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特別編 ミチナガとリリーの結婚式 結

 結婚式当日の早朝。ミチナガは緊張で普段なら目が覚めない時間に起きてしまった。正直まだやることはない。しかし緊張で再び眠りにつくことは叶わないだろう。そこで服を着替え、散歩をすることにした。


 この時間帯にこの辺りで起きているのは巡回中の使い魔達だけだ。どんな時でも安全は確保されている。その様子に満足しながらも特になにもすることがなく、ぶらぶらと歩く。


 すると近くの花壇に腰を下ろすエヴォルヴの姿があった。中に入っているのは誰なのか、それはミチナガにはすぐにわかった。


「おはようフラワー。朝から花壇の手入れか?」


『あ〜おはよう〜今日は結婚式だからね〜お花達に〜咲いてって〜頼んでるの〜』


「そうか。それじゃあ今日は一面の花々が見られそうだ。天気も良さそうだしな。」


『そうなの〜天候変える必要あるかと思ったけど〜必要なかった〜』


「ホイホイ天気変えたら周辺住民も困るだろうからな。」


『あ〜招待客来たよ〜正門の方〜』


「この時間に?っていうことは…ナイトだな?」


『正解〜でももう一人いるよ〜』


「そうなのか?じゃあ出迎えに行ってこよう。」


 小走りで正門へ向かうミチナガ。するとわずかに地鳴りを感じる。そして遠くに目を向けるとそこには巨大なモンスターを担いだナイトの姿があった。


「お〜い!ナイト〜!」


 ぶんぶんと手を振りながら駆け寄るミチナガ。するとモンスターの陰に隠れていたもう一人の人影を見つけた。招待客の一人だが、本当に来てくれるとは思っていなかった。


「ソーマも来てくれたのか!こういう場は嫌かと思ったけど…来てくれて嬉しいよ。」


「まあ好きではないが…お前の頼みだ。しかし…随分小さくなったな。」


「使い魔達のやらかしだよ。肉体年齢は10歳くらいだ。いや…もう12になるのかな?若返ったせいで詳しいことはわかんないけどね。それにしてもナイト、またすごいの持って来たな。」


「祝いの品だ…美味いぞ……」


『ムーン・焼いて食べるのが一番美味しいよ。シェフさんにはもう頼んであるから今日のメインにするつもり。』


「みんな腰を抜かして驚くだろうな。そういえばソーマも事前に送ってくれたお酒ありがとうな。今日の結婚式で振る舞うつもりだ。」


「ああ、好きにやってくれ。式を始めるのはまだ先か?」


「まだ朝早すぎるからな。今日の10時から始めるつもりだ。まだ来ていない人もいるしな。」


 ミチナガはソーマとナイトを連れて行く。二人と話したことで随分緊張がほぐれて行く。そして時間は進んでいき、残りの招待客が訪れてくる。




 結婚式開演2時間前。慌ただしく最終準備と確認が始まる中、招待客たちがやって来た。他の招待客と違い、当日まで忙しくてスケジュールが開けられなかった者たちだ。本当は忙しくて招待を受けられないというものもいたのだが、ミチナガ相手に断ることもできず必死に時間を作った。


 ただ、そういう理由からではないものもいる。そのものたちは空気が変わるほどの湿気と磯臭さと共にやって来た。


『ようこそおいでくださいました。海神ポセイドルス様。肌が乾かぬように特別室を設けましたのでそちらへどうぞ。』


「おお、これはかたじけない。しかし久しぶりの陸地は暑いな。」


『これでも人間的には丁度良いんですよ。特別室の冷房は強めに効かせてありますので。』


「そうか。それにしても…その機械の中は暑くないのか?」


『冷暖房に飲み物完備です。気分は最高です。』


「ほお、それは良いな。ん?……どうやら勇者も来たか。」


『そのようですね。わかりやすくて良いです。』


 海神ポセイドルス到着とほぼ同刻、歓声とともに英雄の国から魔導列車がやって来た。魔導列車内部からは英雄の国の12英雄、さらに名だたる傑物たちが降りてくる。


 ただその中でも彼は頭一つ飛び抜けている。いや、頭一つというレベルではない。明らかに格が違う。そんな彼らの登場を見に来ていた人々からは声が漏れる。


「おお!あれがかの勇者王の子孫か。」


「映像は何度も見たが、やはり実物は違うな。」


 勇者王カナエ・ツグナオ、そして大英雄黒騎士の子孫である勇者の一族にして、英雄の国の国王、勇者神アレクリアル。


 英雄の国はあの戦争が終結したのちに国土を1.5倍まで増やしている。さらに9大ダンジョンが解放されたことにより、所有していた9大ダンジョン、巨大のヨトゥンヘイムと人災のミズガルズから莫大な富を得ている。


 国力としては間違いなく世界トップ。間違いなく世界一の大国である。


「だがそれでも魔神第2位…」


「またそれですか。もう聞き飽きましたよ。」


「良いだろ。ただでさえ順位に開きがあったのに魔神トップと最下位が婚約したらさらなる開きが…」


「もう無理ですって。ただでさえ魔神2人を保有している商会ですよ。勝てっこないですよ。」


「はぁ…私の唯一の野望が……」


「まあ1〜2年は魔神トップになれたじゃないですか。」


「むしろそれが腹立たしい。」


「まあ俺たちの時代はこれでお終いですよ。次の世代に任せましょ。ご子息も立派に育っているんでしょ?」


「ああ。ツグナオ様を一目見られたのが大きい。あれは私を超える勇者に育つ。」


 アレクリアルを慰めるザクラム。その背後では他の12英雄たちが苦笑いを浮かべている。そんな彼らは異なる3つの強力な力を感じ取った。


 そのうちの一つは突如切り裂かれた空間から現れた。ただ一人ではない。男と女、それに大勢の子供を連れている。


『ようこそいらっしゃいましたイッシン様、サヤ様。お子様方も。』


「招待ありがとう。なるべく騒がないように静かにさせておくね。」


「この度はおめでとうございます。祝いの品です。」


『これはこれはご丁寧に。ありがとございますサヤ様。』


 魔神第6位、神剣イッシン。まごうことなき世界最強の剣士は奥さんの尻に敷かれながらへこへこと会場入りをする。そして残りの2つの気配。そのうちの一つはこれまでにないほど派手に登場した。それにより多くの招待客が空を見上げ悲鳴をあげている。


「な、なんだあれは!?」


「星だ…星が降ってくるぞぉぉ!!!」


 青空に突如現れる無数の星々。それは夜空で輝いていれば綺麗だったであろうが、こうして地に降り注ごうとすれば恐怖の象徴となる。そんな恐怖の星々はまっすぐ地表に近づいてくる。


『これはやば…』


『ピース・ガーディアンお願いね。』


『ガーディアン・御意。』


 降り注ぐ星々の前に二人の使い魔が立つ。ガーディアンは地表を覆い尽くす巨大な魔力壁を構築する。そしてそこへピースの魔力を流す。


 するとその魔力壁にぶつかった隕石群はまるでスポンジのように地表にぶつかった瞬間にピタリと動きを止めた。落下によるエネルギーが全て打ち消されているのだ。だがそれはピースたちの働きのおかげでもあるし、彼女のおかげでもある。


「招待を受け取ったから来たのだ!これはプレゼント!」


『ピース・プレゼントに隕石は…』


「でも前の時喜んでたろ?」


 この隕石を降らした主人フェイミエラルは不思議そうな顔を向けてくる。確かに以前もフェイミエラルから隕石を送られた。しかしあの時も非常に困ったし、今も困っている。しかし隕石には非常に大きな価値がある。この隕石一つで城が買えるほどの価値がある。


『ピース・えと…その…ありがとうございます?』


「喜んでもらえて何よりなのだ!あ、パパももう直ぐくるよ。先にお腹が空いたからご飯食べる!」


『ピース・じゃあこちらへどうぞ。丁度パレードも始まりますよ。』


「パレード?」


 そう言って振り向くフェイミエラル。するとそこには闇の空間から現れるパレード隊がいた。このパレードは世界一の遊園地から来ている。そしてその先頭には可愛らしい着ぐるみが歩いている。


『ようこそ。よく来てくれたねリッキーくん。』


「もちろんさ!今日は大いに盛り上げるよ!」


 フェイミエラルのせいで恐怖におののく会場だったが、リッキーくんの、ヴァルドールのおかげでこの雰囲気が和らいだ。これなら滞りなく結婚式を始められそうだ。




 もう1話続きます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 結この雰囲気で1話で終わる分量に抑えられてたら逆に悲しかったので結2あっていいですねえ!
[一言] もう一話と言わずにエピローグ後の閑話を続けて欲しいな
[良い点] おお!更に魔神追加か!…ソーマも来てくれたか!…彼は禁断種だから、安全確保が超必要だよ!エヴォルヴ機甲師団! [気になる点] これで魔神は全員集合かな?…後は…ごねるリカルドさんを描写して…
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