表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1074/1569

1074 現状の確認

「お、火柱が消えてくぞ?とうとう決着か?」


「そうかもしれんな、あとはアラタ達かデューク・サリバンか・・・どっちが生きて出てくるかだ」


リカルドとレイマートは、大爆発によって起きた火柱が、散り散りに飛ばされていく様子を見て、炎の中の戦いが終わった事を感じ取っていた。


空をも焦がす巨大な火柱だったが、炎の勢いよりも強く激しい風が吹きすさび、内側から炎を消し飛ばしていく。



「うぉッ!んだよこの風、めっちゃ強ぇな!おい青髪!お前さっきのもう一回使えよ!」


「無理だ。お前ずいぶん簡単に言ってくれるが、闘気で壁を作る事がどれだけ大変か分かってないだろ?もう俺に闘気は残ってない。さっきの爆発から全員を護るので使い果たした。お前も体力型なら風くらい自力で堪えろ」


さも当然と言うようなリカルドの要求に、レイマートは腰を落とし低い姿勢で風に耐えながら返答をする。


アゲハの風、リーザの闘気、デュークの黒い光、そして最後にアラタがぶつけた渾身の光、それによって起きた大爆発は、離れていたレイマート達さえも巻き込まんとした。


だがユーリのキュアで毒から回復したレイマートが、残った闘気を振り絞って壁を作り、爆発から全員を護ったのだ。これは全員を一か所に集めていた事が功を奏したとも言える。

もしバラバラであったなら、誰かが犠牲になった事も考えられるからだ。



「・・・私が眠っている間に、ずいぶん凄い状況になっているじゃないか」


ふいに後ろからかけられた声に、レイマートとリカルドが振り返ると、そこには赤い髪の女戦士が立っていた。


「うぉっ!レイチェルじゃん!もう大丈夫なのかよ!?」


「ああ、心配をかけたみたいだな。ユーリのおかげでなんとか助かったよ」


まだ頭が痛むのか、右手で頭を撫でるように押さえている。

無理もない。頭蓋骨が軋む程に締め上げられたのだ。


「あ?俺は?なんでユーリだけなん?レイチェル、俺に感謝はねぇの?俺も頑張ったんだぜ?」


「ハハハ、もちろんリカルドにも感謝してるよ、私のためにあいつと戦ったって聞いたぞ。ありがとう。アラルコン商会に美味しそうな丼物の店があったんだが、帰ったらそこでどうだい?」


こんな状況でもブレないリカルドに、レイチェルは笑いながら答えて腰を下ろした。


「ひゅー!さすがレイチェル、分かってんじゃんかよ!ん?なんだよ青髪?なに見てんだよ?お前も食いたいのか?言っとくけどお前は自腹だぞ?」


機嫌を良くしたリカルドだったが、不思議そうに自分を見るレイマートの視線に気が付き、睨みを利かせる。


「いや、レイチェルのあしらい方が見事だと思ってな。なるほど、お前のような面倒くさいヤツは、てきとうに褒めて、要求を聞いて満足させた方が得かもしれんな。スムーズに事が運ぶ」



「・・・・・ハァァァァァァァ!?んだとテメェ!喧嘩売ってんのかよ!?やんのかコラ!?あ!?やんのか!?」



強風に煽られている事などお構いなしにリカルドが立ちあがると、その背中に手がかけられた。


「あ!?誰だよコラッ・・・げっ!」


「リカルド君、危ないから座りましょうか」


シルバー騎士筆頭のラヴァル・レミューが、リカルドにニッコリと微笑んだ。

その両脇には、エクトールとユーリも立っていた。どうやら全員の回復が終わったようだ。



「んだよぉ、またお前かよ?俺お前嫌いなんだよ。話しかけてくんなよな」


面と向かって嫌いと言われても、レミューは全く動じる事なく、笑顔で言葉を続けた。


「ほらほら、座りましょうリカルド君。あ、ユーリさん、あなたからも言ってくれませんか?リカルド君がイヤイヤして困ってるんです」


「ハァァァァァァ!?イヤイヤってなんだよ!?赤ちゃんか!?赤ちゃん扱いかよ!?てめぇマジでぶッ飛ばすぞ!」


リカルドがレミューの胸倉を掴もうとすると、ユーリがその手を取った。


「リカルド、今はそんな事してる時じゃない。座って」


「んなっ、ユーリ・・・・・へいへい、わぁーったよ、座りゃいいんだろ?座りゃ」


ユーリの額には汗の粒が浮かび、その目にも疲労が色濃く浮かんでいる。

無理をしてここまで来て、レイマート、レイチェル、レミュー、エクトールと、たて続けに四人も治療したのだ。体への負担は相当大きいはずだった。


リカルドが大人しく腰を下ろしたのは、それが一目で分かったからだった。

ここで喧嘩をして、ユーリに余計な負担を与える事はしたくなかった。


リカルドが腰を下ろすと、レミュー達三人も揃ってその場に腰を下ろした。



「ユーリさん、大丈夫ですか?」


「ん、大丈夫。ありがとう」


体を叩く様な強い風が吹きつけてくるので、レミューがユーリの壁役として前にでる。

ユーリも笑顔でお礼を伝えると、リカルドが口を曲げて睨みつけた。


「おや、リカルド君、なにか?」


「べつにぃ~~~、むっつり騎士がナンパしてんじゃねぇよ、なんて思ってねーしー」


「おいリカルド、本当にいい加減にしろ。ほら、炎が飛んで中の様子が見えて来たぞ」


尚もリカルドが絡もうとしたところで、レイチェルが言葉を鋭く発して場を収めた。

レイチェルの言う通り、轟々と燃え盛っていた炎も鎮火しつつあり、風も少しづつ治まってきた。



「・・・あ、おい、あれ!兄ちゃんじゃねぇか!?」


立ち昇る煙の中にうっすらと見える人影、リカルドが指を差して声を上げると、煙の中から黒髪の男が姿を現した。


そしてその姿は、誰もが言葉を失ってしまうような驚きしかなかった。


右腕でアゲハを抱え、肩で担ぐようにリーザを乗せている。左腕はどうやら動かないようだ。

ボタボタと血が流れ、傷の深さがうかがえる。かなり無理やりだが、右腕一本で二人を運ぶには、この持ち方しかなかったのだろう。


大きく息を切らしながら、足を引きずるようにして歩く。

限界はとっくに超えている。だがそれでも歩いた。生きるために前に足を踏み出した。



「アラタ!」


ボロボロどころか、生命の危機さえ感じさせるアラタの姿を見て、レイチェルが駆けだした。


「おい!アラタ、もういい!もういいんだ!止まれ!ユーリ来てくれ!」


ボロボロのアラタの肩を掴んで止めると、後ろを向いて大声で呼びかけた。

肩に乗せているリーザと、右腕で抱えているアゲハをその場に下ろさせると、アラタはやっと顔を上げてレイチェルを見た。


「・・・レイ、チェル・・・良かった・・・無事、だったんだな・・・」


「アラタ・・・キミってヤツは、こんなにボロボロになって・・・私の心配か・・・」


レイチェルを見て安心したのか、アラタの膝が折れて前に倒れそうになると、レイチェルはアラタの背中に腕を回して、その体を受け止めた。


「・・・よく頑張ったな、立派だ。後は私にまかせて休め・・・」


ポンっと背中を軽く叩く。


「・・・・・・・」


アラタは返事をしなかったが、微かに頷いた事は分かった。



「・・・ユーリ、疲れているところすまない。魔力は持ちそうか?」


「大丈夫。無理でも治してみせる」


駆け付けたユーリはアラタの左腕を見て、骨まで見える深手に眉を潜めたが、すぐにヒールをかけて治療に入った。

大丈夫と口にしても、ユーリの魔力も残りわずかである。全身を襲う疲労感に足元がふらつくが、最後の魔力を振り絞って癒しの魔量を送り込む。


「ユーリ・・・頼んだぞ」


レイチェルもユーリの魔力が尽きかけているのは分かっている。

できれば休ませてあげたい。しかし現状ではユーリしか治療ができない事と、ユーリの真剣な表情を見て、アラタの治療を託した。





「・・・デューク・サリバンは逃げたようだな」


周囲をグルリと見渡すと、レイマートは断定的な口調でそう口にした。


「レイマート・・・私達は勝ったのでしょうか?それとも・・・」


レミューはレイマートの隣に立つと、まだ煙が立ち込める戦場に目を向けながら、勝敗をたずねた。

デューク・サリバンが消えたと言っても、圧倒的な力にねじ伏せられた事に変わりはない。

自分を含め、何人もの仲間が殺されかけたのだ。

この状況だけを見れば、撃退したと言えるかもしれない。だがとても勝ったとは思えない心境だった。


「言いたい事は分かるけどよ、まぁ、勝ったと思っていいんじゃねぇか?俺らは生きてここに立っている。それが全てだろ?」


「・・・フッ、ゴールド騎士になっても、相変わらず軽いノリですね。ん?あれは・・・レイマート、良かった。あちらも全員無事だったみたいですね」


レミューは視界に映った人影に、ほっと一つ息をついた。


「ん、おお、アルベルトさん、フィルにロゼとエミリー、みんな無事だったか」


レミューの視線を追って、レイマートも四人の姿を確認すると、安堵の声をもらした。

フィル達のところへは、アルベルト・ジョシュアが加勢に向かったと聞いてはいた。アルベルトの実力を疑うわけではなかったが、やはり安否の確認ができるまでは気がかりだった。


フィル達も同じ想いだったのだろう。レイマートの姿を見つけると、走り寄ってきた。



「レイマート様、良かった、無事だったんですね」


「おう、なんとかな。ユーリ、ああ、レイジェスの白魔法使いなんだが、彼女がいなかったらヤバかったけどな。お前達も無事で何よりだ、ああ、それからほら、コイツも一緒だぞ」


レイマートが後ろを振り返ると、それを追ったフィル達三人の視線が釘付けになった。



「・・・よぉ、戻ってきたぞ。みんな助かって良かった」


エクトールが笑顔を見せると、フィル達三人は抱き着かんとする勢いで飛びついた。


「エクトール!心配したぞお前!良かった!本当に良かった!」


「エクトール!良かった無事だったのね、体は大丈夫なの!?」


「エクトール!絶対生きてるって信じてたわ!」


全てを託して下山させたエクトールが、元気な姿を見せてくれた。

信じてはいたが、敵の蛇は数えきれない程にひしめいていた。その中で果たして無事に山を降りられたのか、心配は尽きなかった。


無事に帰って、救援を求めてくれるだけで十分だった。

けれどエクトールは、こうして救援を連れて来たうえに、自身もまたこの山に戻ってきたのだ。

疲労が抜けているはずもない、無理をしているのは間違いないだろう。



だけど、自分達のために再びこの山に戻って来てくれた。

三人はその気持ちが、とても嬉しかった。




「・・・敵は消えた、か・・・レイマート、まずは無事で良かった。酒でも飲んでゆっくり話したいところなんだが、まぁそうもいかないよな。とりあえず今ここで何があったか教えてくれ」


再会の喜びを分かち合うフィル達を、微笑ましい顔で見つめた後、アルベルトは表情を引き締めてレイマートに向き直った。


「アルベルトさん、救援に感謝します。そうですね・・・まず、黒い光なんですが・・・」



レイマートは腰に手を当てると、頭の中で話しの順序を組み立てるように空を見上げた。

そしてこの場で起きた、帝国軍第七師団長デューク・サリバンとの戦いを話した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ