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第98話 砂の城


 連続投稿です。明日も投稿します。

 100話まであとちょっと

「まあ何というか。まさに砂の城だな。」


「ですよねぇ…」


 俺は再び王城に登城し、国王と新しく作っている娯楽施設の話し合いをしていた。その最中、俺がこの国で一大商会になった話をしていた時に王から言われた苦言である。俺のミチナガ商会は砂の城、まさにその通りである。


 俺がこの国で一大商会になれたのは単に競争相手がいなかったからである。俺の前にいた大規模な商会はこの国の先行きのなさを知って、どこも他国に逃げ出した。先見の明のあるちゃんとした商会ならば正しい判断である。


 そんな中で俺はこの国を立て直して大商会になった。この国から去った商会は再びこの国に戻ろうにも関税が高くてなかなか入国できない。だからこその俺のミチナガ商会の独走状態なのである。しかし逆に考えると関税が引き下がれば他の商会が再びこの国に参入して来て俺の立場は危うくなる。


 俺のこの国の功績を鑑みても、持って1年かそこらだろう。潰れることはないと信じたいが、俺がこの国で独走状態にいれば他の商会は面白くないので一致団結して潰しにかかる可能性もある。その際にそれを防ぎきるだけの力を俺は持っていない。


 その力というのは守るための武力でもあるが、商人としての商売力でもある。俺の店は品物だけは色々あるがこれという強みがない。何かうちだけのものを取り扱えれば良いのだが現状ではそれが思いつかない。


「正直なことを言うと、この国に安住しようかと思っていたのですが、正直今のままでは厳しいですもんね。やっぱり旅を続けて色々できることを見つけていきたいと思います。」


「まあお主はまだ若いからいくらでもやりようがあるだろう。旅をすると言うのは良い人生経験になるはずだ。」


 俺は国王と談笑し、しばらくした後に別れの挨拶を済ませる。すでに出発の準備は進んでおり、3日後にはこの国を発つ。国王と会うのはこれが最後だろう。それにしても我ながら国王と談笑できるようになるとは大したものだ。


 普通の一般庶民ならありえないことだ。例えるなら総理大臣と一対一で話すようなものだからな。いや本当にマジでそう考えると自分のやっていることのすごさが改めて身にしみる。随分と出世したものだ。


 俺はミチナガ商店の第2店舗に帰って来た。最近は本店舗の方が忙しくてゆっくりとできない。本店舗は業者というか店を経営している人々が買い付けに来るので割と騒がしいのだ。それに比べてこの第2店舗は一般人を対象にしているのでまだ静かだ。


 第2店舗の二階に上がりベッドに横になる。ここ最近は嫌な夢を見ずに静かに暮らせるようになって来た。まだ時折フラッシュバックのようにあの時の光景を思い起こすこともあるが、もうカイの件から一月半以上が経過している。うまい具合に時間がこの俺の心の問題を解決してくれて行っているようだ。


 これでようやく何も嫌な気持ちにならずにスマホをいじれるというものだ。スマホを操作しながらブラント国のミチナガ商会の本店舗と第2店舗、さらに街道の整備に当たっている使い魔と連絡を取る。こうして寝っ転がりながらも仕事の様子がわかるというのは実に素晴らしい。


ミチナガ『“どうだみんな順調か?”』


ブラン『“本店舗の方は異常なしです。売上もなかなかのものですよ。”』


ラント『“第2店舗の方も問題ないです。”』


ランファー『“牧場の製作は多少難航していますが概ね順調です。冬前に屋根と壁を作って内装を冬の間にゆっくり作っていきます。”』


ブラドウ『“道路の方も異常なし。1000人もの大人数だから工期が早く終わると思ったけど、道路の作りを石畳にしたから工期が伸びていい感じ。”』


ミチナガ『“ご苦労様。その調子でよろしく頼むよ。何か面白いことあったら教えてね。”』


 何も問題はないな。仕事が順調そうで何よりだ。ああ、この4体の使い魔は新入りなのだが、仕事を任せたのでわかりやすいように名前をつけておいた。ブランはブラント国のミチナガ商会の本店を、ラントは第2店舗を任せている。名前もわかりやすいようにブラント国の前3文字と後3文字を使っておいた。


 ランファーはブラント国の牧場を任せている。今は工事中だが、完成の暁にはランファーにこの牧場経営を任せる。名前はブラント国の中2文字と農家を表す英語のファーマーから取った。わかりやすいようにしたのだが、これがいい感じになっている。


 ブラドウはブラント国の道路整備ということでつけたが、こちらの名前もなかなかいい感じになっている。こいつは道路が完成したのちはどうしようかと思ったのだが、牧場経営の要員に使い魔2体置いておくことにした。牧場はなかなか忙しそうだからね。


 全員安直な名前かもしれないが、これから先も使い魔が増えていく可能性を考えたらなるべく安直な方が良い。被らないように気を使うのも大変なのだ。それに変な名前にならないようにしないと不機嫌になるからな。ブラドウは初め、道はミチと読むので俺の名前とお揃いにしてブラミチにしようとしたが明らかにショックを受けていたのでやめて置いた。まあ確かにブラミチは変だな。


 それから残り6体の使い魔だが、4体のノーマルの方は2体だけ新しく名前が付いている。その2体はすでにやりたい仕事を見つけて新しく始めている。今もせっせと仕事をしているようだ。


シェフ『“そこはもっと力を抜いてだな…ああ、そんなに押したら魚が潰れちまうぞ。”』


ウオ『“す、すいやせん師匠。”』


 新しく入った使い魔の1体はシェフの元で修行を積んでいる。シェフと同じく料理人…なのだけれどちょっと違う。ウオは魚料理専門で覚えていくようだ。魚専門だから名前もウオだ。しかも職業は弟子というふうになっている。これはちょっと新しい。


 新しい職業につく場合、先にその職業をやっている使い魔に弟子入りするという方式のようだ。だからあの親方の元にも一人弟子が入っている。いまもなかなかにしごかれているようだ。


親方『“おい!こっちのがまだ切れてねぇぞ!”』


ノコ『“す、すいません親方。”』


 大工は大忙しだな。木材をルシュール領で買えるため、毎日のように家の増築を行っている。さらに新しく使い魔が仲間になっても問題ないようにすでに家を建てている。毎日そんなことをしているおかげで随分と腕をあげたように思える。ただ程々にしてもらわないと木材の買いすぎで金がなくなる。


 まあ腕を上げておけば後々役に立つのである程度は好きにやらせておこうか。そう思い新しくできた家を見ていくとその庭で一人鍛錬を積む使い魔がいる。この使い魔はスーパーレアの使い魔だ。すでに名前もつけてある。使える能力持ちだ。


ミチナガ『“今日も精が出るな。なかなかキレが良いんじゃないか?”』


ガーディアン『“いえ…自分はまだまだです。”』


 この堅物な使い魔はガーディアン。一応俺を守る騎士だ。能力持ちでその能力は触れているものを堅く強化することができる。つまり防御においては今いる使い魔の中ではピカイチだろう。しかし使い魔は小さいので正直そこまで役には立たない。


 まあちょっとしたのならなんとかなるとは思う。ちなみに性格も堅物だ。そんなとこまで硬くする必要はないのだけれどね。しかし話してみるとなかなかに熱い漢で良い奴だなと心からよく思う。


 それからもう一体のスーパーレアの使い魔にも名前を与えている。今ぐらいの時間ならおそらく森の中だろう。俺が課金してガチャを回して手に入れた木々はだいぶその面積が広くなったので森という扱いになっている。そこには木々だけでなく様々な植物も生えてくるようになった。


 まあその植物を生やせるようになったのも植物の種を課金したからなんだけどね。木々を森という扱いにできるまで増やすことによってその中で育てることができるようになったのだ。簡単なようだが実に大変だ。森を作るのには金貨1000万枚、さらに植物の種を解除するのに金貨がまた大量に…元がとれるようになるのは何年先のことだろうか。


 そんな森の中を覗くとあちらこちらに白い塊が見える。おそらく暇そうな使い魔や眷属たちを集めて採集をさせているのだろう。そんな中を探すと一人だけフード付きのコートを着た使い魔がいる。あれが新入りの最後のスーパーレアの使い魔だ。


ミチナガ『“精が出るな。良い薬草は手に入ったか?”』


ヤク『“おお、これはこれは我らが王ではありませぬか。首尾は上々でございます。簡単な傷薬などはすでに出来上がっております。”』


 ヤクは薬師の職業についている。家も森の中にある怪しげな建物だ。実に薬師という職業にとって雰囲気が良い。そんなヤクを手に入れたおかげで薬師用のアプリが解放され…ると思ったのだが、そういうことにはならなかった。おそらくだが、新規アプリを手に入れるためにはウルトラレアの使い魔が必要になるのだろう。


 しかし薬を作ればそのレシピは手に入る。そのうちその手のアプリは手に入るのだと思う。それまではしばし我慢だ。薬師は今後の旅には必須とも言える職業なので課金して応援できるなら応援してやりたい。


 それと残り2体のまだ名前も決まっていない使い魔はポチの後について行って様々なことを学んでいる。この2体は何をやりたいか模索中のようだ。しかしそれで良い。そんな焦ってすぐに決める必要はないのだ。そうしてくれるといざという時にこんな職業のやつが欲しいとかってなったら助かる。


 さて、これでとりあえず新入りの使い魔は全員か。元からいたやつも一生懸命働いているようだ。それに今はサクラの飛行機の整備場の建設も行なっている。まあ難航しているようだけど。


 整備場には金属製品が多数必要なのだが、俺にはまだ金属を扱えるアプリはドワーフの鍛冶場のみだ。しかもこのアプリはでかいものを作るのは簡単だが細かいのを作るのはすごく苦手だ。というか細かすぎるのは作れない。よって大枠のようなものは作れるが細かいのは無理だ。


 それに金属も足りない。製鉄所を急ぎ作りたいのだが社畜の科学力ではまだまだらしい。できれば多くの金属を扱えるような溶鉱炉にしたいのだが、当分先の話だろう。


 とりあえず使い魔たちの確認はこの程度にして俺もアプリで作業を手伝おう。そう思っていると一件の通知が来た。気になったのでその通知の発生源へと移動する。


「な、なんか立派になってる。」


 俺が来たのは以前眷属の祠と呼ばれていた眷属を生み出していた祠だ。簡単な作りだったそれはなぜか立派な建物になっている。その前には達成感に浸っている親方とノコがいた。


ミチナガ『“何これ、改装したの?”』


親方『“改装というよりアップグレードっすね。今では眷属の社になったっす。”』


ノコ『“効果もアップして眷属が最大4体まで出せるようになりました。”』


 まさかの眷属の数まで増えたか。使い魔一体につき一体の眷属が増えたってことは18体増えたのか。これはかなりでかいな。作業効率もかなり上がるだろう。これは嬉しい報告だ。そういや親方って弟子と話すときは普通なのに俺と話すときは、っすってつくんだな。もしかしてそれが丁寧語とかだと思っているのかな?まあいいんだけど。



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