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1032 信用されるという事

「・・・ここにもいないな」


周囲を見回して、アルベルトは首を横に振った。


エクトールから聞いた三つの洞窟のうち、800メートル地点と1900メートル地点の二か所には、レイマート達の姿は無かった。

洞窟内の状態を見ても、ここ数日以内に使った可能性は薄いと思われた。


「じゃあ次に行こうか、2800メートル地点だったな?」


レイチェルがエクトールに顔を向けると、エクトールは、そうだ、と答えて頷いた。


3000メートル地点で戦って、そこから逃げたのだから、一番距離の近い2800メートル地点の洞窟に隠れた可能性は高いように思う。

そこを拠点にしていたという話しだし、本命は2800メートル地点の洞窟だろう。


次に向かう場所が決まり、それぞれが順番に洞窟を出た時には、陽はだいぶ高くなっていた。


「正午ってところだな・・・このペースなら、次の洞窟には二時間以内には付けるだろう。悪くないペースだ」


眉の上に右手を当てて陰を作ると、アルベルトは顔を上げて太陽の高さを確かめた。


「食事は各自歩きながら済ませてくれ。いつ蛇が出てくるか分からないから警戒も怠るなよ。では行くぞ」


そう指示を出したアルベルトは、干し芋を口に入れて水で流し込むと先頭を歩き始めた。





陽が高くなって乾いてきたのか、水を吸ってぬかるんでいた足元が少しだけ歩きやすくなった。


しかし相変わらずの厳しい傾斜に、どこからでも現れ襲い来る蛇、救出隊の一行は神経をすり減らしながら足を進めて行った。


「ユーリ、大丈夫か?」


「はぁ・・・はぁ・・・疲れた」


心配そうに訊ねるアラタに、ユーリは息を切らしながら、かすれた声で答えた。

頬を伝う汗は顎先から滴り落ち、膝に手を着いていなければ立っている事もままならない。


膂力のベルトを使って自力で山を登っていたユーリだったが、もはやユーリが限界なのは、誰の目にも明らかだった。



「・・・これ以上は無理そうだね、私が背負うよ」


隣を歩いていたリーザがユーリの肩に手を置くと、レイチェルが待ったをかけた。


「待て、リーザは大剣を背負っているだろ?剣はどうする?まさか片手で剣を持って、もう片手でユーリを背負うつもりか?ここは私がユーリを背負うよ」


「いやレイチェル、待ってくれ。俺の方が体は大きいし、ユーリの事は俺がおんぶするって約束してるんだ。ここは俺にまかせてくれ」


自分が背負うと言い出したレイチェルに、今度はアラタが待ったをかける。


リーザ、レイチェル、アラタの三人で、ユーリの取り合いが始まりそうになったが、三人の目の前でユーリの体がヒョイっと持ち上げられた。



「はいはい、こんなとこで三人で言い合ってんじゃないよ?ユーリは私がおんぶするから先に行きなよ。あ、アラタはこれ持って。落とすんじゃないよ?」


一連のやりとりを見ていたアゲハが、ユーリの脇の下に手を入れて持ち上げると、そのままおんぶをしてしまった。


「あ、うん・・・」


アラタがアゲハから薙刀を受け取ると、レイチェルもリーザも顔を見合わせて、しかたない、と言うように小さく肩をすくめた。


「まぁ今回は時間が無いし、アゲハに譲ってやろう」


「漁夫の利ってヤツだな」


「え!?ちょっと待って、なにその目!?ユーリをおんぶするのってそんな感じ?ご褒美的な!?」


レイチェルとリーザから意味有りな視線を向けられたアゲハは、目をパチパチさせて驚きの声を上げた。


「おいおい、くっちゃべってねぇでさっさと行こうぜ?今がどういう時かわかってんのか?一人はみんなのために、みんなは一人のためにだろ?」


「お、おうリカルド、悪い」


立ち止まって話していると、後ろにいたリカルドがアラタ達にチラっと目を向けて、追い越して行った。


「おいアラタ・・・あいつ変な物でも食ったのか?それか頭を強く打ったか?」


先を行くリカルドの背中を見ながら、りーザが首を傾げながらアラタに言葉を向けた。


「あ~、うん、さっきレミューに色々言われてさ、それからずっとあんな感じなんだ。俺もやり辛くて困る」


チラリと後ろを振り返ると、最後尾を歩くレミィーと目が合った。

状況を察しているのかいないのか、ニコリと爽やかな笑顔を向けて来た。


「・・・あ、なんか分かったかも。ジーンと一緒だ」


「ん、ジーン?どういう事だ?」


隣を歩いているレイチェルが、アラタの一人言を聞いてその意味を訊ねる。


「怒らせると怖いって事」


「・・・なるほど、納得だ」



どうやらレイチェルから見ても、ジーンは怒ると怖いようだ。





そして2800メートル地点まで登り、エクトール達が拠点にしていると言っていた洞窟に入った。


秋とはいえ、この時間帯は陽差しも強く暑い。

だが陽の当たらない洞窟の中は、肌がヒヤリとするくらい冷たかった。


「・・・いないようだな」


「はい・・・俺がここにいた時から変わりはないようです」


目星を付けた三か所の洞窟で、最後に残ったこの洞窟にレイマート達がいるはずだ。そう思って入ったが、ここでも彼らを見つける事はできなかった。



「・・・エクトール、他にどこか隠れる事ができそうな場所はないか?」


「・・・分かりません。ここにもいないとなると、一体どこに・・・」


この救出隊を引っ張っているアルベルト、そして案内役のエクトールの二人は、洞窟内で足を止めて次の探索地点について話し合いを始めた。


だが二人とも、パウンド・フォーの全体を把握できているわけではない。

方針を決めようにも行き詰っていた。



「こっから東に行くと、もう一個洞窟があんぞ。そこじゃねぇの?」


頭を悩ませている二人のところに、スタスタと歩いてリカルドが近づいた。


「なに?・・・東に洞窟?」


眉根を寄せてアルベルトが聞き返す。その目にはハッキリと疑念が浮かんで見えた。

これまでずっとふざけた態度で付いて来ていたリカルドに、突然そんな事を聞かされても信じる根拠が何もなかった。



「ああ、土の精霊に聞いたんだ。間違いねぇよ。東に500メートルくらいだってよ」


「土の精霊だと?・・・お前・・・」


予想もしなかった存在を聞かされ、アルベルトは驚きを隠せなかった。


「あ?んだよ?・・・信じねぇのか?だったら他にプランあんのかよ?」


「・・・・・精霊の声が聞こえると言うのか?」


リカルドの言葉をすぐに信じる事ができずに凝視してしまうと、疑われていると感じたリカルドは、アルベルトを睨み付けた。


険悪な空気になりかけたその時、一歩下がって話しを聞いていたレイチェルが前に出た。


「アルベルト・・・気持ちは分かるが、リカルドはこういう時にいい加減な事は言わない。信じてくれないか?」


「レイチェル・・・・」


真剣な眼差しで自分を見るレイチェル。


リカルドはレイジェスの従業員だから身内である。だがそれでも、ここまで信じて言い切るのは、それだけの信頼があるという事だ。


アルベルトはあらためてリカルドに目を向けた。


ここに来るまでの言動から、ふざけた男としか見ていなかった。


だがレイチェルに言われて、あらためて正面からリカルド・ガルシアという男を見てみた。


・・・なるほど、いい加減な事を言っている目ではない。


「・・・レイチェルが信用するだけのものは持ってるという事か・・・分かった。ここから東に500メートルだな?」


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