1057 レイチェルの決意
リカルド・ガルシアは、目の前で起きている光景に圧倒されていた。
デューク・サリバンの右拳をくらう直前だった。
もしあの拳をくらっていたら、死んでいたかもしれない。ギリギリの際の際。
だがそこにかけつけたレイチェルが、間一髪でデュークの拳を蹴り飛ばし、リカルドを救ったのだった。
そしてアラタの名を聞いたデュークが、なぜか呆然としたところで、レイチェルの蹴りがデュークの腹に入った。
リカルドが圧倒されたのはそこからだった。
レイチェルの右の前蹴りが、デュークの腹にめり込む!
そこで感じたものは、まるで何十にも何百にも重ねた空気の層。
めり込ませた足が撥ね返されそうになる程の、高密度に鍛え上げられた筋繊維の鎧。
体をくの字に曲げてはいるが、おそらくデューク・サリバンにダメージは無い。
「こいつッ!」
レイチェルは瞬時に悟った。
このデューク・サリバンという男の、尋常ではないタフネスを。
そしてこの男から感じる不気味な空気に、早いうちに決めるべきだと、本能が警告を発していた。
前かがみに体を折ったデュークが、ゆっくりとその顔を上げた時、レイチェルの左の上段蹴りが、デュークの右側頭部を蹴り抜いた!
「ハァァァァァァーーーーーーーーッツ!」
デュークの首が、捻じ切れるかと思うくらい撥ね飛ばされる!
レイチェルは気合の声を張り上げると、左の掌底をデュークの右胸に打ちこんだ!
「ガッ・・・」
デュークの口から微かなうめき声が漏れる。
「ダァッツ!」
レイチェルは掌底を打ち込んだ左の肘をたたみ、そのまま左肘でデュークの鳩尾で刺した!
再びデュークの体が前かがみに折れると、レイチェルの右膝がデュークの顎を撥ね上げる!
右の拳でデュークの左頬を殴り抜き、腰を右に回して左拳を右脇腹に突き刺す!
右の手刀で左鎖骨を斬るように打ち付け、両目に指を刺しこむように左の掌底を叩きつける!
潰す事はできなかったが、ひっかっかった指先が眼球に触り、とても目を開けたままではいられない。
目を瞑り体を丸めて防御態勢を作るが、レイチェルの蹴りはガードの隙間を縫って、デュークの顎を打ち抜いた!
右下段蹴りで左膝を打ち付け、崩れたところに右肘を振り上げて顎を打つ、一歩深く踏み込んで右裏拳で顔面を叩く!
左中段突き!右中段突き!デュークの胸を打つ!
下段右足刀!左膝を打たれ下半身が崩れる!
中段右膝蹴り!デュークの腹にめり込み頭が下がる。
上段右掌底!顎が撥ね上げられ、続く体を旋回させた左裏拳が顔面を打ち抜く!
頭突き!デューク・サリバンの鼻から赤い血が飛び散った!
「あ、あれは、まさかいきなりかよ!?」
下段左足刀!中段左蹴り!右中段回し蹴り!デュークの左脇腹が抉られる!
レイチェルの連打は途切れる事なく続く。
左拳振り上げで顎を打ち抜き、右中段突きを鳩尾にめり込ませる!
それはトップスピードを維持したままの超高速の連打!
「限舞闘争だ!レイチェルのヤツここで仕留めるつもりだ!」
「オォォォォォォォォーーーーーーーーーーーッツ!」
アラタ・・・今分かった
こいつだ、こいつがあんたの見た夢の相手だ
デューク・サリバン・・・ムラト・シュウイチ、あんたの兄貴分
一目で分かった、こいつは危険だ
身に纏う異様な空気・・・
底の知れない闇のような黒い目を見た時、こいつから感じたものは憎悪だった
こいつは憎んでいる
この世界の全てを憎んでいる
アラタ・・・シンジョウ・ヤヨイの言っている事は正しい
お前はこいつと戦っては駄目だ
お前にとってこいつは恩人なんだろう
優しいお前がこいつと戦えるとは思えない
だからアラタには悪いが、私がここでこいつを倒す!
右の飛び膝蹴りが、デューク・サリバンの顎を撥ね飛ばした!




