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100万回生きる猫  作者: 切り絵の人
1/1

砂漠

吾輩は猫である。名前はまだない。

前世は金持ちの猫に生まれ変わりチュールを腹いっぱい食べたいと願ったただのノラの猫であった。

しかし生まれ変わった先にあったのは家電製品など何もない石造りの建物とカラカラに乾いた空気であった。


現実は無情だ。


今の両親は砂色な毛並みが美しいスラリとした尻尾の生えた二匹の夫婦であります。そして兄弟たちも皆、砂色を身にまとった幼猫(ただしあたしより大きい)。


残念なことに私だけ仲間はずれの白靴下をはいた黒猫だったのだ。(しかも尾っぽも野良猫だった頃と同じように短い)

はいはい、ショックショック。


そんなことにもへこたれずあたしはぐんぐん成長している。だが兄弟のほうが大きくなるのが早い…。

何ということでしょう!

ま、まぁ、いいのです。あたしも、立派な成猫だったのでそんぐらいでは怒らないのです。

最近母猫が喋っていることの意味がわかり始めました。

その内容は、「ヘビの分布」から「ボス猫の恋愛状況」と様々です。


母猫の話を聞きつつふわふわのお腹に包まれているといきなりつまみあげられた。

「フシャアアアアアアアア(我が娘よ!)」

『 ははさま!ははさま!いきとうありません!』

しかし、つまみ上げてきた人間にあたしたちの言葉が通じるはずもなく今まで暮らしていた所から連れ出されてしまいました。

連れてこられたのは知らない匂いのする広い場所。


「大儀であった。下がれ。」


ふんぞり返って座るオスの人間。の後ろに座っているメスの人間がソワソワとこちらを見ているがあたしはマーキングに忙しいのです。


……むぅ、ちょっとだけ、餌のためなんですからね!


「見てください!愛しき王よ!自ら我がもとに!」

「うむ、よかったな。我が寵姫よ」

「愛しき王よ!素晴らしき王よ!名前をつけましょう!」

『 何なんです!?このヒラヒラ…テイッ

あっ逃げるな!トオッ』

「バステト様から名前を借りましょう」

「それは良い考えであるな…」



ふーっ、ふーっ、あたしはヒラヒラに勝ったのです!辛い戦いでした…!

「バスティート、きょうからあなたの名前はバスティートです。」

……?

これは…もしや…憧れの飼い猫生活!

どうやらこの人間のメスがあたしの飼い主の様子。

『あるじさまっ!』

ゆったりとした長いふわふわした椅子に座っているあるじさまに駆け寄ると2人は嬉しそうにしていました。


〜数年後〜


『 こっちに来ないでくださいませーーーっ!』

ウトウトと微睡んでいるあたしと、あるじさまとの至福の空間にいきなり入ってきやがった猛獣共。

あたしは怒っているのです!

撫でるのが下手くそな、イトシキオウとか言うやつにも!毛繕いが下手くそなデカいシマシマの猫のような奴らにも!


今日という今日こそは引っ掻いてやるのです!


『シマシマ猫ども!お覚悟!』


プラーンプラーンです。

猛獣に首根っこをかまれぶら下げられています。

走って近づいたところまでは良かったのですが猛獣がとても大きかったことを忘れていました。

あたしの攻撃が足にしかあたりません!

『 あっーやめてくださいっシマシマ猫!イトシキオウに渡すのはぁーーー!』


シマシマ猫のやろーにイトシキオウまで運搬されました。

撫でたら噛みますよ!?撫でないでくださいね!?

『 力が強すぎます!あるじさまみたいに優しく愛をこめて撫でてください!』

むぅーーー!指先を甘噛みしてやりました!

「!バスティート我に噛み付くか。やんちゃよな!」

うるさいです!

手から抜け出しあるじ様のところに行くとイトシキオウの所にリリースされました。裏切りましたね?



そんなことするなら家出してやります!

逃げられる場所ぐらい知ってるのです。


~~〜~~~〜~~



久しぶりの外です。

空気はカラカラですし太陽の光が重いです。


もうお家に帰りたくなりました。


フニャア!

『 触らないでください!』

男達が私の首をつまみどこかに連れていきます。

「真っ黒な猫だったらバステト神のお使いって言って売れたのになァ」

「ひゃっひゃっひゃっ

そりゃ違いねぇ」

「それに何だこの短いしっぽ

どっかに挟んだのか?」


そうして連れてこられたのは人間がいっぱいいる建物の中。

「この猫は明日のオークションだな」

「高く売れそうか?」

「あぁ」


『 あるじさま…シマシマ猫…イトシキオウ…』

寂しくて泣きそうです。

おうち帰りたいです。なでなでに文句言ってごめんなさい…。


「こんな所にいたかバスティート。

我が妃も心配しておる。帰るぞ」

『イトシキオウ…!?』

さっきまで建物だった場所は瓦礫になり人間は縄で結ばれていました。

???なんで?




帰るとあるじ様はあたしのことを怒ったあとヨシヨシなでなでしてくれました。

シマシマ猫達も毛繕いを念入りにしてくださいました。

幸せなのです!




そんな幸せもいつかは終わります。あたしはもうすぐ死ぬでしょう。

猫ですもの死期ぐらい分かります。


猫ならば人に隠れて死ななくてはなりません。しかしあたしはあるじ様たちに見守られて死にたいと願ってしまうのです。



「バスティート!バスティート!死なないでください!」

あるじ様の声が聞こえます。

お別れの時です。

最後の力をふりしぼり頭をあるじ様の手にスリスリさせてから私は深い眠りにつきました。

















【おやこの魂は…】







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