます」
「生命の波動?・・・なんですか、それ?」
返事を聞いて、私は自分の考えが間違っていなかった事、みんながまだ生きている事に安堵した。
けれどなぜ教えてくれるのだろう?私達は敵同士だ。アラタ君達がまだ生きていて、その命を戻す事もできるなんて教える必要はないはずなのに。
そして生命の波動・・・初めて聞く言葉に、なぜか強く興味を惹かれて、私はその言葉の意味をたずねた。けれど・・・
「動かなくなった肉体を見ても、まだ死んでいないと確信を持てる・・・・・あなたは私と似ているのかもしれませんね」
私の質問に答えているようで、まるで自分自身に言い聞かせているような、この人はどこを見ているのだろう?私を見ているようで、もっと遠くを見ているような・・・
「いったい、どういう事ですか?あなたが何を言っているのか、私には分かりません。それに、どうしてみんなの命を戻す方法を教えてくれたんですか?」
金髪の女性は悲し気に微笑みながら小さく首を振ると、私の質問には答えず話しだした。
「・・・・・名乗るのが遅れました、私はシャンテル・ガードナー、帝国軍第六師団の団長です。あなたのお仲間の命は私が奪いました、あなたは私を憎くないのですか?」
多分そうだと思っていた。深紅のローブを纏っているし、第六師団の団長は女性と聞いていたから、この人が師団長なのだろうと。
「・・・私はカチュア・サカキと言います。あなたの足元で倒れている黒髪の男性、アラタ君は私の夫です。憎む、ですか?・・・大事な人を傷つけられて怒らない人はいないと思います」
この時の私は、不思議とこの人ともう少し話してみようと思っていた。
なぜだろう?うまく言えないけれど、アラタ君を傷つけたこの人を、私はなぜか憎み切れないでいた。
「怒っているのに、あなたは私が憎くないのですか?なぜ私に敵意を向けないのですか?」
何を聞かれているのだろう?憎む?敵意?・・・・・確かに憤りはある。
けれどそれは目の前のこの人をどうこうしたいとか、そういう怒りをぶつけたいわけではない。
「・・・私は、あなたに怒ってます。でも、あなたも何かに苦しんでいるんじゃないですか?ずっと悲しい目をしてますよ?」
私の言葉を聞いて、シャンテル・ガードナーは驚いたように目を開きました。
「私が苦しんでいると?そう・・・思ったんですか?」
「・・・そんなに悲しい目をして戦う人はいないと思います。それに、あなたは本当はとても優しい人なんだと思います。だって、みんなの魂を残してくれているんですよね?その気になれば、どうにでもできるはずなのに・・・・・シャンテルさん、あなたは何を抱えているんですか?」
この人は本当に敵なの?
ここまで話して、私はこのシャンテル・ガードナーが、自分達の戦うべき相手ではないのではないと、そう思うようになってきた。
「・・・本当に、クインズベリーには優しい人がいっぱいいるんですね」
そう言って私に笑いかけるシャンテル・ガードナーの瞳には、涙が溢れていた。




