表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1078/1565

1078 動かない

誤字を見つけたので、訂正しました、内容に変更はありません。

「・・・・・・・」


私は決して声がもれないように、左手で強く口を押えていた。


声どころか呼吸音だって危ない。


さっき、突然私の前の空間がぐるぐると渦巻き出した。

そしてソレは出現した。姿を見た事は初めてだったけど、一目で分かった。これが話しに聞いていた闇の主・・・トバリだ。


近くにいるだけで押し潰されてしまいまそうな、ものすごいプレッシャーだった。

一瞬で体中から汗が噴き出し、心臓の鼓動が一段早く高鳴る。

気を抜くと叫び声を上げてしまいそうだ。


・・・こんなもの、人間がどうにかできるの?


おそらく私はまだ気づかれていない。疲れから荒い呼吸が出てしまい、それを聞かれたのだと思う。

そしてトバリは、おおよその位置を察知して出て来た、だけどそこまでなんだ。


そこから先は私が気配を消したから、私を見つけられないでいるんだ。



・・・命拾いをした。心の底からそう思った。

もし私が消身の壺を完成させていなかったら・・・そう考えると、背筋がゾッと冷たくなる。



トバリは目の前の私に気付かないようだけど、この辺りに何かがいるとは感じているんだろう。

辺りを伺うように、そこでぐねぐねと蠢いている。


だから私は身じろぎ一つせずに、その場にじっと立ちつくしていた。


闇が、トバリが動くところを初めて見たが、私はこれまで感じた事のない、恐怖と嫌悪感に襲われた。

目の前の暗闇がぐるぐる回ったり、伸び縮みするようにぐねぐねと動くのだ。

それがまるで、得体の知れない黒い多足の虫のように見えて、悲鳴を上げそうになるのを必死に堪えた。



・・・だけど我慢の限界だった。これ以上は直視できない。見ない事も恐怖だったが、私はキツく目を閉じた。


右手に持つ消身の壺だけは、決して落とさないように強く握り持つ。

この魔道具は命綱だ。みんなの命がこれにかかっていると言ってもいい。

なんとしてもこれだけは護らなければ!



大丈夫・・・・・きっと大丈夫・・・・・私の消身の壺はトバリにも通用する。

このままじっとしていれば、絶対にやり過ごせるはず!



願うような気持ちで、心の中で叫び続けた。





・・・・・・・・・・どれくらいそうしていただろう。


頑張れ!耐えるんだ!と、何度も心の中で自分を励まし続けた。


苦しいくらいに口を押えて、絶対に音を立てないように、身じろぎ一つしないように、足の指一本一本にまで力を入れて堪え続けた。



五分、いや十分か・・・時間の感覚も分からないけれど、随分長く身を固くしていたと思う。


そしてもうこれ以上耐えられない、そう思った時・・・・・



「エミリー、もう大丈夫だ」



誰かがそっと私の肩に手を置いた。この声は・・・レイマート様だ。

本当に小さな囁きだったけれど、その声はハッキリと私の耳に届いた。



「頑張った、本当によく頑張った」


もう一度耳元で囁かれる。言葉は頭に入ってくるが、極度の緊張で硬直している私は、目を開ける事もできずにいた。



「・・・・・あ~」


声をかけても無反応な私に、レイマート様は小さく、怒るなよ、と言って、ぐいっと私を抱き寄せた。



「!?」


「力を抜け、もう大丈夫だ」


まるで子供でもあやすように、ポンポンと私の背中を軽く叩く。

レイマート様の胸に抱かれると、レイマート様の心臓の音が聞こえてくる。不思議とそれが、生きているという実感を私に教えてくれた。



「・・・レイマート様、ありがとうございます。レイマート様の心臓の音、落ち着きました」


しばらくの後、落ち着いた私はレイマート様からそっと体を離した。

そして言ってから思った。私、変な事言ってない・・・?



引かれたら嫌だな。そう思ったけれど、レイマート様は、なんだよそれ?、と言って静かに笑っていた。



そしてまた私達は、闇の中を歩き出した。


どのくらい降りただろうか・・・ふと顔を上げると、上空から差し込んでいた明かりも無くなり、日没を向えた事を知った。



そう、夜が来たんだ・・・・・



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ