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1058 本能

誤字を見つけたので訂正しました。内容に変更はありません。

左中段突き!デュークの腹筋を真っすぐに突き刺す!

右中段突き!右拳を抜くと同時に突き刺す!

右中段膝蹴り!左の肋骨に突き刺すように打つ!

頭突きで顎を打ち上げると、右上段蹴りを左側頭部に叩き込んだ!


トップスピードを維持したままの超高速の連打!限舞闘争!

止まる事の無いレイチェルの攻撃は、デューク・サリバンを圧倒していた。



速い・・・・・

この女、スピードだけなら俺以上だ。


レイチェルの高速の連打を浴び続けながら、デュークはかろうじて視界の端に捉えられる、赤い髪の残像を追っていた。



10メートルの距離から矢を弾く事ができるデューク・サリバンだったが、レイチェルの高速の連撃、限舞闘争には、カウンターを合わせる事ができなかった。


体を丸めて防御に徹しても、ガードの隙間を縫って拳を入れて来る。

レイチェルの連打は一切の反撃を許さず、ただ一方的にデュークを打ち続けた。




「よし!そのままやっちまえレイチェル!ぶっ殺せ!」


巻き添えを食わないよう、レイチェルとデュークから距離をとって戦いを見ているリカルドは、デュークをめった打ちにしているレイチェルに、勝利の可能性を感じていた。


拳を握り締めるリカルドに、青白い顔のレイマートが言葉を向けた。


「はぁ・・・はぁ・・・厳しい、かもしれんぞ・・・」


「あ?なんでだよ?レイチェルがボコってんじゃねぇかよ?」


ゆっくりと、呼吸を整えながら、レイマートは言葉を続けた。


「よ、よく見て見ろ・・・あ、あれだけ、打たれて・・・倒れないんだぞ?・・・ヤツの、タフネスは、お前も・・・知ってるだろ?」


そう、リカルドの大地の矢が直撃しても、デューク・サリバンに目立ったダメージは見られなかったのだ。レイチェルはリカルドより攻撃力があるが、それでもこの尋常ではないタフネルぶりを見せるデュークに、通じるものだろうか?


「は?え?・・・ま、まさか・・・き、効いてねぇって・・・言うのかよ?」


レイマートは目を細めると、静かに首を縦に振った。


「ダメージが無い、とは言わない・・・だが、俺の、見た限り・・・このまま打撃で、倒せるとは・・・思えん」


「んだよ・・・あんだけボコられて・・・マジかよ?」


信じられない。驚きを露わにリカルドは二人の戦いを見た。

そしてレイマートの分析が正しいと、嫌でも分かってしまった。



レイチェルの連打が始まって60秒を過ぎ、繰り出した打撃は優に100を超えていた。

数えきれない打撃が的確に急所に刺さっているが、それでもデューク・サリバンは倒れない。


このまま続けて倒せるのか?



「悔しいが・・・い、今の、俺達に・・・できる、事は、ない・・・」


リカルドの心中を察したように、レイマートは呟いた。


そしてレイマートは震える己の手を見つめた。

毒の影響でもはや動く事はできない。このまま戦いを見る事しかできない自分が歯がゆかった。



「・・・俺らは見てるだけかよ・・・くそっ!」


リカルドは悔しさを言葉にし、拳を握り締めた。

全力を尽くした。だがデューク・サリバンには何一つ通用しなかった。

そんな自分が加勢しようとしても、足手まといになるだけなのは明白だった。



だからどんなに悔しくても、戦いたくても、今は見ている事しかできない。


なんで自分はこんなに無力なんだ・・・・・

悔しさを噛み締めながら、リカルドは一人で戦っているレイチェルの背中を見つめた。






巨躯の男デューク・サリバンを一方的に叩き続ける。

この光景だけを見れば、レイチェル・エリオットが圧倒していると思うだろう。


だが一打一打、デュークに拳を打ち付け、蹴りを食らわせる毎に、レイチェルは焦燥を感じていた。



この男、想定以上にタフだ。

これだけ急所に打っても倒れる気配がまるでない。


私の打撃は決して軽くない。

以前マルゴンにくらわせた時も、ヤツを倒す事はできなかったが、それでも手ごたえは感じられた。


だがこいつはなんだ?


なぜこれだけ打たれているのに倒れる気配がない?


なぜこれだけ打っているのに、倒せるイメージが浮かばない?


いや、迷うな!

こいつも人である以上、不死身という事はありえない!肉体がある以上、必ず倒す事はできる!

だから打ち続けろ!倒れないなら倒れるまで打つんだ!



右上段突き!


レイチェルの拳がデュークの顔面にめり込んだ!


「オォォォォォォォォォーーーーーーーーー・・・・・」


続けて左上段突きを繰り出そうと腰を回した時、レイチェルは見た。


デュークの顔面に打ち込んだ右拳、その隙間から自分をじっと見つめる男の・・・闇より深い黒い目を・・・・・



「ッ!」


レイチェルは地面を後ろに蹴って、デューク・サリバンから大きく距離を取った。


頭で考えての行動ではない。


デュークの漆黒の闇を孕んだ目を見た時、ゾクリと背筋に悪寒が走り、本能がレイチェルを危険から遠ざけたのだ。




「な、なんだよ!?レイチェル、急にどうしたんだ!?」


リカルドが戸惑いの声を上げると、レイマートは険しい顔をしながら、前を向いたまま口を開いた。


「・・・ぜ、全滅かも、しれん、ぞ・・・・・」


「あ!?・・・な、なに言ってんだよ?」


「はぁ・・・はぁ・・・よ、よく見てみろ・・・あの、男の・・・あれはなんだ?」


レイマートは、震える指先でデューク・サリバンを指した。


その指先を追い、もう一度デューク・サリバンを見て、リカルドはレイマートの言葉の意味を理解した。



「なっ!?・・・ん、んだよ、あれ!?」


「俺達は・・・想像以上にヤバイのを、相手にしていたのかもな・・・」



二人の視線の先には、全身から黒い光を放つデューク・サリバンが立っていた。





「くっ!お前・・・その力、アラタと同じ光・・・いや、違うな・・・アラタの光は貴様のように黒く邪悪な光じゃない!」


レイチェル・エリオットは、自分がなぜ飛び退いたのかを理解した。

たった今まで、自分が一方的に殴りとばしていた男は、まるで力を出していなかったのだ。

数百発を数える打撃を浴びせ、ダメージが溜まったのか、それとも単にやる気になったのか、いずれにしろ、黒い光を見せた事で戦闘体勢に入った事は間違いない。


デューク・サリバンがその実力の一端を見せる気になったのだ。



あのまま引かずに殴り続けていたら、一瞬で潰されていたかもしれない・・・・・



固唾を飲みこむ程の嫌な想像だったが、頬を伝う冷たい汗が、決して想像だけに留まらないと教えていた。


「・・・アラタ・・・新か・・・・・女、なぜ貴様の口からその名が出る?」


「フン、お前はアラタの兄貴分らしいな?アラタが言っていたぞ、デューク・サリバン、いやムラト・シュウイチは自分にとって恩人だってな。本当にお前を慕っていたぞ。それが今では悪に魂を売ってしまったとはな・・・今のお前を見たらアラタが・・・・・ッツ!?」



そこまで話した時、一瞬でレイチェルの正面まで距離を詰めたデュークの右手が、レイチェルの頭を掴み持ち上げた。



「女・・・質問に答える気がないのだな?」


「なっ!?」


ば、馬鹿な!み、見えなかった!い、いったいどうやってこんな、私の前に一瞬で!?


「だったら死ね」


「な、なにを!?う、うァァァァァァァーーーーーーーーーーーーッツ!」」



ミシっとした音と共に、頭が握り潰されそうな程の力で締め上げられ、レイチェルは絶叫した。



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