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第440話 動き出す巨悪

 国の中央から突如感じたプレッシャーはますます大きくなっていく。それはイッシンとフェイが危険視するほどのものであった。これほどの危険を放っておくわけにはいかない。イッシンとフェイはすぐに動いた。


「ケン。今から危険そうな場所に君を送り込む。君ならバレずに探ることも可能なはずだ。」


『ケン・いいですけどどうやって…』


 使い魔のケンが許諾するや否や、突如目の前に空間の裂け目が現れた。イッシンが送り込みたい先まで空間を切り繋いだのだ。転移対策もいくつかやられているはずだが、イッシンにかかればそんなことは関係ない。


『ケン・それじゃあ行ってきますね。あ、一応一人残して行きます。』


『ケン#1・後は任されます。いってらっしゃい。』


 ケンは自身の眷属を残して空間に飛び込む。すると一瞬のうちに龍の国の内部まで侵入することができた。イッシンはケンが無事潜入に成功したことを確認すると切り繋いだ空間を閉じた。


 その頃、法国でもフェイが同行している使い魔の白之拾壱を転移魔法で法国内部に送り込んだ。送り込まれた先は法国の王城の通路である。ただ内部情報に詳しくないため、ただひたすらに歩いていくことしかできない。


『白之拾壱・ここは右と左どっちだろうなぁ…。右かな?左かな?…右!』


 白之拾壱は勘でただひたすら進んでいく。ただ王城のつくりはだいたいテンプレートがある。それを考えながら歩いていけば、なんとなくでもこうして玉座の間にたどり着く。白之拾壱は自身を褒めながらとりあえずバレないように内部へ侵入できる通路を探す。


 しかしネズミ一匹入る隙間がない。目の前の大きな扉を開いて中に入るしか方法がないのだ。誰もいないのであれば普通に扉を開いて入れば良い。ただこの扉の先には何かいる。何か得体のしれないものがこの先には間違いなくいる。


『白之拾壱・まあ行くしかないんだけどね。間違いなくこの先の奴らが今回の件の首謀者だし。ということで他の場所の偵察は頼んだよ。』


『白之拾壱#2・ラジャーですよ。』


『白之拾壱#5・うまくやっておくんでよろしく。』


『白之拾壱・全員自分のはずなんだけど眷属によって個体差出るよなぁ。まあいいや、3分経ったら侵入するからそれまでの間に各自散らばって…』


「まあまあ、みんなで一緒に中に入ってお茶でもしないかい?」


 突如背後から聞こえた声。とっさに振り向いたがその次の瞬間には周囲の景色までもが変わっていた。白之拾壱は確かに今、背後を振り向いた。だが先ほどまで目の前にあった大きな扉が今は振り向いた背後にある。


「急にいなくなったと思ったらなんだそいつらは。客かクラウン?」


「外でモジモジしていたから連れてきちゃった。客人だからお茶でも出してあげて?」


「無理だな。ちょうど飲み終わったところだ。それにそろそろ仕事の時間だ。」


「ドクもベビーも冷たいなぁ。ごめんねぇ。そういうことだからこのクッキーでも食べてゆっくりして。」


 クラウンと呼ばれたこの部屋に白之拾壱たちを連れてきた男が懐から取り出したクッキーを渡してきた。だが白之拾壱はそれを受け取らない。それよりもこの状況下を把握することが大切だ。


 おそらくこのクラウンという男は転移能力を持っている。玉座の間の外にいたのに突如玉座の間の中に入っているのが証拠だ。そして目の前には7人の男女がいる。そしてそのうちの一人はドクと呼ばれ、もう一人はベビーと呼ばれていた。そしてその名には聞き覚えがある。


『白之拾壱・お前たち…お前たちは十本指か…』


「おお!覚えていたか!いやぁ最近影が薄くなっていたから忘れられたかと思ったぜ。よかったなキュウ。俺らの功績だぜ。」


「僕たちもこれで有名人だ!やったねベビー。」


 キュウと呼ばれた子供とベビーと呼ばれた大男の二人はハイタッチする。そんな軽いノリを前に7人は笑みを見せる。ただその状況下で笑みを見せる7人が実に不気味であった。


『白之拾壱・お前たちが…この件の首謀者か。一体なにを…』


「あん時も言っただろ?世界征服さ。俺たちは十本指。我らが女王ミサトのために動く十本の指だ。」


「今は7人しかいないけどね。法国と龍の国落とす時に3人減っちゃったみたい。悲しいけど大義のためだから仕方ないよね。」


『白之拾壱・ミサト……まさか死神ミサト・アンリか!!』


「お!まじかよ!ミサトのことまで知ってんのか!さすがは世界最高の商人セキヤ・ミチナガの使い魔だ。褒めてやる褒めてやる。」


 これで全てが確信に至った。今回のこの法国、龍の国にいた計10億の敵はこいつらの仕業であると。そして魔神の石碑で確認された死神ミサト・アンリがこの十本指のリーダーであると。本当の敵はこいつらであると全てがわかった。


 そしてこのことはリアルタイムで各国に全て通達している。そして今の戦況も白之拾壱は理解している。だからこそ多少の余裕がある。


『白之拾壱・確かにすごい敵の数だった。だけど相手が悪かったね。すでに半数は討伐済みだよ。今日中には10億の敵も全て片付く。君たちの世界征服の野望はいともたやすく崩れ去る。』


「ふむ、それはさすがに早計だな。魔神相手に10億の雑魚は意味がない。だとしたらなぜ法国と龍の国は落ちた?物事はしっかりと考えるべきだ。」


「さすがはブックさんですね。ほら、考えてみなさい。」


 クラウンと呼ばれていた男は嬉しそうに笑う。ブックと呼ばれていたのはフードを深くかぶって顔を隠しているが、声質と体つきからして女性だ。そしてそのブックが言った言葉をしっかりと考える。


 ここにいる十本指と呼ばれる7人の男女は、はっきり言って戦闘力は低い。魔神どころか魔帝クラスにも勝てないだろう。しかし現にこうして法国の玉座の間を彼らが占拠している。法神ザラブゼルの姿も見えない。龍の国も似たようなものだ。


 つまり何か隠し球があるということ。しかしそれが何かはまるでわからない。するとクラウンと呼ばれていた男が急に消え、次の瞬間一人の人間を連れてきた。


「特別大ヒント!この男を見て何かわかるかな?シンキングターイム。」


 なんとも楽しげに現れたクラウンの傍にいる人間。その人間の姿を見た瞬間全て理解した。なぜ彼らの女王が死神という魔神の名なのか、どうやって法国と龍の国を落としたのか。その答えはクラウンの隣にいる何も語らぬ死人のような人間、いや死人そのものが答えであった。


『白之拾壱・天罰…アルスデルト神父。お前たちは死人を生き返らせることができるのか。じゃあ外の10億の敵も……』


「大正解!よくわかりました。ではご褒美にもっといい情報…いや問題を出してあげよう。では問題です。一体我々は何年前まで死んだものたちを復活できて…一体どの強さまで復活できるでしょうか。」


『白之拾壱・まさか……』


「そのまさか。アンリに制限なんてない。外の10億は余興さ。ここから本当の世界征服が始まる。さあ…これから何千、何万という魔帝クラスの強者たちと、何百という魔神が地獄の底から蘇り生者を食らうぞ。7人の魔神同盟だったかな?そんなものが一体どこまで耐えられるのかな?」


 十本指たちは大いに笑う。彼らの言う世界征服。それは夢物語ではない。そんな夢物語を現実にするだけの力が彼らにはある。


 そしてそんな彼らの言葉を裏付ける証拠を龍の国の地下に侵入したケンが見つけた。大量の貯蔵機の中に浮かぶ強者たちの姿。彼らは死者の国から蘇ったかつて世界を牛耳っていた猛者たちだ。そして彼ら全てが蘇ったその時、真の戦争が始まる。


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― 新着の感想 ―
[一言] 蘇生側の能力に死神ってつけるとか世界がミスリードさせようと圧力をかけている
[良い点] なーんだ死神と指連中大したことないじゃん!…と言うは易しなのでこれだけ言っておきます!対処法は死…馬鹿ミサトに使い魔マザーを飲ませるだけ!…これだけで能力は無効!ざまぁ!…そもそも死の軍団…
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