表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
405/573

第392話 神風特攻

 12英雄のガリウス相手に善戦していた法国の兵であったが、エヴォルヴの登場により突然の挟撃を受け、前線は崩壊した。法国も前戦を立て直そうと新たな兵を突撃させるが、その前に大盾部隊が新しく前線を構築してしまったため、元の前線で戦っていた仲間たちと分断されてしまった。


 この大盾部隊により分断に成功した法国兵を掃討することでガリウスたちに休息時間を設けることができた。だが、ガリウスはまだ戦うと休憩もせずに戦おうとしている。


『ちょ、ちょっと待ってください。少しで良いから休んで!何をそんなに…』


「この部隊の総隊長は怨敵なのだ。奴だけは許してはならない。だから私が…」


『わ、わかりましたから!とりあえず一旦休んでください。まだその総隊長は奥の奥にいますから。そこまでの道は我々が作りますからそこまで力を温存してください。』


「だが……いや、すまない。少し落ち着いた方が良いな。冷静さを欠いていた。しばらく仲間たちも休ませたい。その間頼めるか?」


 どうやらガリウスはその総隊長とやらに並々ならぬ気持ちがあるようだ。だがその真意を聞いている暇はない。とにかく今は前線を維持し、ガリウスたちを休ませることが先決だ。それに少しでも休んでもらわないと前線が維持できなくなる。


 最初にミチナガたちが攻撃を仕掛けた方は敵の背に当たる。そのためこれといった強力な戦力は数少なかった。しかしガリウスのいたところは敵の主戦力が集まっている。魔王クラスがちらほらいるこの前線では使い魔たちであっても攻め込むことができず、前線を維持することでやっとだ。


 今も崩壊しかけた大盾部隊が、数に任せて前線を再構築した。だがこのままではジリ貧だ。すぐに今も待機を続けている白獣たちを招集して魔王クラスの相手をしてもらう。そしてそれに伴い蛍火衆も動き出した。


 白獣たちは大急ぎでガリウスたちのいる方へ。蛍火衆はミチナガのいる側から攻め込む。すると蛍火衆が戦闘に参加した途端エヴォルヴたちの進軍速度が大きく上昇した。蛍火衆にとってエヴォルヴたちと法国の混戦は実に戦いやすい環境だ。戦いで混乱している最中に混乱に乗じて確実に法国の兵を仕留めていく。


 白獣たちもガリウスの元までたどり着くと、エヴォルヴの大盾部隊の前線が崩壊しそうになった場所へ突撃していく。白獣たちは身体強化魔法を得意とする。そのためその身体能力を生かした真っ向勝負を得意とするのだ。ミラルたちもその力を遺憾無く発揮している。


 これにより使い魔たちによる前線はさらに上がっていく。法国の兵としては両側から責め立てられているため逃げ場がなく、士気が下がりつつある。だがその時法国に動きがあった。物資や魔法を用いて瞬時に強力な壁を作成しだしたのだ。


 しかも壁を作った上にそれを要塞化しようとさらなる魔法を発動させ始めた。しかしその壁の向こうにはまだ多くの法国の兵たちがいる。つまり壁の外の彼らは見捨てられたのだ。そしてこの要塞が完成するその時まで時間稼ぎの生贄として捧げられた。


「あれはまずいぞ。あれが完成したら突破するのに大きな犠牲が…」


『あれが噂の簡易拠点魔法ってやつか。かなりの魔力食う上にそれなりの物資も必要になるからある程度力のある国じゃないと使えないっていう…』


『すごい勢いで作られていくね。しかも大きさが増すたびに強固になっていくのがわかる。なんとかしないとダメだね。』


「私が出る。私が突っ込めばしばらく時間が…」


『ダメダメ落ち着いて。大丈夫だから。僕たちには…神風がついている。ああ、もう来たみたい。』


 そうエヴォルヴが指差す方向を見るガリウス。そこには太陽に重なる影があった。それはこの戦闘の最中、誰にも気がつかれる事なく待機していた。


『地上班より通達。敵拠点を攻撃せよとのことです。仕事の時間です隊長。』


『うむ。それでは地上部隊のために我々が敵拠点に風穴を開けるぞ。突撃せよ。突撃せよ!』


『『『『了解。』』』』


 空を舞う10の影が地上を見据える。その白銀の機体に降り注ぐ太陽が機体に描かれる桜をきらめかせる。その機体は桜花だ。従来のものでは叶わなかった通常飛行を現在では短時間ではあるが可能にした。そして戦闘が始まった頃にどこからともなく飛んで待機していたのだ。


 そんな桜花は今まで使い魔たちが乗っていたものよりもひとまわり大きい。桜花のコックピットにはエヴォルヴが乗っている。ただ費用削減のためなのか第5世代のもう使われなくなったものを使用している。


 だがそれも仕方ないだろう。この桜花たちのこれからの行動を考えれば。そんな桜花はサクラの魔力によって生み出すことができる。既にスマホの中では長い間貯め続けた桜花が百数機ほど眠っている。この10機でも足りなければさらなる桜花が出発の準備をする事だろう。


 桜花は改造に改造され、桜花改を改め、桜花真に至った。なおこの桜花真の改造費だがミチナガの耳には入っていない。


 使用すれば桜の花びらのように散るこの桜花真にかけた金額を聞けばミチナガはきっと卒倒することだろう。そしてそんな桜花真は地上の目標に狙いを定め、ロケットエンジンを点火した。


 その桜花真の初速はこれまでの桜花とは比べ物にならない。目の前から一瞬にして消え去る桜花真は軽々と音を置き去りにして地上へと放たれた。


 地上にいるものたちは空に何か影があることだけは認識できた。しかしその認識した瞬間には既に桜花真は地上に到達していた。


 地上に激突した桜花真はこれまでの数倍の爆発を巻き起こし、10機の桜花真で数千人に及ぶ犠牲者を出した。そして法国が一生懸命作成していた簡易拠点は一瞬にして跡形もなく消え去った。


 爆発に巻き込まれたものたちは飛来する音を聞くことはできなかった。周囲で難を逃れたものたちだけが爆発の音を聞いた後に飛来する音を聞いた。そして空から飛来した桜花真は法国の兵にさらなる恐怖を覚えさせた。


『敵拠点の破壊を確認。新たに拠点が作成される動きなし、見事な働きでした。……ってどうせこの報告は聞こえないよなぁ。復活したら一応次の桜花の準備しておいてねぇ。ってこれも聞こえないや。』


『遊んでないで今がチャンスだよ。敵は桜花真のおかげでさらに混乱している。今が攻め時だ。一気に前線押し上げるよ!』


『『『『おお!!』』』』


 使い魔たちは進軍速度を急激に早める。法国としてはあまりに好調すぎる使い魔たちのエヴォルヴ部隊に太刀打ちできず瞬く間にやられていく。一部魔王クラスの猛者たちが兵を引き連れて勝負に出るがすぐに蛍火衆なり白獣が現れ、やられていく。


 そんな様子を遠くからミチナガが眺めている。最初は勢いよく駆け出していたが、ミチナガが戦いに参加したところで邪魔になるだけだ。だから使い魔たちが行ったところでミチナガは立ち止まりその様子をただ見ている。その周りでは多くの使い魔たちのエヴォルヴがミチナガの身を守っている。


「いやぁすげぇな。強くなったとは聞いていたけどここまでとは。というかみんなもこんなにたくさん残らずに行って良いのに。」


『いや、我々非戦闘組なんで。まあ戦闘組もそっちにいますよ。俺は飯作るだけですから。』


『戦闘組と言われても遠距離型なんでここにいるのが一番なんですよ。』


 シェフもエヴォルヴに搭乗しているが料理しかしたくないとここに残っている。その横で弓矢を持っているハクは前線に出ても戦いづらいからとここから様子を見ている。そしてその後ろでは何やらテンション上げてタップを踏んでいるエヴォルヴがいる。きっと中にいるのは使い魔のダンだろう。


「まあ今の所人手不足は起きてないからいいか。でも…ホタル。お前は行かなくて良いのか?」


「僕戦っても燃費悪いんで。それに混戦は苦手で…暗殺もろくにできないんですよ。」


 蛍火衆の当主であるホタルだが、今もミチナガの横でシェフが作った料理を食べ続けている。蛍火衆の当主であるから戦わない、というよりもホタルが喋った理由が正しいだろう。ミチナガはホタルの戦っている姿は見たことはないが、かなりの力を秘めていることは察している。


 だからホタルもいざという時には戦えるようにと今も食べ続けてエネルギーを蓄積しているのだ。


 だがホタルの出番はなさそうだ。前線の一部が法国の中央本隊の元まで到達したらしい。これよりこの法国の大部隊との最終決戦は近いようだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ミチナガ側の爽快感!これを求めてました! [気になる点] ガリウスさんもしも英雄の国にいられなくなったらセキヤ国に所属すると思います。 [一言] 次回を待ってます!では!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ