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第53話 新商品誕生


1万ポイントが視野に入ってきました。まさかここまで多くの人に楽しんでもらえるとは思いもしませんでした。


今後も宜しくお願いします。


 あれから2週間、ついに今の俺ができる最高の日本酒が完成した。1週間かけて土壌整備や、準備を進め、最高のコンディションで米作りを行なった。酒米の麹付けの作業も、酵母を用いてアルコール発酵させるのも、様々な情報を集めてから作業を行なった。


 すぐにでも飲みたい気持ちはある。しかし、どうせならこの日本酒はルシュール辺境伯と一緒に飲んでみたい。これは確実に美味しいという自信がある。


 これがもしも美味しくなかったとしたら、俺は日本酒造りを諦めなければならない。現状で、これ以上のものは作れる材料も設備もないのだから。


 メイドさんにルシュール辺境伯との面会を頼むと、すぐに案内してくれた。多忙なはずなのにこうしてその日のうちに会ってくれるというのはルシュール辺境伯のいいとこだ。案内された部屋に入ると、相変わらず疲れた様子のルシュール辺境伯が書類を前に座っていた。


「やあ、ミチナガくん。なんでも日本酒が完成したんだって?」


「ええ、まだ私も味を見ていませんが、どうせなら一緒にと思いまして。私が作れる最高の日本酒になったはずです。」


 早速小さいグラスに出来上がった日本酒を入れ、ルシュール辺境伯に手渡す。注いだ時にまるでフルーツのような良い香りを感じた。色もうっすらと琥珀色に近づいていた。どうせならお猪口で飲みたかったなぁ…


 ルシュール辺境伯も色と香りを確認している。それから俺の持っていたグラスと軽く打ち合わせ、乾杯の声とともに飲み干した。


「うっわ…口当たり軽すぎだろ。水よりも滑らかで飲みやすいな。」


「香りもいいですね。飲み応えとしては軽すぎて少量では物足りなくなりそうです。これは実に良いお酒ですよ。」


 こんなにうまい日本酒はそうそうないな。下手に飲み始めたら、ぐでんぐでんになるまで飲んでしまいそうだ。それほど飲みやすくて美味しいお酒だ。


「これは素晴らしいですね。しかも魔力が多く含まれています。この水は…もしや妖精の隠れ里の水ですか?」


「ええ、米作りの段階からその水を使っています。以前、妖精の隠れ里の湖の水位が変わるくらい水を収納したことがありまして、その水がまだ残っていたんですよ。この米は水や土の影響を受けやすいと書いてあったので試してみました。」


 そう、これこそが俺が今できる最高の日本酒造りだ。水には妖精の力が溶け込んでいるため、栄養素もかなり含まれているだろう。他には無い、最高の水というわけだ。


「なるほど、どおりで体の調子も良くなったわけです。あの水は聖水の効果の他に、ポーションのような回復効果もありますから。」


「そうなんですか。私はそこまで疲れが溜まったわけではないので良くわかりませんが…」


 そういえばファルードン伯爵が、この妖精の隠れ里の湖の水は聖水としても使われると言っていたが、回復効果まであるのか。今度から疲れた時は寝る前に軽く呑むのもありだな。特に疲れる予定もないけど。


「そうなると、このお酒は今後生産するのが難しいのでは?」


「ええ、今ある水の量ではこれと同じ量をもう一度作るのが限界ですね。しかし、全ての水を日本酒用に消費するというのも勿体無いので、できれば取っておきたいです。」


 そう、この水には限りがある。しかも米作りでは大量の水を消費するので、そう何度もできることではないのだ。正直、これほど水が良くなるだけで味が変わるのならば、他の作物でも試してみたい。


「なるほど…今後、生産するのは困難ですか。それではこの領地で作っていくことも難しいですね。しかし、そのお酒の価値は私にとっては非常に高い。この領地の主食は米です。その米を使ってお酒が作れるのならば、今後も米の重要性は高まっていきます。」


 確かにこの街では米の流通量がかなり多い。ビーフンのような加工品も普通に街中で売られていた。領民一人当たりの米の消費量はかなりのものだろう。


 その上、酒という一定以上の消費量の見込みがある加工品を作ることができれば、さらなる消費量拡大が見込める。しかし、それほど消費を増やしたいということは…


「もしかして、米の生産量が増えすぎて消費しきれなくなっていますか?」


「ええ、かなり備蓄米が溜まってきています。小麦なども作りたいのですが、この領地は雨が多いせいで、ムギ類は難しいんですよ。だから米を使った製品というのはそれだけで価値があるんです。米の生産量を減らしたら農家がやっていけなくなりますからね。」


 結構考えられているなぁ。ちゃんと農民のことまで考えられた政策をとっている。だから領民から慕われているんだろうな。まあ優しすぎてそこをつけ込まれそうだけど、この人世界的にめちゃくちゃ強いらしいし、騙そうなんて考える人もいないか。


 しかし他に米を使った加工品かぁ…一定以上の消費量が見込めそうな加工品なんてそうそう思いつかないよなぁ。


「なかなか思いつきませんね。米で作れるものって言ったら、団子に煎餅、きりたんぽとかですけど、似たようなものは全部街で売っていましたからね。あとはおはぎやあんころ餅とかですかねぇ…まあこれもあるか。」


「おはぎ?あんころ餅?なんですかそれは。」


「あ、この言い方じゃあわかりませんよね。もち米を小豆という豆と砂糖を混ぜ合わせた餡子で包むんですよ。私おはぎには目がなくて…そういえばまだこの街で見たことありませんね。まあ砂糖を使っているので高級品でしょうし、早々出回りませんかね。」


 なんかわからないけど餡子ってうまいよなぁ。おはぎとか結構お腹にたまるから飯前には食べないようにしても、あると食べちゃうんだよなぁ。よくもまあ豆を甘く煮ようと思ったよな。外人も豆を甘く煮るっていうと驚くらしいけど。


「豆を甘く……そんなもの美味しいんですか?」


「え…まさかないんですか?もち米はありますよね?お餅を作ったりとか…」


「もち米…団子にしている米とは違うんですか?」


「……もしかしてと思いますけど、米を基本的に炊いて食べるものとしか考えていませんか?」


「ええ、それが一番美味しいですから。まあ街の人たちは色々と工夫しているみたいですね。あれも美味しいですよね。私も時々食べるんですよ。」


 そういえば前に街中を歩いた時、うるち米系の加工品しか見なかったな。考えてみれば米で酒を造っていないというのも、ちょっとおかしいような気はしていた。これだけ米があるのならそう言ったものも作っていそうなものだ。


 この街の米の品種改良は村人たちに行わせているが、最終的に確認するのはルシュール辺境伯だ。だから米をどういう方向性に改良していくかもルシュール辺境伯次第だ。この人、長生きしている分考え方が凝り固まっているんじゃないか?


「…いくらか予算もらえますか?流通制限金貨で良いので。その予算で新しい米の加工品を作りますから。」





 あれから1週間が経った。現在、俺は長蛇の列の先にいる。


「はい、おはぎ10個ときな粉餅10個、ずんだ餅10個ね。毎度あり。」


「うちはあんころ餅30個頼む。これ買ってくと母ちゃんの機嫌がよくなんだ。」


「はいはい、あんころ餅ね。」


 1週間前にルシュール辺境伯から予算をもらい、スマホからもち米の種を買い、小豆を買い、育て上げた。それと気にしていなかったが、ファームファクトリーのレベルが結構上がっていたので、ついに砂糖の元となる甜菜とサトウキビの種を買うことができた。


 今回、砂糖として使ったのはサトウキビの方だ。サトウキビから砂糖を作る方法はとても簡単。絞った汁を煮詰めれば良いだけだ。ちなみに甜菜も同じ方法で砂糖を作れるが、匂いとえぐみが残るらしいので、ちゃんとした製糖用の設備を作り上げてからじゃないと厳しいだろう。


 今回は小豆を使ってあんころ餅とおはぎ、それから枝豆を使ってずんだ餅、大豆を使ってきな粉餅を作った。小豆と大豆ともち米だけで4種類の餅が作れるのは楽でいいな。大豆に至っちゃ収穫時期変えるだけでずんだ餅ときな粉餅作れるし、本当に栽培が楽で良い。


 まだ昨日から売り始めたばかりだが、その人気ぶりはすごい。ルシュール辺境伯も、すぐにもち米と大豆、小豆の栽培を農家に依頼し、サトウキビも生産、加工態勢に入っている。これは間違いなくこの領地の名物になると確信したのだろう。


 この領地でもち米などの収穫が終わるまでの間、この市場は俺の独壇場だ。他に台頭したくても材料を俺しか持っていないので商売することができないのだ。俺はこのスマホがある限り、いくらでも生産、販売することができる。しかも元出は最初の種の購入以外ゼロだ。売れば売るだけ儲かる。


 ただし、これだけ混むと俺一人では裁ききることは難しい。なので、他の飲食店に卸してそこでも販売してもらうつもりだ。すでにこの人気に目をつけた商人たちから卸して欲しいと依頼が殺到している。


 甘味の人気は間違い無いからな。一時の人気だけで終わるということは無いだろう。これは大儲けすること間違いない。ただ、人気がありすぎて在庫が持つか心配だ。少し原料の増産をしないといけない。


 これを作るシェフにも頑張ってもらわないといけない。今は寝る暇もなく餡子と餅を作らないと確実に売り切れる。


これだけの人気……途中で売り切れたなんて言ったら暴動起きるんじゃ無いか?




多くの人に楽しんでもらい、私も嬉しい限りです。


今後も頑張っていくので、ブックマーク登録、評価、宜しくお願いします。


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