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1084 皇帝の像

「え!リンジーさん達もう来てるんですか!?」


驚いた反応を見せるアラタに、シルヴィアはニコリと微笑んだ。


「ええ、ファビアナちゃんとガラハドさんも一緒にね。一度ここにも顔を出してくれたんだけど、アラタ君達はまだ戻ってなかったし、先にアンリエール様へ謁見もしなきゃならなかったから、お城へ行ったわ。数日はお城に泊まるみたいだけど、お城での用事が終わればまた来るって言ってたわよ」


リンジー達が一度店に来た事を説明しながら、レイチェル、リカルド、ユーリ。パウンド・フォーに行ったメンバー達に顔を向けて、シルヴィアは最後にアゲハに向き直った。


「アゲハは初めて会うのよね?去年、レイチェルとアラタ君がロンズデールに行った時、帝国と戦って、ロンズデールの内部のゴタゴタを解決してきたのよ。それがきっかけで、ロンズデールと同盟を結ぶ事になったの。リンジーさんはその時一緒に戦ったロンズデールの人よ。みんなが帰ってきたって連絡したら、明日にでも来ると思うから仲良くしてね」


「あ~、それか、その話しは知っている。私もその時は帝国にいたからな。あの時のロンズデールは、帝国の傘下になるのはほぼ確定していた。それをひっくり返したんだから本当に驚いたよ。あの時は皇帝もさすがに機嫌を悪くしてたな」


シルヴィアの説明を聞くと、アゲハは興味を引かれたようにテーブルに肘をついて、身を乗り出した。


帝国の皇帝がどんな人物なのか、外見も含め、それはこの場ではアゲハしか知らない事だった。



帝国の皇帝について、一般的に知られている事は少ない。

先代のローレンス・ライアンが崩御した後、世継ぎとなる血筋の者達も次々と死去したため、暫定的に皇帝の座についたのが、軍の最高司令官だった男、ダスドリアン・ブルーナーという事くらいである。


比較的保守派だったローレンス・ライアンとは違い、ダスドリアンは貪欲で好戦的だった。

ダスドリアンが即位するなり、それまで時間をかけていたロンズデールへの侵略は一気に進んだ。

クインズベリーへの挑発的な行為も増え、いまでは開き直ったと思えるくらい、堂々と破壊活動を仕掛けてきている。



「アゲハ、帝国の現皇帝とは、いったいどんなヤツなんだ?アンリエール様も代替わりしてから直接あった事は無いとおっしゃっている。ここではお前しか知らないんじゃないか?」


「ん、そうだね・・・・・」


レイチェルが話しを向けると、アゲハは右手の平に顎を乗せ、少し考えるように間をおいて話し出した。



「・・・一言で言うと残酷な男だよ。前皇帝の血縁者が次々に死んで、暫定的に皇帝に治まったけど、あれはどう考えても現皇帝ダスドリアンの仕業だね。あのタイミング、そして手際の良さは、ずいぶん前から準備していたんだと思う。残酷な上に狡猾で我慢強い、そして人心掌握の術を心得ている。気難しいデューク・サリバンが、皇帝には忠実なんだ。皇帝に拾われた恩義もあっての事だろうけど、それだけじゃないだろうね。デューク自身が皇帝に着いていこうって思う、カリスマ性を皇帝は持っているんだ。敵に回して思う事は、とにかく手ごわいって事だね」


アゲハの口ぶりからは、皇帝に対する強い警戒感が表れていた。


「・・・そうか、軍の最高司令官だったという事は、当然高い戦闘力を備えているんだろう。どういう戦い方をするとか、持っている魔道具については何か知らないか?」


それは誰もが気になっていた事だった。

店長であるウィッカーが戦った、かつての皇帝ローランド・ライアンは、黒魔法使いとしてずば抜けた力を持つ男だった。

そしてローランド・ライアンが使っていた魔道具は、時間を止めるという信じられない物だった。


魔法を無効化するジャニスの魔道具、魔封塵を使ってウィッカーが破壊する事に成功したが、もしもあの魔道具が今も残って伝わっていたらと思うと、背筋が冷える思いだった。



「・・・私も詳しい事は知らないんだ。軍の最高司令官って、要は指示出しのポジションだろ?だからダスドリアンが戦っているところって見た事ないんだよ。体力型ってのはあの巨体を見れば分かるんだけどね」


「巨体、か・・・なるほど、それだけで十分だ。イメージができるかできないかでは全く違うからな」


首を横に振って肩をすくめるアゲハだったが、レイチェルは腕を組んで満足そうにうなずいた。


「・・・なるほどなぁ、みんなのレイチェルへの信頼の高さが分かる気がするな」


「ん、いきなりなんの事だい?」


「いや、あんたのそういう前向きなとこ、いいねって思っただけさ」



そしてアゲハはレイチェルとアラタの顔を交互に見ると、二ッと笑って指先を突き付けた。


「それで話し戻るけどさ、実際帝国がロンズデールを傘下に治めてたら、クインズベリーは終わってたよ。クインベリーの戦力もなかなかのものだけど、国二つは相手にできないだろうしね。ラミール・カーンが育ててた魔導剣士隊ってのも、なかなかのものだったしさ。だからレイチェルとアラタは、クインズベリーの危機を防いだ立役者ってわけだね。やるじゃん」


「いやいや、私達だけの力じゃないさ、一緒に行った仲間達、それにみんなが店を護ってくれているから、戦いに集中できたんだ」


「ああ、俺も結果的には帝国のダリル・パープルズに勝ったけど、この新緑の欠片、弥生さんから力をもらってかろうじてって勝ち方だったよ。自分だけの力とは思ってない」


「あらら、あんたら謙虚だね。もうちょっと誇ってもいいと思うけど・・・まぁ、それが二人の良いとこなのかね」


優等生のような二人の返事を聞いて、アゲハが肩をすくめると、シルヴィアがクスクスと笑って会話を引き取った。


「フフフ、それじゃあそろそろ話しをまとめていいかしら?ロンズデールから来たリンジーさん達は今お城にいるわ。あとで私から写しの鏡で連絡を入れておくわね、多分明日にはレイジェスに来る事になると思うわ。そしてアンリエール様との謁見では・・・多分帝国との戦争の話しをしたと思うの」


シルヴィアはそこで言葉を区切ると、席に座る全員の顔を見渡した。

さっきまで和やかな雰囲気で話しが進んでいたが、戦争という一言が出ただけで、場の空気が一気に張りつめた。


分かっている事だが、一見穏やかに見えても、日に日に町の緊張感は高まっている。

戦争という言葉には敏感になっているし、聞き流す事はできない。


「この時期にロンズデールから使者が来るというのは、それしか考えられないもの。もう八月も終わりでしょ、決戦は冬と予想されているから、あと三か月くらいかしら・・・両国の連携も確かめておかないと。謁見の場には店長も同席すると聞いているから、かなり詰めた話しをしたと思うわよ」


「レイチー達がいない間に、俺らも話し合ったんだけどな。今回リンちゃん達が来たのは、それしか考えられねぇよ。明日リンちゃん達がここに来たら、向こうから説明してくると思うけど、いよいよ本格的な戦略の話しになると思うぜ。みんなそのつもりでいてくれ」



最後にジャレットが締めたところで、この日はお開きになった。



そして翌日の夕刻、閉店まで30分というところでリンジー達三人がレイジェスを訪れた。


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