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1124 メンバー分け ②

西の山脈パウンド・フォー。

帝国とクインズベリーの国境にあたる山であり、帝国にとっては天然の要塞とも言えるこの山を攻略するメンバーには、実際に山に入り、闇の蛇を討伐した経験のある者達が中心に選ばれた。


「北のユナニマス大川を攻略するメンバーですが、まず治安部隊隊長ヴァン・エストラーダ。隊長補佐のモルグ・フェンテス。そして治安部隊隊員エルウィン・レブロン」


アンリエールは治安部隊の三人に顔を向けると、北のユナニマス大川の攻略を命じた。


「アンリエール様、発言よろしいでしょうか?」


名前を呼ばれた三人が胸に手を当て、アンリエールに頭を下げようとしたところで、レイチェルが手を挙げて一連の流れを止めた。



「・・・レイチェル、なんでしょうか?」


話しの途中で強引に割って入った形だったが、アンリエールはそれを咎める事はせず、レイチェルの話しを聞く姿勢を見せた。


「ありがとうございます。今日この場に集まったメンバーは、敵の幹部クラスと一対一で戦える者だと理解しております。ですがエルウィンは、まだそこまでの力量を持っているとは思えません。なぜエルウィンが任命されるのでしょうか?」


一隊員として戦場に赴くのならばともかく、幹部クラスと戦うなどレイチェルには到底看過できなかった。女王の決定に対し、まったく歯に衣着せずに率直な意見を述べたのも、エルウィン本人の前でその力を否定する言葉を口にしたのも、それだけこの任命をレイチェルが重く見ているという事だった。



「・・・レイチェル、あなたは今のエルウィンの実力を、見た事があるのでしょうか?」


抗議にも近いレイチェルの訴えに、アンリエールは落ち着いた口調で言葉を返した。


「・・・いえ、最近はあまり会う事もありませんでしたので・・・」


「では、過去のイメージで現在のエルウィンの力を測っている。そういう事ですね?」


「・・・確かに最近エルウィンの訓練は見ていませんから、私が知っている頃より成長しているとは思います。ですが、帝国の幹部クラスを相手には・・・」


アンリエールの指摘した通り、レイチェルはここ数か月、エルウィンとはあまり会う事が無く、訓練を見る機会も無かった。そのため自分が知っているイメージで意見をした事は否定できない。


だがそれは決してエルウィンを軽視しての発言ではなかった。

明らかに力不足と思われる者を前に出して、むざむざ殺されるような事があってはならない。

厳しい言葉の裏には、エルウィンの身の安全を思う心があるのだ。



「レイチェル、大丈夫だって・・・そう心配すんなよ」


口を挟んできたのは、治安部隊隊長のヴァンだった。


「ヴァン・・・」


「こいつ、帝国が襲撃をかけてきた日から今日まで、本当に頑張って鍛えたんだ。それこそ俺が心配するくらいにな。それをアンリエール様にも見ていただいて、今日この場に立つお許しをいただいたんだ。エルウィンはもう立派な戦力だぜ、信じてやれよ」



「・・・・・そうか」


ヴァンの説明を聞くうちに、少し感情的になっていたレイチェルの頭も冷えてきた。


確かにヴァンの言う通りだ。いくらヴァンが推薦しても、実力が伴っていなければ、アンリエールが許可するはずがない。今日この場に立っているという事は、アンリエールが戦える力を認めたという事なのだ。


そしてヴァンに促されて、エルウィンが一歩前に出た。

エルウィンはレイチェルの目を真っすぐに見つめて、自分の気持ちを言葉にして伝える。



「レイチェルさん・・・俺、レイチェルさんから見れば、まだまだ子供で頼りないと思います。でも、隊長やフェンテスさんに毎日鍛えてもらって、少しは強くなったつもりです。お願いします・・・俺の参加を認めてください!俺、頑張りますから!絶対に役に立って見せますから!」



レイチェル・エリオットはクインズベリー国において、最強に数えられる一人である。

同じ体力型であれば体付きを見ただけで、おおよその戦闘力を測る事もできる。


落ち着きを取り戻したレイチェルは、冷静な目でエルウィンを真っすぐに見つめた。



・・・なるほど、確かにそうとう鍛えてきたようだ。

あの襲撃があった日とは、比べ物にならないくらいだ。確かにこれなら・・・・・



「・・・エルウィン、分かったよ。どうやら私が思っていたより、キミは強く成長していたようだ。軽んじるような発言してすまなかった」


謝意を口にし、レイチェルはエルウィンの力を認めた。

並の帝国兵では今のエルウィンの相手にはならないだろう。そう感じられる程の力が見えたからだ。


「レ、レイチェルさん、それじゃあ・・・」


「ああ、共に戦おう」


「は、はい!よろしくお願いします!」


差し出された右手をギュッと握り締め、エルウィンは歓喜し声を弾ませた。






「・・・ふふ、まとまったようですね。では話しを戻しましょう。北のユナニマス大川へは治安部隊の三人と、騎士団からはゴールド騎士のフェリックス・ダラキアン。そして闇の巫女ルナに同行してもらいます」


レイチェルとエルウィンが笑顔で手を握手を交わした事を見て、アンリエールは本来の話しに軸を戻した。


名前を呼ばれたフェリックスが胸に手を当て、アンリエールに一礼をすると、それにならってルナも頭を下げた。



「フェリックス、騎士団の第三部隊はどうですか?」


「ん?そうですね・・・・・フフフ、確かにあいつらは真面目なアルベルトや、ちょっとゆるいレイマートより、僕の下につけて正解だったと思いますよ」


フェリックスは少し考えるように顎先に指を当てた。そして第三部隊の事を思い出しているのか、少しの間天井に視線を向けていたが、やがて楽しそうに笑いながら返事をした。


「・・・うまく、コントロールできているようですね・・・私も新設した第三部隊、あの者達の扱いは、あなたが適任だと思い配置換えを行いましたし、やり方もあなたに一任しましたが・・・ほどほどにしてくださいね?」


「クスクス・・・はい、大丈夫ですよ。今じゃすっかり従順になりましたから。僕が親切丁寧に教育してあげたので、帝国兵とも互角以上に戦えると思いますよ」



「・・・す、少し心配ですが・・・期待させていただきましょう」


クスクス笑いながら話すフェリックスからは、少なからず悪意のようなものさえ感じられる。

アンリエールはいったいどういう教育をしたのかと、若干顔を引きつらせた。



「あの、フェリックス様・・・騎士団第三部隊の方々は、何か問題を起こした方が集まっているのですか?」


フェリックスの隣に立つルナが、少し首を傾げながら問いかけた。

いまいち話しを掴めていない様子だ。


「ああ・・・そうだね、第三部隊は今回の戦いのために、団員を増量して新しく作った隊なんだ。でね、元々騎士団って貴族ばっかりなんだよ。だいたいが次男や三男、家督を継げない連中が王宮仕えの騎士って称号目当てで入団してくるのさ。まぁ、レミューがシルバー騎士筆頭になって、規律が厳しくなってからはずいぶん減ったけどね」


饒舌に話すフェリックスは、実に機嫌が良さそうだった。

ルナも、うんうん、と相槌を打ちながら、フェリックスの話しに聞き入っている。


「それでさ、帝国との決戦を控えてるのに、今年は新規入団の数が少なかったんだよね。レミューが厳しくて、今の騎士団はさぼれないって噂が広まってるみたいなんだよ。厳しく躾けるのは良い事なんだけど、反動で新規団員が入ってこない。これは困ったってなってさ、それでしかたないから制限を緩和したんだよ」


「制限を、緩和・・・ですか?」


ルナが目をパチパチさせると、フェリックスは一際嬉しそうに声のトーンを上げて話した。


「そう、そうなんだよ!騎士団ってさ、王宮の治安維持、そして王宮周辺の警備が主な仕事だから、いくら貴族専門みたいな感じでも、入団には一応条件があるんだよね。特に素行調査は厳しいんだ。だから問題行動の多いヤツなんかは、いくら上級貴族でも入団はできないんだよ。伯爵や侯爵の次男を落とした時なんか、親が文句を言いに乗り込んできた事もあったね。でもさ、そんなヤツ入団させても絶対問題起こすと思わない?ひっかき回されてから追い出すくらいなら、最初から入団させない方がいいよね?」


「・・・う~ん、私には難しい問題ですが、フェリックス様のご判断を信じております」


答え方によっては上級貴族を否定してしまう質問だったが、ルナはニコニコと笑顔を絶やさず、言葉を選んで答えた。


「うんうん、長くなっちゃったけど、それで結局何をしたかと言うと、人数が足りないから素行不良の連中も入団させる事にしたんだよ。そしてそれが第三騎士団ってわけ。もっと言うと、連中本当に悪かったからさ、僕が実力社会ってのを丁寧に教えてあげたんだよ。そしたら今じゃみんな、素直な良い子になったって話しなんだ」


胸を張って説明を終えたフェリックス。

隣で聞いていたアルベルトもレイマートも、第三騎士団がどんな教えを受けたのか知っているのか、眉間にシワを寄せて硬く目を瞑っている。


レイチェル達も第三騎士団が新しくできたという話しは聞いていたが、内部がどんな組織かまでは聞かされていなかった。単純に人数が増えたから、親切したのかと思っていたが、まさかそんな裏話しがあったとは思わなかった。そしてフェリックスが実力社会という言葉を使った以上、どんな教育をしたのかは想像に難くない。そしてその行為を楽しそうに話すフェリックスに、レイジェスのメンバー達はどん引きしていた。


ヴァン達治安部隊の三人も、苦い顔をしてフェリックスを見ていた。

治安部隊は騎士団の入団の緩和を知っていたが、まさかフェリックスが実力行使をするとは思わなかった。

新人の彼らが味わったであろう恐怖を想像し、ヴァン達は首を横に振った。



「フェリックス様」


「ん、なんだい?ルナ」


「第三騎士団の方々は、素行不良が改善されて、今では皆さん品行方正になられたのですか?」


「うん、その通りだよ」


「では、これからはフェリックス様も、優しく接してあげる事ができますね」



「・・・え?」



「だって、もうお力を振るう理由がないではありませんか?」



「・・・あ、うん、まぁ・・・そうかもだけど」



「仲良くなさってください。私はフェリックス様と第三騎士団の皆さんが、仲良くしてくださると嬉しいです」



「・・・・・うん」



ニコニコと笑顔で正論を語るルナに、フェリックスは頷くしかなかった。



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