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1065 黒い光が暴走した空間で

「防御の必要はない。私の背後をとった時、貴様はすでに敗北しているのだからな」


「ッ!?」


スカーレットの背中に剣を振り下ろしたその時、一秒にも満たない狭間の時間でアルベルトは確かに聞いた。

そしてアルベルトの剣がスカーレットの深紅のローブに触れた瞬間、深紅のローブから真っ赤に燃える炎の獅子が飛び出した!


「なにィィィイーーーーーーッツ!?」


回避はおろか、防御も間に合わない!真正面から炎の獅子の体当たりを受ける!

そして炎の獅子はアルベルトの右肩に牙を突き立てると、そのまま地面に押し倒した!


「ぐぅおぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーッツ!」


突き刺さった炎の牙がアルベルトの体内を燃やす。


内側から肉を焼かれ、血液が蒸発する耐え難い苦痛に、アルベルトは声を上げた。

炎の獅子から逃れようともがくが、両腕を獅子の前脚で押さえつけられ、振りほどく事ができなかった。


「フッ、無様だな・・・おい、ゴールド騎士、あまり私を舐めるなよ?無防備に背中を晒すと思ったか?」


押し倒されて自由を奪われているアルベルトの前に、スカーレットが静かに降り立った。

切れ長の金茶色の瞳は、蔑むようにアルベルトを見下ろしている。


「ぐ、がぁぁッ、て、てめぇ!こ、これは!」


「私の深紅のローブは特別だ。師団長一強い火の精霊の加護は、獅子だろうと鳥だろうと、炎の形を自由に変えて具現化させる事ができる。貴様はそのまま体内を焼かれて死ぬがいい」


絶対の優位に立っても、スカーレットの顔に笑みはなかった。

ただじっと冷たい瞳でアルベルトを見つめ、抑揚の無い声で死を宣告した。


「な、んだ、とぉッ!ぐ、あがぁぁぁ!」


「ゴールド騎士の呼び声の高さは、帝国にまで届いていたのだが・・・この程度だったとはな・・・ガッカリさせてくれ・・・!」



自分に向けられた力の放出を感じ取り、スカーレットは飛び上がった。


「チッ」


その直後、無数の氷の槍がスカーレットの足元をかすめていき、微かな苛立ちが顔に出た。

そして氷の槍、刺氷弾が撃たれた方に顔を向ける。


「寝てればいいものを、雑魚が邪魔をするか」


「逃がすか!」


黒魔法使いフィルが、空中に逃れたスカーレットを追って右手を向けた。

まだ完全回復はできていないが、アルベルトの危機に立ち上がったのだ。


「死ね!」


氷の魔力がフィルの全身から放たれる。

闇に覆われた世界でも、フィルの凍てつく冷気が周囲の樹々を氷らせていく事が分かる。

足元からは逆さ氷柱が立ち昇り、スカーレットに向けた右手の平には、氷の竜が形作られる。


上級魔法・竜氷縛!


全長10メートル!フィル・マティアスの渾身の竜氷縛が、スカーレットに撃ち放たれた!



「フン、その程度の竜氷縛で、私を縛れると思ったか?」


フィルの竜氷縛を見たスカーレットは、吐き捨てるように言葉を口にすると、炎の魔力を放出した。


それは暗闇を赤く染めるくらい強く大きい。そして炎は竜となって激しく燃え上がった。


上級魔法・灼炎竜!


「消えろ」


右手を振るい、フィルの竜氷縛に灼炎竜をぶつけると、氷の竜は一瞬にして蒸発させられ、白い水蒸気を空中に撒き散らした。


「なにッ!?」


フィルの目が驚愕に開かれる。

最初に奇襲を受けた事で、スカーレットの魔力の高さは身をもって味わった。

だがそれでも、自分だってシルバー騎士の序列二位だ。戦えない相手ではない。そう思っていた。


しかし、渾身の竜氷縛が、こんなにもあっさり消されるとは思いもしなかった。



「馬鹿が!上級魔法なら私に通用するとでも思ったか?貴様と私とでは魔力の桁が違うのだよ、桁が!消し炭にしてくれる!」


竜氷縛を消滅させると、スカーレットは衝撃を受けるフィルに蔑むような視線を向けた。

帝国軍黒魔法兵団の頂点に立つスカーレットにとって、黒魔法で自分に勝てると思われる事自体が不快だった。

感情がそのまま言葉に乗って、強く言い切られる。

スカーレットはそのままフィルに向けて腕を振るい、灼炎竜をけしかけた!


空中に浮かぶスカーレットが操作した灼炎竜は、地上に立つフィルに向かって一直線に向かって来る!


そして燃え盛る紅蓮の炎がフィルを呑み込もうとしたその時、突然強い光がほとばしり、スカーレットの灼炎竜を弾き飛ばした!



「なにッ!?」


灼炎竜が横から打ち上げられ、スカーレットの目が驚きに見開かれる。

全力ではなかったが、それでも自分の灼炎竜を弾くなど、まずできる事ではない。


いったい誰が?何をされた?


灼炎竜が弾かれた方に目を向けると、さっきまで炎の獅子に押し倒されていたゴールド騎士、アルベルト・ジョシュアが、光り輝く剣を振り抜き立っていた。

そしてその傍らでは、深紅のローブから生み出した炎の獅子が真っ二つに斬り裂かれ、風に飛ばされるように火の粉を散らしていた。



「はぁっ!・・・はぁっ!・・・奥の手、使わせやがって・・・ぐっ・・・」


炎に獅子に牙を突き立てられた右肩からは、焦げた血が赤黒い煙となって立ち昇り、上半身のほとんど全面に火傷を負っていた。


「貴様!・・・その光・・・炎の獅子を斬って、灼炎竜を弾いたというのか?」


「これは、闘気だ・・・飛ばすのは消耗が激しいから、あまりやらんがな・・・頭を潰せなかったか・・・頑丈だな」


アルベルトのダメージは大きかった。

上半身に負った火傷、特に牙を突き立てられて体の内部を焼かれた事は、耐え難いほどの激痛だった。


だがそれでもゴールド騎士の矜持が体を動かし、スカーレットに剣を突きつけさせる。

闘志は火はまだ消えない。



「・・・しつこい男だ。いいだろう、ここでゴールド騎士を始末しておけば、後々楽にもなる。全員まとめて私の竜で焼き殺・・・ッ!?」



スカーレットが手を振って、灼炎竜を差し向けようとしたその時だった


背中のすぐ後ろで突然闇が渦を巻き出した



気配に気づきスカーレットが振り返ると、巨大な闇が大きな口を開けていた


「しまっ・・・!」


気付いた時にはもう遅い


闇がスカーレットを呑み込もうと襲い掛かった



村戸修一の黒い光が暴走し作り出した闇の空間に、黒渦が出現した



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