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第507話 最後の旅の始まり


 最終章始まります。

「仕事の割り振りはオッケー。問題もほぼ解決済み。他に問題点はないな?」


『ポチ・護衛に誰をつけるかで揉めているらしいよ。二人しか連れて行かないって言ったらもう大変で大変で。』


「あ〜…それはめんどいな。もう明後日には出る予定だろ?早いとこ決めてもらわないと。そういやあいつはどうなってる?」


『ポチ・ちゃんと伝えてあるから大丈夫。前日には戻って来てもらうから。それよりも仲裁に行って。評議会巻き込んでいるみたいだからさ。』


 ポチに催促され渋々腰をあげるミチナガはだらだらと歩き出した。ミチナガが向かった先はセキヤ国の中心部に建設された議事堂の評議会室だ。ここではセキヤ国の国民の中から選抜されたものたちを中心として議会が行われている。


 議会の内容は国の法律の選定や問題ごとへの対処方法の話し合いといった国の運営に関わる重要な決定を行う。ただしどんなに話し合っても最終決定権はミチナガに委ねられている。民主国家という程をとってはいるがあくまでミチナガの独裁国家だ。


 とはいえミチナガはそこまで国の運営に口を出さなくなってきた。口を出せばその分自分に仕事が回ってくるので、それを避けるためというのもある。だがそれ以上に評議会の会議、決定だけで問題なく国の運営がまとまっているからというのもある。


 そしてそんな評議会が行われている議事堂というのはミチナガが普段仕事をしている場所でもある。ミチナガがダラダラ歩いたとしてもほんの5分もあれば評議会の会場にたどりつく。めんどくさそうに会場の扉を開いたミチナガの耳に数々の大声が聞こえてきた。


「しかしそれでは私は!」


「他の仕事があるんだから仕方ないだろうが!!っとミチナガ様。」


 扉を開きのろのろと歩いていくミチナガ。そんなミチナガに気がついた評議会のメンバーは口を閉じて深々とお辞儀をする。そんな評議会のメンバーに着席を促すとミチナガも用意されている自身の席に着席した。


「議論が白熱するのは良いことだが、なんでもその内容は俺の護衛の話とか?」


「それなんですが実はその……」


「ミチナガ様!どうか私を護衛の一人に!!」


「イシュディーン…お前をか?しかしお前はこの国の騎士団総長で護りの要だろ?それに煉獄のムスプルヘイム攻略の一端を担っているし……」


「騎士団のまとめ役は団長のヘルディアスがおります!それに現在は煉獄のムスプルヘイムにはナイト様が潜っておられるので私の手は必要ありません!ダンジョンまでの街道の安全も確保済みです!どうか!」


 ミチナガは頭を悩ませる。イシュディーンはこの国の重要人物の一人だ。ミチナガに加えイシュディーンまでいなくなるとその穴を埋めるための人材確保が必要となってくる。下手をしたらその分を補填するために出発が遅れる可能性が出てくる。


 ミチナガはポチの方をちらりと見る。ポチも少し悩んでいるがしばらくすると頭を縦に振った。どうやらその分人材の割り当てが可能らしい。


「よし、前に英雄の国に行くときも留守番させたからな。同行を許可しよう。ただし明日までに仕事の振り分けしておけよ。出発は明後日の早朝だ。それからあともう一人の同行者は…戦力は十分だし身の回りのことをしてくれるやつにするか。適任者はいるか?」


「それでしたら私が一人推薦いたしましょう。メイドとしての仕事も、いざという時の戦闘能力も十分な人材ですので問題ないかと。」


「さすがはメイド長。じゃあそれで頼む。さて…これで問題は解決かな?今日の会議は他に残っているか?」


「いえ、全て終えております。もう解散して問題ないかと。」


「そうか!それじゃあ…飯でもどうだ?暇なやつだけで良いぞ。仕事があるものは無理に引き止めん。」


 まだ夕飯には少し早い時間だが、たまにはゆっくりと夕食を楽しむのも良いだろう。そんなミチナガの発案に賛同した数名と共に食事へと出かけた。




 それから2日後。朝靄が漂う街中に三人の男女の姿があった。一人はミチナガ、もう一人はイシュディーン、そしてもう一人はメイド長推薦のメイドだ。そしてそんな三人はゆっくりと人を待っていた。


「もうすぐ来ると思うんだけど……お、来たな?」


 ミチナガが反応したと同時に他の二人も直ぐに反応した。ミチナガと反応したタイミングが同じというのは本来であれば遅すぎることだが、この男の能力であれば仕方ないだろう。


「ようクラウン。久しぶりだな。しっかり人目につかないように隠れておいたか?」


「ああ…仕事をこなしながらぼんやりとな。人と喋るのは久しぶりだ。」


 目の前に現れたのは元十本指のクラウンだ。現在はミチナガの手下となり、世間の記憶からなるべく忘れられるように特別任務をこなしながら誰もいない場所でひっそりと暮らしていた。そんなクラウンからミチナガはいつの間にか預けていたスマホを受け取った。


「あ〜懐かしのスマホちゃん。しっくり来るわぁ……」


「それで?旅に出るってことだが目的地はどこだ?」


「ん〜?え〜とね…ここ!ここに転送してくれ。」


 ミチナガがスマホのマップで地点を指名すると怪訝な表情を浮かべるクラウン。何度か本当にここで良いのか確認するが、ミチナガは問題ないと言い張る。


「よくわからんけどまあいいか。それじゃあ全員手を繋げ。離すなよ?それじゃあ…」


 クラウンは転移能力を発動させる。その瞬間ミチナガたちの姿は朝靄の漂うセキヤ国から消え去り、次の瞬間にはサンサンと太陽が照らす別の国にいた。しかし妙に太陽の光がよく当たるし、見晴らしも良い。


 その転移した場所がどこか直ぐに全員わかった。そこは民家の屋根の上だ。しかしミチナガ以外なぜここに転移して来たのか全く理由がわからない。


「なぜ屋根の上?」


「俺は指定された場所に転移しただけだ。」


「ハハハ…すまんすまん。ここは…俺が初めてこの世界に来たところだ。あの日…俺は突然ここに来たんだ。しかもパジャマ姿でな。ほんの数分の出来事だったが懐かしいと思うくらいにはちゃんと覚えていたみたいだ!」


 ミチナガは初めてこの世界に来た時のことを思い出す。訳も分からずこの世界に来て、身につけていたのはパジャマとこのスマホ一つだけ。しかも肝心のスマホは課金しなければ何の役にも立たなかった。


「今回は俺の思い出旅行って訳だ。退屈かもしれんがついて来てくれ。」


「退屈なんてことはありません。このような旅についてこられて幸せでございます。」


「ハッハッハ!おべっかが上手いな。さて、それじゃあ降りるか。降りるのは確かこっちの…」


「誰だ!うちの屋根の上で騒いでいるのは!!」


「やべっ!今日は人いたのか!急いで降りるぞ!!」


 ミチナガは駆け足でその場を立ち去る。少しグダついてしまったが、ミチナガの思い出の旅の始まりである。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 遂に…最・終・章!!?…はぁ…嬉しいような悲しいような…まぁ作品が終わっても、柴犬先生の気まぐれで、番外編の登場や、誤字改稿もあるから、読みなおそー!!!…途中からの感想参加ですから、この…
[一言] 最終章に突入か…(இдஇ )‧º·˚. 更新楽しみしてたけど、更新される度に終わりが近づくと思うとなぁ…って思ってしまう。 何時も、楽しく読ませて頂いております。
[一言] 最終章か〜。終わるのが寂しいけど、ここまでコンスタントに書き続けているのがホント有り難いです。
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