1103 自分だけの技
「こ、これは!魔力開放か!?いや、違う、だが・・・!」
シルヴィアの全身から放出された魔力は、シルヴィアを中心に地面いっぱいに広がっている水を凍り付かせ、更にルーシーの足までも氷で固めていった。
「チッ、膝にまでっ!これでは動けん!」
足首から膝へ、膝から腰へと、冷気は下からルーシーの体を登っていき、下半身から氷漬けに固めていく。
下半身を分厚い氷で固められたルーシーは、まるで身動きがとれなかった。
それは根が生えたように足元からがっちりと固め、力まかせに揺さぶった程度では、とても破壊できるものではなかった。
「・・・私ね、氷魔法が得意なの・・・」
シルヴィアが顔を上げる。その表情にはギリギリまで風魔法を使い身を護ってきた疲労が見えた。
だがそれ以上の断固たる意志の強さ、この戦いに懸ける気迫が、その青い瞳には宿って見えた。
そしてシルヴィアはルーシーの目を真っすぐに見て言葉を発した。
「この技は魔力開放を応用したものよ。全ての魔法の起点は指先を含む手の平だけど、魔力開放だけは違うわ。全身から魔力を放出して攻撃する魔力開放・・・私は氷の魔力を同じ要領で全身から放出したの。言うなれば氷の魔力開放ね・・・」
「魔力開放に属性を持たせたと言うのか?そんな事ができるとはな・・・」
「ええ、大変だったわ。でも不可能じゃないと思ったし、私にしかできない何かを身につけたくて頑張ったわ。全身から発する魔力に属性を乗せて放出する。大切なのはイメージだった。もっとも、私は一か月の訓練で氷魔法しかできなかったけどね」
そう話しながら、シルヴィアは指先に氷の魔力を集中させて、ルーシーの顔に向けて狙いをつけた。
「さぁ、これで私の勝ちね。降参しなさい」
ルーシーは動きを封じられ、その命はシルヴィアに握られている。
この状況では誰が見ても勝負ありだった。
周囲で見ていたジャレット達も、勝負は決したと見て安堵の息をついた。
だが敗北を突きつけられている側の、ルーシー・アフマダリエフは笑った。
「・・・なにか、おかしいかしら?」
肩を揺らして、くっくっ、と笑うルーシーに、シルヴィアは目元をピクリと反応させた。
「くっくっく・・・いやいや、氷を使うだろうと予想はしていたんだ。雨が降っているんだ、氷魔法なら最大限に力を生かせるだろうからね。しかし、まさか魔力開放に氷属性を持たせるとは予想もできなかった。両手には注意していたんだが、これは読めなかった。しかも凍り付かせる早さも見事だ。これほどの使い手だったとは・・・良かったよ」
「・・・良かった?」
どういう意味だ?そう含みを持たせてルーシーを睨むシルヴィア。
こうしている間にも、ルーシーの体を固める氷は広がり続け、腰から胸へと上がって行った。
敗北を認めない限り、シルヴィアが魔力を止める事は無い。ルーシーが氷の彫像と化すのも時間の問題だった。
だが己の命が懸かっているこの状況でも、ルーシーは焦りを見せる事はなく、笑いを浮かべたままシルヴィアの目を見返した。
「ああ、本当に良かったよ・・・レオを倒したヤツが本当に強くて・・・とるに足りない雑魚だったらガッカリするところだったからな。フフフ・・・ハハハハハハハ!」
「なっ!?あ、あなた、今がどういう状況か分かってるの!?降参しなさい!本当に死ぬわよ!」
いよいよ高らかに笑い出したルーシーに、シルヴィアは驚きを隠せなかった。
氷魔法に絶対の自信を持っているシルヴィアが、体の半分以上を固めたのだ。
体力型とはいえ、パワーで押すタイプではないルーシーに、この氷を破壊する術はない。
それなのに、なぜこうも笑う事ができるのか?
・・・・・もしやまだなにか、奥の手を隠し持っているのか?
「この程度で勝った気になるな!四勇士ルーシー・アフマダリエフの力を見せてやる!」
キッ!と、ルーシーの眉がつり上がり、その青い瞳も鋭い光りを放った!
「えっ!?」
豪雨が強く地面を叩きつけるなか、パキッとなにかが割れる音がやけにハッキリ耳に届いた。
「ま、まずいっ、シーちゃんもういいッ!さっさと決めろォォォォォーーーーーーッツ!」
ジャレットの叫びが雨音を切り裂いた。




