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13 秘密

誤字を見つけたので修正しました。物語の内容に変更はありません。


読み返したら見づらいと思いましたので、改行だけやり直しました。

内容に変更はありません。

「お前ら、マルゴンに目を付けられたな」


眉間にシワを寄せたミゼルさんが、俺とカチュアに目を向ける。


「え、マルゴン?」


「あぁ、マルコス・ゴンサレスだから、マルゴンな。話しを聞いた限りだと、今回の件でマルゴンはお前ら、特に新人に何かあると思ってる。アイツは面倒だぞ?正義感の固まりみたいなヤツで、国民に害があると判断したら容赦ないからな」


俺が聞き返すと、ミゼルさんは深刻な口調で話しを続けた。

面倒くさいというのは分かる気がする。確かにものすごくしつこい取り調べを受けて、俺も面倒だとは思っていた。


「ミゼル、あんまり脅かしちゃダメよ。カチュアが怖がってるわ」


シルヴィアさんがミゼルを諫めると、不安気にうつむいているカチュアに向けて優しく微笑んだ。


「大丈夫よ。マルコスさんはこの国を守る協会の、治安部隊の隊長さんだから、少し怖いところもあるけど、カチュアは何も悪い事をしていないんだから、怖がる事はないわ」


「シルヴィアさん・・・」


カチュアは安心したように表情を緩めた。


その様子を見ていたレイチェルも、どこか表情がやわらいでいる。

やはりシルヴィアさんは、女性陣から信頼されているようだ。



「なぁレイチェル、結局どうすんの?兄ちゃんが異世界パワーでぶん殴ったのと、マルゴンに目付けられたのは分かったけどさ、店はいつも通りでいいんだろ?」


長い話しに飽きてきたのか、リカルドは両手を上に上げて、ぐ~んと伸びをしている。

16歳という年齢を考えれば、こういった話し合いは確かに退屈だろう。



「ああ、もちろん。店はいつも通り営業を続けるよ。シルヴィアの言う通り、アラタもカチュアも何も悪い事はしていない。ただ、マルコスさんに目を付けられたっていうのは、やっぱり少し面倒だと思う。それで、アラタが異世界から来た事は秘密にしておいた方がいいと思うんだ。協会の体質を考えると、異世界から来たなんて国にとって不穏分子でしかないと思う。マルコスさんはあの性格だから、少しでも害があると判断したらすぐに捕まえて幽閉するだろうしね。だからアラタの異世界の事は秘密にしておいてほしい」


「わ、私はもちろん秘密にするよ!アラタ君には助けてもらったし、せっかく友達になれたんだし」


レイチェルの言葉に、カチュアがすぐに反応した。


「そうだなー、兄ちゃんとは今日初めて会ったばっかだけど、昼飯の後に人をぶん殴ってくるなんて、面白すぎるしな。俺も黙っててやんよ」


リカルドがニヤニヤしながら俺に目を向けてくる。完全に面白がっている。


「僕もそれでいいと思う。アラタ、突然の事ばかりで大変だと思うけど、微力ながら力になるよ。なんでも話してくれ」


ジーンはやはり同い年とは思えない落ち着きがあるし、言葉の一つ一つに思いやりがある。


「みんながそうするならアタシも合わせる」


「ユーリ、その言い方はちょっと冷たいわよ?アラタ君ごめんなさいね。この子悪気はないけど、いつもこうなの。安心して、私も秘密にしておくわね」


シルヴィアさんの、まるで小さな子供を注意するような言葉に、ユーリが顔を背けてしまう。


こういう女の子は何を話していいか分からないから、正直少し苦手だ。でもこの世界では、自分が変わらなければと決めたんだ。なるべく仲良くできるようにしなければと思う。



「そうそう、そうだぜユーリン!そんな可愛い顔してんだから、もちっとニコっとしてごらッグファッ!」


ニヤニヤしながらユーリの肩に手をかけたジャレットさんの鳩尾に、ユーリの肘が深々と突き刺さった。


ユーリはジャレットさんには目を向けず、ユーリンて呼ぶな、とだけ呟いた。

ジャレットさんは腹を押さえ、苦しそうに身をかがめている。その様子を椅子に座ったまま冷たい目で見下ろすユーリには、軽く恐怖さえ感じる。



「ジャレット、お前ユーリにちょっかい出しちゃダメだってまだ分かんねぇのか?・・・お前はそういう茶化した事さえしなければいいんだけどな。あ、新人、俺も秘密にする事に異論はないよ」


「ミゼル、あんた人の事とやかく言えるの?お酒とタバコ、あと宿屋の・・・」


「レ、レイチェルさん!その件に関しては熟慮してまいりますので、何卒穏便に!」


レイチェルに痛いところを突かれたミゼルさんは、食い気味にテーブルに両手を付いて頭を下げた。


「はぁ・・・全くアンタは、まぁこの話は置いといて、方針は決まったわね。マルコスさんや教会の人、念のためお客さんでも、誰かがアラタの事をなにか聞いてきたら、ただの新人という事で。あとは、そうだな・・・もし出身とか微妙な事を聞かれたら記憶が無いって事で押し切ろっか?」


軽いノリのようにまとめたが、それで大丈夫か?という不安はある。

しかしこの世界の知識が全く無い状態では、記憶喪失が一番やりやすいのかもしれない。


日本と正直に答えても、この世界に日本は無い。調べられるとも思えないが、そんな国はないぞと突き詰められたら面倒だ。


この世界の適当な町の名前を上げても、同郷の人間が出てきて、お前なんかいなかったと言われたらやはり面倒だ。


「あ、レイチェル、そう言えば今更だけど・・・あの、私キッチンモロニーで、アラタ君が異世界から来たって話しちゃった・・・」


思い出したようにカチュアが口に手を当て、バツの悪そうな顔をする。


「え?そうなの?あー、モロニーさんか・・・今日行った時にだよね?まぁ、大丈夫じゃないかな?ディックさんもわざわざ誰かに話して回ったりしないでしょ?一応明日私が話しに行ってくるよ」


「うん、ごめんねレイチェル」


カチュアが両手を合わせて謝ると、レイチェルは、大丈夫大丈夫、と言葉を返し、それから俺の方に向き直ってニコリと笑った。


「アラタ、難しい顔してるけどあまり気にしないようようにね。大丈夫、なんとかなるよ」


つい考えこんでしまったようだ。不安が顔に出ていたようだが、レイチェルの言葉に俺は分かった、と頷いた。


そうだな、方針は決まったし、これ以上考えてもしかたない。

店のみんなは入ったばかりの俺の事を考えてくれているし、レイチェルを信じていこう。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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