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1150 宣言

「くそっ!こう密集してちゃ、攻撃魔法は使えねぇぞ!」


ナイフを振り回す淑女の人形に、クインズベリー軍は完全にかき回されてしまい、統率がとれずに後手後手の対応を余儀なくされていた。


ミゼルは火球や刺氷弾で応戦しようとするが、やみくもに剣を振るう兵や、人形から逃れようとする兵隊が魔法の軌道上に入り、とても応戦できる状態ではなかった。


「ミッチー、こいつは俺に任せろ!お前は兵達のフォローを頼む!これ以上犠牲者を出さないように守ってやってくれ!」


魔法を撃とうにも撃てない、魔法使いとして非常に戦い難い場を作られたミゼルに、ジャレットは前に出て指示を飛ばした。


「くそ人形がっ!やっと分かったぜ。あれだけ小さけりゃ、ユーリンのローブの中にだってもぐりこめる。そうやって刺したってわけか・・・ふざけやがってぇぇぇぇーーーーッツ!」


右手に握るのは刃の無い剣の柄。だがジャレットの闘志が膨れ上がると、それに呼応するように柄から黄金に輝くエネルギーが放出され、それは刃を形作った。


体力を闘気の剣に変える魔道具、オーラブレード。今ジャレットが放出しているエネルギーは、かつて四勇士のレオ・アフマダリエフと戦った時よりも、はるかに強い力に満ち溢れていた。



素早い動きで兵士達をかく乱しつつ、ナイフを振り回して一人、また一人と殺傷していく淑女の人形に、ジャレットが飛びかかる!


「オラァァァァァーーーーーーッツ!」


それは背後からの攻撃であり、人形が一人の兵士に向かって、ナイフを振り上げた瞬間でもあった。

攻撃の動作に入っている以上、ジャレットの攻撃はそう簡単に躱せるはずはない。躱せるはずがないのだ。


だが・・・・・


「なにっ!?」


人形の頭に振り下ろしたオーラブレードは空を切った。人形はジャレットに背中を向けたまま、剣が触れないギリギリの間隔で体を横にずらし、完璧なタイミングと間合いでオーラブレードを躱してみせた。


まるで後ろが見えているかのような動きで躱した人形に、ジャレットは意表を突かれて次の動作に遅れが生じてしまった。


「しまっ・・・!?」


その結果、反撃に移った人形がジャレットの先を取り、一瞬にしてジャレットの顔前にまで距離を詰めた。そして右手に持つナイフを、ジャレットの右目に向けて真っすぐに突き出した!



「好き勝手やってんじゃないよ」


もうあと一センチで、ジャレットの右目に刃先が触れようとしたその時、人形の後ろから横一線に振られた長物の刃が、人形の横っ面にめり込みそして弾き飛ばした。



「ッ!?」


長物を振るったアゲハは、その手に伝わった予想外の衝撃に眉をひそめた。



・・・硬い!?



アゲハのイメージでは、薙刀の刃で人形の顔面を真っ二つにできるはずだった。

だが実際にアゲハの両手に伝わってきたものは、物体を斬り裂く事とは程遠い、まるで鉄の塊でも打ち付けたかのような硬く重い手応えだった。


「・・・チッ、これは予想外だ・・・ジャレット、あの人形めちゃくちゃ硬いよ」


得物を肩にかけながら、アゲハはかすかに震える両手に目を落として舌を打った。


「悪い、助かったぜアーちゃん・・・手、どうした?」


「ああ、まさかあんなに硬いなんて思わなかったから、握りが少しあまかったようだ。無理やりぶっ飛ばしたからちょっと痺れちまったよ。」


「・・・お互い、あの人形に対する認識を改める必要があるようだな。俺もあそこまで速いと思わなかった。それに後ろが見えてるような反応をしやがる。アーちゃん、あれも魔道具だろ?なにか知らねぇか?」


ミゼルが目を向けると、アゲハは思い当たる節があるらしく、ジャレットに視線を返して口を開いた。


「あれはおそらく、淑女の人形だ。私が帝国にいた頃、宝物庫で見た事がある。だがあれはただの高価な人形で、魔道具ではないと言われていたんだが・・・・・どうやら私が抜けた後で、使いこなせる者が現れたようだな」


忌々しそうに話すアゲハを横目に、ジャレットは前方に顎を向けた。


「なるほどねぇ・・・ところでアーちゃん、その人形さんだけどどうやらお怒りのようだぜ」


ジャレットの指し示す方に目を向けると、兵達が道を開けるように左右に分かれていた。

そしてその間をゆらゆらと宙に浮く血まみれの人形が、ゆっくりとこちらに向かって来ていた。



「・・・はぁ、マジかよ?硬いとは思ったけど、ほとんどダメージないんじゃない?」


「そのようだな。アーちゃん、こりゃ持久戦になりそうだ。気合入れてけよ」



宙に浮く血まみれの人形を目にし、兵達がざわめき出すが、ジャレットとアゲハは周囲の声など聞こえていないかのように、決して淑女の人形から目を離す事はしなかった。


そして淑女の人形は二人の決意を感じ取ったのか、正面まで来るとピタリと動きを止めた。


「ちっ、正体が分かるとすげぇ嫌な圧をかけてくるな?まぁ俺のオーラブレードでぶっ壊してやるよ」


「血まみれだけど、綺麗な顔してんじゃん?私の攻撃じゃ倒せないようだけど、風の精霊はどうかな?」



ジャレットはオーラブレードを、アゲハは薙刀を、二人はそれぞれの武器を持ち構え、その刃先を人形に向けて宣言した。



「お前なんかに負けはしない!さぁかかって来い!」


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