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宰相閣下の悪巧み  作者: 和泉 撫子
番外編
12/14

フィルの回想

義弟編が難産のため、息抜きに書きました。2人のその後をほんの少しだけどうぞ。

俺の親友であり、この国の宰相でもあるディミトリアス・ロブウェルとはかれこれ25年くらいの付き合いになる。



愛想が悪く、常にローテンションのロブウェルと陽気で交友関係も広い俺とでは、性格は真反対と言っていいほど違っているが、だからこそお互いに上手くいっているのかもしれない。




ちなみに俺は彼より先に結婚し、男の子3人の父親でもある。できれば可愛い女の子も欲しいので、もう少し上の子が落ち着いたらまた頑張ろうと思っている。





ロブウェルは昔から偏屈というか、割と自分の殻に閉じこもる奴だった。男ですらも、どきりとするような綺麗な顔で、成績はピカイチ。しかし全くと言っていいほど表情が動かない。特に彼の兄上が亡くなった後はショックもあっただろうし、突然跡継ぎになることが決まったストレスもあったのだろう。あまりにも表情がなくなり人形のようになってしまって、それはそれは心配だった。




社交界に出てからも変わらず、「氷の魔王」だの「雪の貴公子」だのと寒そうな感じの二つ名をつけられていた。果ては、あまりにも女性を袖にしすぎて男色疑惑まで持ち上がっていたのだ。しかもメインのお相手は俺。思い出しただけでも背筋がぞわぞわする。まぁその噂が縁で妻と出会うことができたので、多少はいいこともあったと言えるが。







そんな独身街道まっしぐらかと思われたロブウェルだが、何と結婚すると言い出した。しかも10年近く見てきた相手だという。

驚きすぎて、ロブウェルに嫌な顔をされながらも根掘り葉掘り聞き出したところ(多分俺でなければこんなに話してはくれない)、惚れた当時5歳ほどの幼女だそうだ。俺の親友は犯罪者予備軍なのではないかと不安になったが、一応彼女限定だそうなので、様子を見ている。





アルヴィ伯爵家と言われても、俺の頭には当主の顔が出てこなかった。それもそのはず、アルヴィ伯爵家はかなりびんぼ…いや、慎ましやかな貴族らしく、ほとんど社交の場に出てこないそうだ。





ロブウェルはそこの長女にずっと懸想しているらしい。あれこれ裏でやっているらしいが、彼に目をつけられて思い通りにならなかった奴はいないので、きっとそのうちアルヴィ伯爵令嬢と結婚するのだろう。





ロブウェル公爵家は王家に次ぐ高い身分だし、アルヴィ伯爵家から嫁をもらうというのは周りも口出してくるだろうし、大変だろうな。



































と、他人事(ひとごと)だと思っていた時もありました!!!


10年もなんのアクションも起こさなかったロブウェルは、王太子殿下の婚約者の話が出た途端に動き出し、あっという間に王太子の婚約者選抜でアルヴィ伯爵令嬢を自分のものにしていた。


しかも、王太子殿下の婚約者候補に最後まで残れるような淑女中の淑女として。アルヴィ伯爵令嬢は(偶然だろうが)当時の次期王太子妃で現在王妃陛下であるエリザベート嬢とも、社交界の流行を作り出し、世論を動かすとまでいわれるオリヴィア嬢とも大の仲良しであった。もともと王太子殿下の婚約者候補に最後まで残った他の令嬢は次代の貴族女性のトップに君臨するであろう顔ぶれである。実際に現在、社交界は王妃陛下、ロブウェル公爵夫人、ファーガソン侯爵夫人(オリヴィア嬢)、スペンサー侯爵夫人の4人が頂点となり動いている。ロブウェル公爵家にとってこの上なく素晴らしい当主夫人である。



さらにアルヴィ伯爵令嬢の実家にも干渉し、次期当主に力をつけさせ、アルヴィ伯爵家自体を有力貴族に押し上げる準備をしていた。



ロブウェルの本気が垣間見えて、アルヴィ伯爵令嬢を気の毒に思ったものだ。


そして彼女の箔付けに自分も巻き込まれるとは…







ロブウェルの新婚期間には、これでもかというくらいロブウェルに仕事を振られ、本当に過労死するかと思った。



ロブウェルは新婚期間は5年は必要で2人で過ごす!と言っていたのだが、そんなに新婚期間を取られたら俺が死ぬ!ということで、なんとかアレクサンドラ嬢に頼み込み、彼女の「そろそろあなたに似た子どもが欲しいの」と言う鶴の一声により、新婚期間は半分ほどになった。



そもそも、公爵家としては早く後継を作らねばならないので断じて俺だけの願いではない。






そうして彼らの結婚から2年半ほどしてできた子は、おっそろしいほどにロブウェルに顔も中身も似た女の子だった。





まだ12歳ではあるが、すでに傾国の美女とも言うべき美貌を誇る長女をはじめとして、今のところロブウェル公爵家は二男一女に恵まれている。




そして3人ともロブウェルの血筋を感じさせる、それはそれは美しい顔立ちであるのに、全員母親譲りの青い目を持つところにロブウェルの執念を感じて大変怖い。


血筋、美貌を兼ね備えた女版ディミトリアス・ロブウェルである長女は間違いなく適齢期に入れば国中の争奪戦になるであろうし、名門ロブウェル公爵家を継ぐ長男、叔父である現アルヴィ伯爵クリストファーの再来と言われる頭脳を持つ次男と、やたらと目立つ三姉弟である。そして当主夫人は現在第4子を妊娠中であり、あと5年もするとロブウェル公爵家は社交界の話題をかっさらうようになるだろう。




すでに上2人はあちこちの貴族から縁談の打診が来ているそうで、時折ロブウェルが鬼の形相で書簡を握り潰しているのを知っている。同時期に生まれた現王太子との縁談が長女との間に出たこともあるが、言い出した国王陛下がその後真っ青な顔で発言を取り消していたので、ロブウェルと陛下の間で何某(なにがし)かの話し合いがなされたのであろう。夫人を溺愛しており、その子どもたちもとても大事にしているロブウェルはすぐに子どもたちを婚姻させる気はないらしい。



と、まあ色々と思い出してはきたが、総じてロブウェルは面白い親友である。特に夫人を愛しすぎて顔面崩壊している様はとても笑える。まだまだ話題を提供してくれるだろう。さて、40近くなり、あまり無理できない体になってきたので、休憩もほどほどにして仕事に戻るかな。

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