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第二話 異世界ハローワークへGO!

「この中から、当てはまる特殊能力にチェックをつけなさい」

 ジュークフリードの前にあるカウンター越しには、巨大ウシガエルモンスターが青臭い息を吐きながら座っている。

 ここは、エアリシアにケツを蹴られてやってきた異世界ハローワーク。

 巨大ウシガエルは、ここの職員で、人間と同じように知能があり、服を着て喋っている。

 目の前に置かれたアンケート用紙には、①飛行 ②魔法 ③超筋力 ④三態変化(固体、液体、気体) ⑤切断再生 ⑥変身 ⑦透明化、と、人間にはあり得ない能力が列記されている。

 当然、ジュークフリードはどれも持っていないからチェックできない。

 異世界に転生すれば勝手にチート能力が備わっていると思っていた転生前の自分を殴りたい。

(なんだよ、この人間の無力さは……)

 ここでは、モンスターにも劣る存在。こちらでも、ダメクズヒキニートになりそうだ。

 ウシガエルは、手元の動かないジュークフリードを見て言った。

「何もないなら、チェックしなくていいよ。希望の仕事は?」

「えーと、週休三日で、月給百万以上で……、って、無理ですよね?」

 ウシガエルの淀んだ目を見て、希望を引っ込めた。

「俺に出来る仕事なら何でもいいです」

「じゃ、職業訓練校にでも入る?」

「職業訓練校?」

「ここに通っている間は、教育支援金が毎日支給されるから人気なんだよ」

 こっちにもあるんだと驚いた。

 とにかく、何かしらの能力を身に着けて自立しなければ。

(ただ、自立目的だけではつまらない。何か、もう一つ欲しい)と、ジュークフリードは考えた。

 職業訓練校で音を上げないように、何か目標が必要だ。

(卒業できたら、エアリシアにプロポーズするってのはどうだ?)

 ジュークフリードは、それなら頑張れそうな気がした。

 エルフのエアリシアは見た目がジュークフリードの好みにドンピシャだった。

 それも、居候を決め込んだ理由。

「やりたいです!」

「これ、パンフレット。よく読んで、やりたいコースに申し込みなさい」

「はい!」

 ありがたくパンフレットを受け取った。

(現在募集中のコースは……)

『ものづくりコース』『コンピューターコース』『生産設備管理コース』

(うわ! 元の世界と同じ!)

 そんな中、元の世界にはなかったコースが目に留まった。

『勇者コース。受講期間6ヶ月。定員30名』

「勇者コース!? え? 勇者って、資格職なの? それも、たった、6ヶ月でなれるもの?」

 ジュークフリードの驚いた声に、ウシガエルが覗き込んだ。

「ああ、勇者はいいかもな」

 以前なら6ヶ月でも長いと思ったジュークフリードだが、ここに通っている間はエアリシアの家を追い出される心配はなさそうなので、長いほうがありがたい。教育支援金も魅力的。働かずにお金の心配がいらない。公金最高!

「勇者コースでお願いします」

「定員に空きがあるか聞いてみよう」

 ウシガエルが電話で学校に問い合わせてくれた。

「勇者コース、空いていますか? 一名、お願いします。人間です」

 電話を切ると、ウシガエルが笑った。

「ラッキーだね。丁度辞退者が出て、一名分空いていたよ。明日からこの学校へ通いなさい」

「分かりました」

 勇者なら外聞も申し分ない。エアリシアにも自慢できる。

 ジュークフリードは、入校を決めた。

「ちなみに、働いていることを隠して教育支援金を受給すると3倍返しだから気を付けること。詳しくは入校案内書に書いてあるから、入校までに目を通しておくように」

「分かりました」

 不正、ダメ!

 それは元の世界と同じだ。

 入校案内書を受け取って意気揚々と家に帰ると、職業訓練校勇者コースの生徒になったとエアリシアに報告した。

 エアリシアも、「すごーい!」と、初めて尊敬のまなざしで見てくれた。

「これでこの異世界で堂々と生きていける」

 これが地獄の始まりとはこのときはまだ知らず、ジュークフリードは完全に浮かれていた。

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