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特別編 ミチナガとリリーと結婚式 起


完結からちょうど1ヶ月 最終回の際に言っていた結婚式やります。

 平原を颯爽と駆ける魔動装甲車。この進みを遮るものが何もない平原を走らせるのは実に爽快で気分が良い。だが気分が良いのは運転手だけだ。後部座席は安全面の問題でわずかな小窓しか用意されていない。


 そしてそんな車内では現在重大な会議が行われていた。


「え〜…それでは本日も会議を始めたいと思います。本日の会議内容も怒っているであろうリリーをどうやって説得するかです。」


『シェフ・それはもうどうしようもないだろ?許してくれるまでしっかり謝っておけ。それより今日のクッキーの味はどうだ?新しい香辛料試してみたんだけど。』


『ピース・とってもスパイシーで美味しいです。僕もシェフさんの言う通りだと思います。』


「……ごまかしは効かないかぁ…ちゃんと謝るよ。じゃあもう一つの一番重要な問題。……俺のこのちっちゃくなった身体どうすんだぁぁぁ!!!!」


 肉体年齢的にはすでに50を迎えていたミチナガの肉体はなぜか10代前半まで若返っている。誰が見てもすぐにミチナガだと気がつかないほどの代わりようだ。しかしこの少年は間違いなくミチナガである。


『ポチ・またその話してんの?どうしようもないんだからしょうがないじゃん。運転中だから適当に慰めといてぇ。』


「適当に慰めんなぁ!!なんでこんなことになってんだよ!昨日まではまだ15歳くらいはあったよな!一晩経ったらさらに若返るってどう言うことだぁ!」


『シェフ・仕方ないだろ。体内に注入したナノマシンが細胞若返らせすぎたんだから。』


『ピース・も、もうナノマシンの機能は停止してあるのでそれ以上若返ることはないと…思います。』


「昨日もそれ聞いたよ!確かに若返るスピード落ちたみたいだけど完全に止まらなくちゃ困るんだよ!見ろよこれ!ツルッツルだぞ!ツルッツル!!」


『ポチ・でも体格まで変わるのはビックリだよねぇ。骨まで小さくなってんだもん。社畜が今改良してナノマシンを用いた再生治療の実験をしてるよ。まあこの世界の回復魔法あれば必要ないけどね。』


「そんなのどうでも良いんだよ!マジでどうでも良い!!どーすんのよこれ!!」


『ポチ・もう流石にこれ以上は若返らないから安心しな。それよりも後数週間でユグドラシル国に着くよ。』


 そしてそんなポチの慰めの言葉虚しく、翌日もさらに若返ったミチナガの肉体年齢は10歳になった頃にようやく止まった。





「どーしよ、どーしよ…」


『ポチ・そんなに落ち込まないで。ほらお酒…』


『シェフ・ガキに酒飲ませるな。ほら、ジュースでも飲んどけ。』


「ガキちゃうわ!あ、でもジュースおいしい。もう一杯ちょうだい。」


『シェフ・へいへい。……思考まで子供っぽくなってないか?』


「…ちょっとあるな。なんと言うか…感情の抑制が効かないような気が…」


『ポチ・元からじゃん。』


『ピース・元からですね。』


『社畜・元からなのである。それよりも肉体再生ナノマシンが完成したのである。これで腕が吹っ飛んでも大丈夫なのである。』


「うるさいわお前ら!て言うか社畜!お前そんな研究よりも俺の肉体年齢をあげる研究をだな…」


『社畜・そう言った研究はもう一度一からやり始めたのである。肉体の神秘はそう簡単にはわからないのである。下手に肉体の老化を加速する薬を作って翌日老衰なんてことになるのも困るのである。』


「それは!……まあそうだけど…」


『ポチ・まあ後5年も経てば毛も生え揃うよ。そんなことよりも…ほら、着いたよ。』


 ミチナガは恐る恐る小窓から外を覗く。そこには立派な世界樹がそびえ立っていた。それを見た瞬間、ミチナガは緊張で胸が張り裂けそうであった。


「だ、大丈夫かな…あの時はおじさんだったけど、今子供だよ?こんなのもう無理って言われるよ。」


『ポチ・その時は慰めてあげるから。ほら、行ってきな。』


 魔動装甲車を降りて恐る恐る世界樹へと近くミチナガ。そこにまだリリーの姿はない。しかし世界樹と一心同体のリリーにはここにミチナガがいることはすでにわかっているはずだ。ビクビクしながら歩みを進めるミチナガ。


 すると突如地面が割れ、世界樹の木の根が飛び出してきた。そして世界樹の根は膨らんで卵のように楕円になるとパカリと割れてそこからリリーが現れた。


 リリーを見上げるミチナガ。こうして下の視点からリリーを見ると本当に大人になったと思う。かつては倍の年の差があったミチナガとリリーだが、今は逆に倍の年の差になっている。そして目をパチクリとさせるリリーにミチナガはおずおずと声をかけた。


「ひ、ひさしぶり…リリー…」


「……ミチナガくん?でも…え?なんでちっちゃく?」


「まあその…色々と……それよりも…永遠の別れみたいなことを言っておきながら…帰ってきました。」


「え?あ…うん。事情はドルイドくんから聞いたよ。自分が神になろうとしてたって。……無茶しようとしたんだね。」


「え!?聞いてたの!あいつら…どう説明しようか悩んでたのに…まあグッジョブ。」


「そんなことよりもどうしてちっちゃくなっちゃったの?」


「いやその…神になるにあたって寿命をどうにかしようとして若返り薬みたいなのを作ったらここまで若返っちゃったみたいな感じで……10歳になっちゃいました。」


 リリーと永遠の別れになるかもしれなかったと言う理由はすでにドルイドが話してくれた。しかしミチナガが若返ったと言う話はドッキリにするために取っておいたらしい。どうしたものかと汗を流す子供ミチナガ。するとリリーは子供ミチナガの頭をぽんぽんと触れた。


「……可愛い…」


「…え?今なんて?」


「ちっちゃいミチナガくん可愛い!!なにこれ!わ〜〜可愛い!こんな弟欲しかったんだぁ…」


「い、いや…ちっちゃいけど、中身はおっさんなんで…弟でもないし…ちょっと落ち着こうねリリーちゃん。」


「ダ〜メッ!リリーちゃんじゃなくて…リリーお姉ちゃん…お姉ちゃんで良いよ!ほら!」


「い、いや…俺年上…そんな呼び方は…」


「ほら。お、ね、え、ちゃ、ん。」


「だから……」


「言ってみて。お姉ちゃん。」


「お…お姉ちゃん…」


「や〜〜ん!可愛い!!」


 ぎゅっと抱きしめられるミチナガ。その顔は恥ずかしすぎて真っ赤である。しかしどこか何かに目覚めそうな感覚も感じる。


「ずっとお車乗ってたから疲れたでしょ。お姉ちゃんがお風呂に入れてあげましょうね。」


「いやちょっと待って!一人で入れる!これ以上はダメだ!ポチ!シェフ!ピース!みんな!」


『ポチ・僕たち今日はお店の方に行くんでその間よろしくお願いしまーす。』


『シェフ・夕食は後で届けるんで。それじゃあ。』


『ピース・あの…頑張ってください。』


「待てお前ら!おい!助けて!これはまずいって!」


『ポチ・ごめんねボス。僕たちはこれ以上手を出せないんだ。』


「なんでだよ!」


『ポチ・…あいつがね…そういう癖なんだよ…趣味なんだ…』


「誰の!ねえ誰の趣味なの!ふざけた癖してんじゃないよ!くそ!こうなったら体内ナノマシンを用いた肉体強化魔法で…」


『社畜・ナノマシンは機能停止中だと言ったの忘れたのであるか?』


「ああそうだったな畜生!リ、リリーちゃん…落ち着こう。冷静になればわかるはずだ。だから…ね?」


「だいじょーぶ。怖くないよ。お姉ちゃんが気持ちよくしてあげるから。」


 ペロリと舌舐めずりをするリリー。それを見たミチナガは必死の抵抗を見せる。しかしリリーは魔神第10位。ガッチリとホールドされた腕はミチナガを決して逃さない。そしてリリーとミチナガを世界樹の根が覆い隠して行く。


「なぁぁぁ!!!ちきしょー!!!!」


 ミチナガの叫び虚しく、世界樹の根は二人を包み込んでそのまま地中へと戻っていった。ご丁寧に地面の割れ目まで綺麗に塞がれるとそこにはなにも無くなった。


『ポチ・じゃあ僕たちはしばらく休暇を楽しもうか。あの感じ…1週間は戻ってこないでしょ。』


『シェフ・…1月はかかるな。結婚とかの話はどうするんだ?』


『ピース・落ち着いた頃にそう言う話になるだろうから1年後くらいで考えた方が良いんじゃないですか?』


『社畜・丁度良いのである。魔神2人の結婚式など参列者の数がすごいことになるのである。』


『ポチ・ミチナガ人脈すごいからね。なんなら式場の建設から始めようか。おっきな神殿立てよう。』


 わいわいと盛り上がる使い魔達。こうしてミチナガの結婚式のための一大プロジェクトが始まる。




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― 新着の感想 ―
[良い点]  更新ありがとうございます。 [一言]  怒るに怒れないリリーのパパさん。「娘を泣かすな~!!手を出すな!近寄ったら消えてもらう」と叫んでいたのに一週間後に、お肌つやつや、精神バブミ状態の…
[良い点] …柴犬先生!おかえりなさい!!!(泣) …ミチナガさん!…名探偵コナ◯みたいな目にあってるようですが…おかえりなさい!…遂に結婚ですか!…そうですか…話の流れからして…次の話に行くまでに…
[一言] 待ってました!ε”ε”(ノ⸝⸝>ᗜ<)ノ✨
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