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第56話 専用武器

「では細かい契約の話をまとめましょう……大丈夫ですか?」


「……へぇ…」


 いや、まともに声も出ない。足腰ガックガクだし、心臓がうるさい。別に走ったわけじゃないけど、ずっと登りっぱなしだったから、かなりキテいる。なんなら山登りしたのと同じくらい登ったぞ。


「それではもち米の苗と関連した商品は共同開発したということで、今度誰かに商業ギルドに申請させておきます。その承諾書にサインをお願いしますね。それから…話しておきたいことがあります。」


 何か色々あるのはわかりましたから、とりあえず息が整うまで待ってください。あ、メイドさんが飲み物持って来てくれた。これ飲んで落ち着こう。


「その状態で良いので覚えておいてください。これは重要な話です。これまで、ミチナガくんのように異世界からきた人間は数多くいます。そして異世界から人間がくるのは一定の周期があります。ミチナガくんが来たということはその周期が来たということです。」


「…では……俺以外にも…いると?」


「ええ、そして必ず世界が動くこととなります。それが良い方向か、悪い方向かはわかりません。ですが注意してください。あなたと同じ世界から来た人間でも信用はできないことを。今までも必ず異世界人同士の争いはありました。もちろん仲良くなれる人間もいます。ですが用心に越したことはありません。」


 そんなことを言われても、俺は戦闘能力皆無だから意味ないような。まあ用心に越したことはないけど、用心したところで襲われたらおしまいだ。


「では私は英雄の国へ行くのを急いだほうがいいかもしれませんね。確かここからなら転移の魔法ですぐなんですよね?」


「確かに転移の魔法でかなり距離は稼げます。しかしそれでも直接転移することは不可能です。転移による敵の襲来もありますから、妨害用の結界は必ず張り巡らされています。転移で移動しても…馬で一月はかかりますね。」


 めっちゃ遠いじゃん。まあ確かに転移なんて便利なものがあったら、それを使って戦争を起こそうとか考える奴もいっぱいいそうだしな。それを考えれば普通のことなのか。ルシュール辺境伯も領地までの転移は、何回か他の場所を経由していたしな。


「私はこの通り忙しい身ですのでついて行くことはできません。下手に私の護衛を貸すことも国家間の問題にも繋がりかねませんから難しいです。なので、今のうちから信用できそうな冒険者を見つけておいてください。」


「冒険者ですか……ちなみに実力はどのくらいが必要なんですか?」


「そうですね…護衛依頼を出せるのがDからCランクです。英雄の国ならば…治安も良いのでDランクでもなんとかなりそうですが、安全のためにCランクが好ましいでしょう。それと長旅になるので、なるべく護衛経験の豊富な冒険者を選んでください。経験がないと途中で料金を吊り上げようとしたり、途中で依頼を放棄する輩も出て来ますので。」


 しっかりと人選を行わないとダメってことか。まあ向かうのはもう少し先になりそうなので、じっくりと選んだほうがよさそうだ。ルシュール辺境伯曰く、見極めるために色々と依頼を出してみるのも有りだという。依頼の達成率や、仕事の出来などから見極めるのがもっとも確かな方法だという。


「それから…私の研究の中でミチナガくんでも使えそうなものがないか探してみましょう。多少は戦力になるはずですから。」


 そういうと一冊の本を俺の目の前まで魔法で運んで来た。随分と分厚い本だが、これが全て今までの研究ということなのか。中を見ると挿絵付きで、それに対してわかりやすく説明書きまでされていた。


「これは…全て魔法のアイテムなんですか?」


「ええ、戦闘用ものだったり、普段使いもできるようなものばかりです。」


「この領地の大事な研究資料なのに見せてもいいのですか?」


 国によっては最重要機密にも当たるようなものなんじゃないか?そんなものをホイホイ見せてしまっても良いものなのかなぁ。


「私の領地ではそこまで重要なものは作っていませんよ。そういった重要なものは国で管理していますから。それに私の場合、そんなもの使わないほうが強いですから。」


「あ、そうですか。」


 そりゃまあ魔帝なんてついちゃう人ならば、道具に頼らないほうが強いのか。ルシュール辺境伯の本気ってどのくらい強いんだろうなぁ。


 まあ見ても全く問題ないのならば、お言葉に甘えて見させてもらおう。しかしこれだけの資料となるとすぐに見終えることは難しい。数日はかかるだろう。ちゃんとしばらくの間は貸してくれるということなので、隅々まで読んでおこう。ん?


「あ、あのこれって…」


「ああ、それは爆炎結晶と呼ばれるものですね。特殊な刺激を与えると爆発するものです。」


 な、なるほど…つ、つまりは!


「あ、銃を造ろうとしていますか?」


「な、なぜそれを!」


「ああ…やはり異世界人ですね。どなたも同じようにそれを造ろうと奮闘していました。私も制作に携わったことがありますよ。おかげで面白い発見も得られました。」


 そういうと引き出しの中を漁り、箱を取り出した。


「これが銃の試作品です。どうぞ、私に向かって撃ってみてください。ちゃんと魔法で守りますから。」


「え!?」


 い、いやいや、危ないだろ。だけどもう撃ってくださいみたいな感じにしているけど…本当に撃ってもいいの?撃っちゃうよ?本当に撃っちゃうよ?


 思い切って引き金を引くと、ドンという爆発音と同時に両腕に重い衝撃が響いた。放たれた銃弾は音速を超えてルシュール辺境伯の元まで飛んでいき、コンっという軽い音で弾かれた。


「……流石に魔帝と呼ばれるくらいになると、こんな攻撃は効かないんですね。」


「いえ、誰でも同じような結果になりますよ。この銃という武器はあなたたちの世界では凶悪な武器のようですが、この世界では無意味なんですよ。」


「ど、どういうことですか?」


「この世界での攻撃は全て魔力によって決まるんです。同じ速さの攻撃でも魔力量に差があれば威力は全く違うものとなります。この爆炎結晶は爆発の際に周囲の魔力を取り込んで爆発のエネルギーに変えてしまいます。それは銃弾の魔力にも影響し、魔力ゼロの銃弾となるわけです。そういえば異世界人の友人がこう言っていましたね。スポンジを高速で飛ばしても結局スポンジでは意味はないって。」


 ま、まじかぁ…。銃って言ったらもう最強の武器のはずじゃん。ガトリングとか造ったら俺強え無双が…


「た、例えば魔力を銃弾に保持しておく魔法とかないんですか?」


「ありますよ。これがその銃弾を込められた銃です。」


 俺がそういうだろうと分かっていたとしか思えないくらいすぐに出て来た。しかし…


「な、なんか凶悪すぎません?デカすぎ…」


「これもその異世界の友人と造ったものです。魔力を封じ、留めておく魔法陣は5cm×5cmまで小さくすることができました。それを銃弾に刻み込んだので、えー…20mm×70mmという大きさの銃弾になりました。」


 …エグいくらい大きいんだけど。そんなんもう機関銃の弾とかじゃん。人間が手に持って使う銃ではないでしょ。そんなのを撃ったら俺の両腕吹っ飛んじゃうよ。


「ちなみに威力はどのくらいなんですか?」


「初歩のファイアーボールの強いやつくらいですね。もっと銃弾を大きくして、込める魔力量を増やせば威力も増えますけど、それに伴いお金の方も…」


 ざっとで教えてもらったが、これは…ダメなやつだ。簡単にいうと金貨を撃ち出すようなものだ。いや、正確にいうと金貨数枚…ガトリングなんて造ったら使うたびに泣くぞ。


「じゃ、じゃあ爆炎結晶の爆発そのものを使えば…」


「ああ、それなら使えますよ。ですが爆炎結晶はお高いですよ。握りこぶし大なら金貨10枚ほどですかね。それに威力を上げたいなら魔力を込めたほうが良いですが、ミチナガくんでは…」


 あ、いらない人件費でさらに金がかかる…。俺は魔力ないしな。あ、もしかしてさっきの使えない銃でも俺になら十分効くな。俺自身魔力ないから反発する力ないし。俺を殺す専用の攻撃兵器見つけちゃった。





俺強え無双…始まらず(笑)

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