龍と魔法と狼と-1
２人が龍と出会って、２週間が経った頃、ルゥとメイは毎日龍の元へと通っていた。
だが、今日は２人に加えて、お客が龍の元へと訪ねたのであった。
「おーい！ドラゴン！」
「こんにちは！ 龍さん」
「あァ、いらっしゃい……。 その子たちはなんだいィ？」
「この子たちは、初めて龍さんに会った日の、あの狼さんよ」
狼は頭を垂れながら、ルゥの手をぺろりとなめる。それのに倣って、４匹の仔狼もルゥの手を母狼と同じくルゥの手を舐める。
理由は母狼の右前足にあった。
「こいつを治してやったんだ！」
ルゥは胸を張りながら、狼のその包帯の巻かれた右前足を指さす。
狼は申し訳なさそうな表情をしながら、再度ルゥの手を舐めたのだった。
「ルゥったら、”俺が治してやるんだ”って言って、薬を塗ろうとして何度も噛まれたのよ？ 本当にお人好しよね」
「昨日、やっとちゃんと走れるようになったんだ！」
「ルゥ、毎日ご飯あげてたもんね。今じゃこんなに懐いちゃって」
龍は目を細めながら、ルゥとメイ、そして狼たちを一通り見渡すと、大きなため息を吐く。
「あんまり感心しないねェ、ルゥ。アンタ、自分のご飯を分けていたのかィ？」
「そうだよ！」
「アンタはまだ子供なんだから、ちゃんと栄養を取らなきゃ駄目じゃないかィ。もしかして、今日も狼たちにご飯を分けたのかィ？」
「うん！」
ルゥのその元気の良い声とともに、そのお腹からグゥという低い音が洞窟内に響いた。
咄嗟にお腹を押さえたルゥであったが、もう遅い。しっかりとその音は龍の耳へと届いてしまったのだった。
「はぁ、まったくねェ……」
龍は再度、ため息を吐くと何かを思案し始める。
「考えたんだけど、アンタたちに魔法を教えてやるさねェ」
”魔法”という言葉を聞いた瞬間、ルゥとメイは目を輝かせる。
「ねぇ、本当！？ ありがとう、ドラゴン！」
「魔法なんて、王都の人たちしか使えないと思っていたのに……！」
「まぁ、アンタたちがここに来るまでに、何かに襲われたら目覚めが悪いからさァ。後は、２人で狩りが出来るようにと思ってねェ」
そう言うと、龍はその爪先を２人に向ける。そしてその指先から赤い蒸気のような物が立ち上っていくのであった。
