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令嬢とお茶会2

ふと目が覚めると、見知らぬ部屋に寝ていた。ここはどこかしら。確か私、エリザベート様たちとお茶会をしていて、私が持ってきたお茶を飲んだら、突然息が苦しくなって…。



のどの渇きを覚え、呼び鈴を鳴らそうと思ったが、呼び鈴がない。


「だれか、誰かいる…?」


声を出すと、ドアが開いて、王宮の騎士が入ってきた。


その後、医師が呼ばれ、体の状態を見られた後、彼らは驚くべき話をした。

あのお茶会では私だけでなく、エリザベート様とオリヴィア様も毒を飲まされたらしい。それは私の持ってきた茶葉に仕込まれていたというのだ。



しかも私の連れてきた侍女が、「アレクサンドラお嬢様に指示されて、お茶に毒を入れた。お嬢様は王太子妃になれなかったことで、エリザベート嬢を恨んでいた。エリザベート嬢が死ねば、自分にまたチャンスがあると言っていた。」と証言したらしい。自分も毒を飲んだことについては、「疑われないように、ごく少量の毒を自分のお茶にも入れるように言われた。私はお嬢様のやったことが恐ろしくなり、騎士に本当のことを話した。」と言っていたそうだ。



一応まだ私の罪だと確定したわけではないし、宰相の内定の婚約者と言うことで、王都の郊外にある、貴人を幽閉するための塔の一室にいるらしい。ことがことなので、まだ私が暫定の犯人だというのは伏せられているようだ。因みにあのお茶会から2日経っていた。



エリザベート様とオリヴィア様何とか危ない状態は脱したが、まだ意識が戻らないらしい。



私は血の気が引いていくのがわかった。



わからないことだらけだが、状況が悪いことはわかる。伯爵家はどうなっているのだろう。公爵家は?閣下はどう思っているのだろうか。もし私がやったと本当に思われていたら…そこまで考えて、ぞっとした。未来の王族に害をなしたと思われている。場合によってはこのまま断頭台コースだ。



あれから2日経った。ここに入ってから、事件については何の進展も聞こえてこない。犯人だと思われているんだから当たり前か。お父様やお母様、クリストファーの顔が無性に見たい。心配しているだろう。











昨日の夜、鍵が掛かっているはずなのに、いつの間にかいつもの黒髪の子が窓際に立っていた。幽霊かと思って悲鳴を上げなかった自分を褒めたい。






「宰相様から…必ず助けるから、もう少しだけそこで我慢していて欲しい。私を信じて待っていて」





涙があふれた。閣下は私を信じてくれている。心の底から嬉しかった。目を閉じると銀色の髪の美しい顔が浮かんだ。



目を開けると、黒髪の子が心配そうに見ている。

彼の頭をひと撫でし、「ディミトリアス様に、お待ちしていますと伝えてもらえる?今日はあなたに持たせてあげられるお菓子がないの。ごめんなさい。」と言った。






「レヴィ…」


「え?」


「名前…レヴィ…」




どうやらこの子の名前のようだ。





「ありがとう、レヴィ。今度来てくれたときには沢山お菓子を用意するからね。気をつけて帰るのよ。」



もう一度さらりとした黒髪を撫でると、レヴィはわずかに頷き、音もなく窓から出て行った。






更に1日経った。2人も意識を取り戻したそうだ。閉じ込められているとはいえ、食事もきちんと出てくるし、侍女をつけて湯浴みなどもさせてくれる。暇つぶしの詩集なども差し入れられて、外に出られないこと以外不便はほとんどない。



しかし、何もする気が起きなくて、ぼんやりと鉄格子のはまった窓から外を見ていた。





…ディミトリアス様…





心細くなる度に、彼の言葉とふわりと笑った顔を思い出し、折れそうな自分の心を叱咤する。






すると、扉の外がにわかに騒がしくなった。不安になってソファに腰掛けたまま固まっていると、突然大きな音を立てて扉が開かれた。






泣きそうに眉を下げたディミトリアス様が、息を切らして立っていた。



ただでさえ白い顔は青みを帯び、目の下にはクマができている。それでも相変わらず美しい…そう思ってしまった。




「アリー…アリー…」






そう言うとあっという間に私のところまで来て、ぎゅっと抱きしめられた。

久しぶりで、温かいその感触に、私も彼にしがみつくと私の目からは涙が溢れてしまった。



「早くに助けに来てあげられなくてすまなかった。怖かっただろう?もう大丈夫だよ。帰ろう。」





そう言うと私を横抱きにして部屋を出て、馬車に乗り込んだ。




馬車の中でも横抱きだったが、とにかく安心してしまって、ディミトリアス様の首にきゅ、としがみついた。ディミトリアス様が、驚いたように息を飲むのが聞こえた。



優しく髪をなでてくれる。




「ディミトリアス様が、来てくれるって思ったから…」



そう言うとまた涙が出てきてしまった。




ディミトリアス様は切なそうな顔で私を見ると、唇に小さくキスをしてきた。



「よかった…貴女に何もなくてよかった…」



そう言いながら何度もキスをされる。今日ばかりは私も抵抗しなかった。





そのまま公爵家に着くと、玄関には前公爵夫妻と私の家族が待っていた。





お父様もお母様も泣きながら抱きしめてくださった。






その後、弟にも強く抱擁されたが、途中でディミトリアス様に引き離された。




前公爵夫人も手を取って喜んでくださったし、前公爵には「よく耐えた」とお褒めの言葉をいただいた。






応接間に通され、今回の全てがディミトリアス様から説明される。





お茶会に私が連れて行った侍女は、別の貴族からの間者であったらしい。娘を王太子妃にするために、エリザベート様を亡き者にし、王太子妃がダメでも宰相夫人でもいいからと、私のこともついでに排除しようとしたそうだ。エリザベート様が死ななくても、私が罪人として捕らえられれば宰相夫人の椅子が空くということらしい。






だが、元々その貴族に弱みを握られていた侍女は、良心の呵責に耐えかね、セドリックに全てを打ち明けて牢に入ったそうだ。





あとは証拠を揃えてその貴族を弾劾し、私を迎えに来てくれたらしい。




とにかく、全ては終わり、エリザベート様たちも後遺症もなく回復してきたということで、一安心した。





今日は疲れただろうからと、伯爵家も私もそれぞれ公爵家の客間に案内され泊まることになった。







確かに疲れた。不自由のない監禁生活だったが、毒を盛られたり、気を張っていて疲れたのだろう。まだ早い時間にも関わらず、引きずり込まれるように寝てしまった。




夢の中で、優しく髪を撫でられながら、何度も頰や額にキスをされていた。ディミトリアス様みたい…

そのまま私はふわふわとした気持ちで安心して眠りを貪った。

レヴィ「宰相様もどこにでもあらわれる」

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