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第89話 後日談


 とうとう平成最後の大晦日です。来年からの年号が楽しみですが平成が終わるというのは寂しいものがありますね。

 では後日談をどうぞ。


 ミチナガが悪王カイを桜花にて爆破してから3週間が経過した。この3週間は激動の3週間だった。カイの洗脳魔力の供給が切れ、その効果が切れはじめたのはおよそカイの死後3日後から。我に帰った人間は今までの自分の行いに大いに苦しんだ。


 カイの洗脳の最悪な点は洗脳中の記憶が残るということだ。カイの洗脳が解けた人間の反応は様々であった。発狂するもの、嘆くもの、怒り暴れるもの、訳も分からなくなり笑うもの。本来はそれを王の兵士が諌めるのだが彼らも被害者だ。


 兵士たちはどうすることもできずに暴れまわっている。国が乗っ取られたというのに何もできなかった自分の弱さを恥じて。しかし一番の被害者は彼らではない。一番の被害者は女性たちだ。


 カイに弄ばれ、自ら奉仕することまでした。そんなこともよく覚えている。何人かはすでにそのことを苦にして自殺した。生きているものも心が壊れてしまったものが多い。特に若い娘や結婚している女性には辛い出来事のようだった。


 国中で暴動が起こった。カイの洗脳が解けて多くの人間が死んだ。軽く100は超えている。1000にも届きそうな勢いだった。しかしそれ以上の死者を許すわけにはいかなかった。それ以上の暴挙を許さないと決めた男がいた。


 カイにより幽閉されていた国王が帰って来たのだ。幽閉中に体を壊していたがすでに治し、錯乱する兵をまとめ上げて国中の鎮静に当たらせた。その手腕は見事なものでものの2週間ほどで完全に沈静化させてしまった。


 今は国中で復興作業が行われている。本当ならばまだまだ嘆きたいところだが、本当の国王の言葉で目が覚め、皆過去を忘れようと必死に働いている。この調子ならば1月ほどで元の状態まで戻るだろう。


 そんな街の中、荷物を持った冒険者たちが歩いている。マックたちにミミアンだ。


「それにしても未だに信じられないな…洗脳されていたなんて…記憶はあるけどよ…」


「あなたたちはこの国に入って間もなかったからね。そんなに被害もなくてよかったじゃない。被害にあった女性が多いから教会に信者が多く加入しているらしいわ。神に頼んでも忘れないのよ。」


「俺も忘れたいっす…こんなことを姉御にも知られたなんて……次会ったら殺されるっす…きっと…」


 ケックは本気で真っ青な顔をしながら震えている。というよりマックたち全員が恐怖で震えている。何が何でもメリリドと会うのがいやなのだろう。


「まあ大丈夫じゃない?そのメリリドも依頼を半分失敗して合わす顔がないから街に戻るって言っていたし。依頼料もいらないって言っていたらしいわよ。」


「姉御は人にも厳しいけど自分にも厳しいからなぁ…だからこそ人がついて来たわけだけど。」


 マックたちは荷物を持ったままホテルへと入っていく。そのホテルはこの混乱の中でもなんとか何事もなく生き残った高級ホテルである。マックたちはそのホテルの一室へと入る。


「おう、薬の追加持って来たぞ…ってこいつらまだやってんのか…」


「あ、すまんな。ここに置いといてくれ。そいつらもよっぽど嬉しかったんだよ。俺が死んだらそいつらも死んでいたわけだしな。」


 そこには全身包帯まみれのミチナガが寝ていた。そしてその横では使い魔たちが今回の功労者である新入りのサクラと、今回もっとも輝いたMVPのピースを胴上げしていた。


ポチ『“それではもう一度…わっしょーい!わっしょーい!”』


シェフ『“本当によくやった!よくやったぞぉ!!”』


 かれこれ数日間、毎日のように何かとかこつけて胴上げをしている。毎日のように使い魔たちは宴会騒ぎだ。ミチナガも初めは寝るときにまで騒がしくしていたので注意をしていたが今では注意する気も失せていた。


「それにしてもよく生きていたもんだな。かなりの大爆発だったんだろ?」


「俺も説明されるまでは信じられなかったけどな。本当に死んだものだと思った。全く…不思議な奴らだよこいつらは…」




 事の始まりは桜花が滑空を始め、こちらに狙いをつけ始めた時まで遡る。その時、スマホの中では誰もが諦めて、人生…もとい使い魔生を振り返っていた。ただ一人の使い魔を除いて。


ピース『“やだ…絶対に嫌だ!僕たちは何もできずに終わるのなんて絶対に嫌だ!”』


スミス『“そうは言ったって…もうどうしようもない。桜花はすでにこちらを狙っている。もうやれることはないんだ。”』


ピース『“だけど…だけど!きっとまだ何か…そうだ!”』


 ピースはふと頭に今飛んできている桜花のことを、それに乗っているサクラのことを思い出した。サクラが現れた時に言っていた興味深いこと。わずかな可能性でしかないがそれにかけて見るしかない。


 ピースは倉庫の中にしまわれていた魔石を取り出す。そしてその魔石を食べ始めた。ミチナガが魔道具の魔力供給で余った分だが、無駄に多く集まっていた。魔道具は回収されても魔石はそこまで危険視されなかったのだろう。ミミアンたちとの作戦を立てている間に他の仲間が随分集めてくれた。


 ピースはそれを一つ残らず食べきる。使い魔の体内に摂取された魔石は徐々に分解されていき、魔力へと変わる。かなり大量の魔力がピースの中で溢れ出している。


『使い魔ピースの魔力許容値が一定量を超えました。魔力能力が獲得されます。魔力能力の獲得に成功。魔法を獲得しました。』


ピース『“これなら!”』


 ピースはスマホから勢いよくとびだす。すでに桜花のロケットエンジンに点火が始まっている。カイはすでにその場から離れていっている。それでもカイの残留魔力によりピースへの洗脳が始まる。


 しかしピースも魔力を保有している。その魔力によってなんとか洗脳されずに耐えることに成功した。洗脳に耐えられたのもミチナガがカイの魔力を洗脳以外の自然回復で使用させ、魔力量を減らしたおかげだ。


 ピースはスマホからでてくる際に残り1本の鎖の拘束具を取り出していた。その拘束具でピース自身とミチナガ、さらにその場にいた兵士をまとめて拘束する。その間に桜花はこちら目掛けて突撃を開始していた。


ピース『“敵進路上から右に移動!”』


サクラ『“了解!”』


 桜花は僅かながら右へと進路を変える。桜花はただの滑空兵器ではない。パイロットが乗っているため、ある程度の方向転換は可能なのだ。しかし高速で移動しているため大きくは変更できない。


 しかしカイが走った程度の距離ならば十分追うことは可能だ。物の見事に桜花はカイへと直撃する。そしてその爆風はこちらにも届き、熱風や爆風で飛散する物質でミチナガたちも巻き添えを食うはずだった。


 しかし桜花が爆発したその瞬間、ピースの魔法が発動する。


 ピースの魔法能力、それは他者への自己能力の付与。しかも魔力量が少ないので触れている相手限定の能力である。そんな能力はなんの意味も持たないはずだった。それがピースの能力でなければ。


 ピースの自己能力。それはFF無効、ありとあらゆる攻撃を仲間からの攻撃ならばその一切を無効化する能力。そしてこの攻撃は仲間のサクラが発動させたものだ。つまりピースの効果の対象となる。


 サクラの桜花が起こした爆炎と爆風、さらにはそれに伴う飛散した物質のダメージ全てを無効化する。今ピースとピースに触れているミチナガ、さらに洗脳されている兵士は爆炎と爆風の中にいるはずなのになんの影響も受けずにただ鎖に縛られたまま座っている。


 一瞬で肌を焼き焦げさせ、肉を炭化させるような爆炎はまるでコタツの中にいるようなぬくぬくとした暖かさで心地よい気分にさせる。全てを吹き飛ばすような爆風は森の中の爽やかな風のように。押し寄せる土砂や桜花の破片は散りゆく桜の花びらのように肌に触れることすらなく彼方へと過ぎ去る。


 ピース、その力は仲間に対しては絶対である。たとえ仲間がこの世界を滅ぼそうがその影響を一切受けることはない。たとえこの星が滅びようともそれが仲間によるものならばその影響を一切受けない。対仲間の絶対無敵の能力である。


 ただし、


ピース『“の、能力切れちゃう……”』


 その能力は絶大なものであるため今回の魔石程度の魔力量では残りなんとか10秒…いや20秒というところか。このままではたとえ今助かっても能力が切れた瞬間爆炎の残った熱でミチナガが死にかねない。


ポチ『“みんな急げぇ!生き残るぞぉ!”』


使い魔一同、および眷属一同『『『おお!』』』


 しかしピースは一人ではない。大勢の仲間がいる。一人では無理かもしれないが仲間がいればこの窮地からも脱することができる。使い魔たちは必ず間接的にピースに触れておく。そうすることでこの爆心地でも十分に動くことができる。


 そしてなんとかピースの魔法が切れる前に危険域から逃げ切ることに成功したのだ。その後はメリリドたちと合流、すでにアクラとジャイリスの無力化には成功したようだ。洗脳されて能力が十全に引き出されていなかったらしい。


 その後は怪我を治しながら、洗脳が解ける兵士たちをなだめながらゆっくりと帰っていった。帰る頃には街での暴動もひと段落ついていたらしい。そしてカイを倒したことを大々的に発表し、ミチナガはこうして高級ホテルの最高ランクの部屋へと泊まることができたのだ。


ポチ『“もういっちょ行こう!せーの…わっしょーい!わっしょーい!”』


ピース『“えへへへへ…だけどそろそろ酔ってきた…お、おろしてぇぇ…”』


スミス『“わっしょーい!そんなこと気にすんな!”』


シェフ『“吐いたらそのぶん俺の飯が食えるから安心しろ。わっしょーい!”』


「お前らそろそろやめてやれよ…」




 終わると思わせて終わらせないやつです。私の書く元気があるうちは続きますよ。


 どうせなので今日の年の変わり目にもう1話投稿します。今後ともこの作品を宜しくお願いします。


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