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宰相閣下は打ち落とす

「お待たせして申し訳ありませんでした。アレクサンドラ嬢。」



ダンスパーティーの後、使用人にアリーを別の部屋に案内するように言いつけた。

急いでダンスパーティーの後始末をし、片付けの指揮はフィルに押しつけて、やっとアリーのいる部屋へとやってきた。





「いえ。こちらこそ、閣下からわざわざお越しいただきありがとうございます。侍女の仕事のお話でございましょうか?」





私が部屋に入ってきて驚いたのだろう。澄ました顔で一生懸命淑女らしく振る舞おうとしているように見えて、つい笑みが出てしまった。私のこよなく愛する美しい蒼い目が今度は近くで私を見ている。


前回の茶会でもそうだったが、邪険にされている様子はないので、私に全く興味がないわけではないようだ。





「閣下などと言わず、どうかディミトリアスと。」





「そんな。わたくしのような者に、恐れ多いことでございます。」




そんな他人行儀な顔をして。もっとよく顔を見せて。ああ、私の瞳の色と同じドレスだ。髪の宝石もそうだ。胸元のエメラルドと揃いのエメラルドで、私のカフスボタンとブローチを作らせたのだよ。いい案だろう?伯爵家の侍女、ライラとキャシーの発案だけどね。私のものだと知らしめるようで、とても気分がよかった。胸元は大胆に開いているが、首までレースで覆われていて禁欲的だ。髪をアップにしているからうなじが見えて、ドレスとのバランスは絶妙だ。侍女たちはわかってこのドレスにしているのだろう。





「侍女の仕事よりもっといい仕事を紹介させていただこうと思いまして。ご興味がおありでしょう?」





怪訝そうな顔をしている。警戒する子猫のようだ。そんな顔もとてもかわいい。手を取ると化粧していてもわかるほど、みるみる顔が赤くなった。





「か、閣下?あの、手を・・・」




「どうかディミトリアスと。」





つれないね、愛しい人。もう一度、言い含めるように言って、指先にキスを一つ。かわいいなあ。私のことで頭がいっぱいですという顔だね。大きな目がこぼれ落ちてしまいそうだ。





「あ、あの、ディミトリアス・・・様。なぜ・・・手を・・・」



段々声が小さくなってるよ。首まで真っ赤にしていけない子だ。そんな顔を私以外の他の男に見せたらだめだよ?今は人払いもしてあるし、私しかいないからいいけどね。



「仕事のことでしたね。ぜひあなたにお願いしたい仕事があるのですよ。」




「どんな・・・?」



声がもう消えてしまいそうだね。さあ、次の言葉を聞いたらもう逃げられないよ?逃がさないけど。






「この国の宰相夫人です。爵位としては公爵になりますね。」




準備はいいかな?





「私の妻に、なりませんか?」




アリーの目が潤んでくる。青い目が海のような深い色になった。そんなに目を潤ませて、私を試しているのだろうか。




「そんな可愛い目をしないで。我慢できなくなってしまうからね。」



キスくらいしてもいいかな。柔らかそうな唇だ。指先で軽く触れてみたが、思った通り柔らかかった。






「つ、つま・・・?」






「そうだよ。生涯辞めることは認めてあげないけどね。大事にするよ?やりがいのある、いい仕事だと思うよ?」



額に1つ、キスをする。イエスと一言言ってくれればいい。自分の心臓の音が聞こえる。私も未だかつてないくらいに緊張している。生まれて初めてのプロポーズだから。




「だから、お嫁においで?私のアリー」





きょとんとした顔もとてもかわいいね。緩んで締まりのないかもしれない自分の顔を見られたくなくて、アリーの両頬をそっと挟み、もう一度額にキスをする。

























「は、はい・・・?」





疑問符がついている気がするけど、言質は取った。ということにする。今日この場から私のことを好きになっていってくれればいいだけだしね。

まあここに来る前に婚約のお伺いの書状を持たせた使者をアルヴィ伯爵家に向けて出したから断らせないけれど。



公爵家からの縁談を、伯爵家では断れない。だからこれはお伺いという名の強制に近い。伯爵家もアリーも幸せにするから許してほしい。





「ありがとう、大事にするから。」




「えっ!?」


今度は頬を挟んだまま鼻先が触れそうなほど近くに顔を持ってくる。そのまま軽く唇にキスをする。夢のようだ。ずっとキスしてみたかった。もちろんそれ以上も。



アリーは固まっている。




もう一度、唇を合わせるだけのキスをする。


アリーは我に返ったようだ。



「え!?なっ!!?」




そのまま彼女を持ち上げて一緒にソファに腰を下ろした。もちろんアリーは膝の上。子どもの頃のようにはいかないので、横抱きだ。

もはや彼女は真っ赤になったまま口をぱくぱくとしてる。






「あの!わたくしにはとてもではありませんが公爵夫人など務まりませんわ。」



「大丈夫。君には十分な教養もあるし、社交的にも問題ないよ。ここまで残っているんだから。」




母上が手配した最高の家庭教師がついていたんだからね。マナー講師だったポヌール夫人は王族教育にも携わる人だしね。



「我が家では公爵家に嫁ぐだけの持参金もご用意できません!わたくしにも社交デビューの予定はございませんし。」


「持参金などいらないよ。デビューは公爵家が手配するから問題ない。」



「でも、私はそんな美しいわけでもございませんし・・・」



「印象的できれいな青い目も、可愛い鼻も、柔らかい唇も・・・こんなにかわいらしい顔をして、そんなこと言うのかい?十分じゃないか。」




今度は首にキスをする。




「っあ、」と小さな声が漏れた。理性が逃げ出してしまいそうだ。






「何も心配しないで、アリーはその体一つで嫁いでくればいいんだよ。君ははい、と言ったから決定事項だよ。諦めて。」






「どうしてそこまでわたくしを・・・」







私は微笑んで、目を白黒させているアリーをぎゅっと抱きしめた。

ライラ「現実にいたら完全にやばい人」

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