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100 謁見 ①

クインズベリー国

国王 イザード・アレクサンダー Ⅱ世


武闘派であり、自身も若かりし頃は、闘技場で騎士団や治安部隊を相手にその実力を見せていた。


その剣の腕は国内屈指として高い名声を受け、力自慢の治安部隊からも圧倒的支持を集めていた。

そして優れた統治力は、他国との交流も円滑にし、経済を繁栄させ、国民の生活を豊かにしていった。


だが、その人望と統治力に陰りが見え始めた。

数年前から、少しづつだが、国益を損ねる可能性がある政策を進めるようになっていったのだ。


それは、いくつかの政策を打ち出すと、その中に一つは、明らかに損益が懸念される政策があるのだ。


ブロートン帝国との貿易に置いて、鉄の輸入は非常に重要な位置づけだが、その卸価格の設定や、納期、品質に置いて、なぜかブロートンが優位になるように組まれているものもあった。


ブロートンからの提示ならば分かる話だが、なぜクインズベリー国からの最初の提示で、ブロートンがただ利益を上げるだけの条件を提示しなくてはならないのか?


幹部を集めた会議で、代替案をまとめ国王へ進言し、撤回できた件もあるが、そのまま決められた政策もいくつもある。


マルコスの暴挙もその一件である。

あまりに極端で厳しい過ぎる取り締まりだったが、国王は周りの話に耳を貸さず、そのままマルコスのやり方を黙認するようになった。


腐敗は少しづつ、だが確実にクインズベリー国を蝕んでいった。

現在クインズベリー国は、貿易、国防、経済政策、様々な面で力を落としている。




サカキ・アラタ。レイチェル・エリオット。ヴァン・エストラーダ。


三人は玉座の間で、レッドカーペットの上に片膝を付き顔を伏せ、壇上の玉座に座する国王の言葉を待っていた。


「顔を上げよ」


頭上からの大臣の声に従い、三人は顔を上げた。

視線の先には、数段上がった壇上の玉座に、国王イザード・アレクサンダーⅡ世が、そしてその傍らには、

国王の言葉を受ける大臣が控えていた。



「国王陛下からのお言葉である。ヴァン・エストラーダ、この度の騒動だが、本来であればお前には相応の処分を下さねばならない。だが、マルコス・ゴンサレスの暴走を止めた事。そして治安部隊隊員達の嘆願と、国民の声を考慮し、不問といたす」


「有難きお言葉に感謝いたします」


ヴァンが謝辞を述べ頭を下げると、一拍置いて大臣が言葉を続けた。



「そこでだ。マルコス・ゴンサレスが除隊になった以上、治安部隊に新しい隊長を置かねばならん。

カリウス・クアドラスを再任という意見もあったが、人格、人望、実力、様々な点を熟慮した結果、ヴァン・エストラーダ。お前を治安部隊の新隊長に任命する」


「その任、しかと承りました。この命を懸け、国民の平和を護る事を誓います!」


ヴァンが言葉に力がこもる。

新隊長への任命は確実視されていたが、やはり正式な決定に高ぶる思いもあったのだろう。


ヴァンへの告知が済むと、大臣は国王へ一度顔を向ける。

国王が頷くと、大臣はアラタとレイチェルに顔を向け口を開いた。



「サカキ・アラタ、レイチェル・エリオット、お前達二人は今回の治安部隊の騒動の際に、マルコス・ゴンサレスと一戦交えたそうだな。それについていくつか確認をしたい。

まずサカキ・アラタ。騎士団がマルコスから聞き出した内容からすると、お前はマルコスにいわれの無い疑いをかけられ、三週間の投獄と、その間に暴行も受けたそうだが、相違ないか?」


「はい。相違ありません」


「そうか。では、その投獄されている間に、ヴァン・エストラーダ。カリウス・クアドラス。モルグ・フェンテスの三名と結託し、治安部隊への攻撃を仕掛けた。これに相違はあるか?」


「・・・結託はしましたので、確かに戦う意思はありました。ですが、私はその日、拷問部屋へ連れて行かれました。座ると大きな重力がかかるという魔道具のイスに座らされそうになり、身を護るために反撃をしました」


「なるほど。確かに報告書にも魔道具のイスの事は書いてあるな。読む限り、マルコスがお前を拷問部屋に連れて行く日と、お前達が行動を起こす日が重なったように解釈できる。これは偶然か?」


「・・・いえ、カリウス隊員が色々調べた結果、私が拷問部屋に連れて行かれたら、もう手遅れと判断し、その日に行動を起こす事にしました」


「ふむ・・・そういう事か。そして、お前達はマルコス、アンカハス、ヤファイ、アローヨと戦ったというわけだな。なるほど、分かった。では、最後の質問だ。

サカキ・アラタ、お前はこの国最強のマルコスに勝ったわけだが、我々には今一つ信じられんのだ。

マルコス自身、敗北を認めているが、それでも納得ができん。それほど、マルコスの戦闘力はずば抜けている。だから、証拠を見せてくれんかな?光の拳というヤツを・・・」



大臣の指摘に、動揺が無かった訳ではない。あれだけ大勢の前で使った力だ。耳に入っていて当然だろう。


光の拳を見せて、これから先、この力を利用される事はないだろうか?

マルコスを倒した力だ。戦争でなくても、ディーロ兄弟のような襲撃者や、賊の盗伐、力を求められる事は出てくるのではないだろうか。


アラタが返事を返さず躊躇をしていると、大臣が苛立ちを隠さず言葉を発した。


「どうした!?まさか国王陛下の前で、力を見せれぬと申すか!?それとも、やはりお前がマルコスを倒したのはでたらめであったのか!?」




「アラタ・・・見せていいよ。大丈夫・・・私達が付いてるから。一人じゃないよ」

レイチェルのささやき声が、アラタの耳に入った。



「レイチェル・・・いいのか?」

「あぁ、多分こうなるだろうと思っていた。ここで見せない方が立場が悪くなる。なに、心配する事はないさ。私達は何があってもアラタの味方だ。また、戦う事があるかもしれない。それなら皆で戦おうじゃないか」


「・・・分かった。レイチェル、ありがとう」



アラタは立ち上がると、右手を前に出し力を集中させた。


アラタの集中力と共に、拳は少しづつ光を放ち始める。


「お・・・おお!なんと・・・それが光の拳か・・・」


カーペットを両側から挟むように待機していた、数十人の兵達からもどよめきが上がる。

壇上の大臣は、大きく目を開き、一歩、また一歩と階段を降り近づいて来た。


「これが、光の拳です。私はこの力でマルコス・ゴンサレスを倒しました」


大臣はアラタの前まで来ると、右の拳を纏う光を、慎重に観察するように眺めた。


「・・・うむ。もうよいぞ、確かに魔力は感じなかった。魔法ではない、我らの全く知らない力だ」


大臣はそう告げると、アラタに背を向け再び階段を上がり国王の隣に立った。


光の拳は一分程しか発動させなかった。

だが、この一分でアラタはすでに体力の消耗を感じていた。


「アラタ、体はどうだ?」

アラタが腰を下ろし、膝を付くのを見て、レイチェルが小声で聞いてきた。


「・・・少し疲れたくらいだ。動いてないだけマシだけど、その場で発動させただけでも消耗はするもんだね。レイチェルの言う通り、この力は使うべきじゃないと思う」



光の拳を隣で見たヴァンも、衝撃を受けていた。

マルコスとの決着の時、ヴァンは意識を失っていた。そのため光の拳を見るのは、今回が初めてだった。


なんという力だろう。

アラタから感じていた力の正体は、この生命エネルギーの塊のようなものだったのだ。


まだまだ全開ではないだろうが、それでも圧倒的な力を秘めているのが伝わってくる。


ムラトシュウイチは一撃でギャリー副長を倒し、他四名の隊員も一瞬で始末したとマルコスは話していた。


この光の拳を全力で打ち込まれたら・・・・・・


ヴァンは目を伏せた。

信じたくはなかった。だが、この力は本物だ。

ギャリー副長と四名の隊員は、この力で無残にも殺されたのだ。


アラタにとって、ムラトシュウイチは恩人だった。


だが、ヴァンにとってのムラトシュウイチは、仇となった。


胸中複雑だったが、今は治安部隊の再建を優先に考えるべきだ。そう自分に言い聞かせヴァンは一旦考える事を止めた。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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