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第380話 ナイトとムーンと召喚者


 新型コロナの再蔓延に加え、九州での水害…

 健康管理と自然災害に対する備えを考えた方が良いですね。ただこのレベルの水害は対策のしようがないとは思いますが…

『ムーン・コーヒー入ったよ。それからおやつも用意したから。』


「あぁ……」


『ムーン・もう!そんな腑抜けた返事しない!暇だけどしょうがないでしょ!たまには休暇も必要だよ!』


「あぁ…」


「だめだこりゃ。」


 ナイトとムーンは9大ダンジョン、巨大のヨトゥンヘイムの入り口の前でのんびりとくつろいでいる。しかしナイトにはこののんびりとした時間があまりにも退屈すぎて腑抜けてしまうようだ。


 すでにミチナガがこの地から離れて数日が経過した。この地に残っていたアレクリアルの兵も緊急事態だということで全員出動した。つまりこの地に残っているのはナイトとムーンだけだ。まあナイト一人いればこのダンジョンは十分管理できるだろう。


 すでに8割以上このダンジョンは解放されている。ナイトとしては90階層以降を探索したくてたまらない。ナイトの予想ではおそらく100階層以降もこのダンジョンは存在していると考えている。90階層でこの強さならば100階層以降はどれほど強くなるのかと胸の高鳴りが抑えられない。


 しかしそれでも抑えなければならない。90階層以降はナイトでも一度潜れば数日は帰ってこられない。モンスターが強すぎるのでモンスター一体一体に時間がかかってしまうのだ。


 そうなればこのダンジョンの地上がどうなるかわかったものではない。まあそんなすぐにダンジョンからモンスターが溢れかえるとは思ってはいないが、この世界でダンジョンに精通しているものがいないため、どの程度でダンジョンからモンスターが溢れかえるかまるでわからない。


 だからナイトは日に数度、上層と中層を探索してモンスターを狩るのだ。ナイトにとってはあくびが出るほど退屈な戦いの日々。しかしミチナガに頼まれたので、友の頼みだからとちゃんとこなしている。


 今日もこのコーヒーとおやつのフルーツタルトを食べたら中層のモンスターの間引きだ。のんびりとおやつに舌鼓を打ち、軽くストレッチをしたのちにダンジョンに潜ろうとする。しかしその時、ナイトはダンジョンに背を向けた。


「…何か連絡は来ていたか?」


『ムーン・人が来るなんて聞いていないよ。そこらの村人が迷い込むはずもないし…敵だね。5人…7人か。隠密は得意みたいだけど大したことないね。』


 しばらくダンジョンに潜るのは中止かと予定を変更するムーン。その隣でナイトは笑みを見せた。野獣のごとき笑みはこれから来る敵がどれほど自身を楽しませてくれるかと期待している。


 そんなナイトとムーンは待っているのもなんだとこちらから侵入者の元へ近寄った。敵としては驚いたことだろう。なんせ敵としては完璧に身を隠し、気配を消しているのにいともたやすく見つかってしまったのだから。


 ナイトとムーンが降り立った先にいたのは5人の男たち。1人以外全員が武器に手をかけているがナイトの実力を察し、決して武器を抜かない。そんなナイトの肩に乗っているムーンは誰もいない方向へ手を振った。すると誰もいないと思われた場所から2人の人影が現れた。


「まさか我々にまで気がつくとは……何者だ。」


「ミチナガ商会所属…ナイトだ。」


『ムーン・同じくムーンだよ。そちらさんは法国の兵士だね?残念だけど身柄は拘束させてもらうよ。まさか…逃げられるとは思ってもいないよね?』


 ムーンの言葉に全員たじろぐ。場を緊張の糸が張り詰めた。しかしその張り詰めた空気を、なんとも空気を読まずにぶち壊す男がいた。先ほどから唯一警戒も何もしていない男だ。


「だぁぁ…なんだよなんだよ。あんたらバレないように侵入するんじゃなかったのかよ。ダッセェなぁ。で?どうすんの?こいつ殺すの?」


「マサキ殿…これは相手が悪すぎる。おそらくこの大男は魔帝クラス。しかも上位だ。」


「だからなんだよ。魔帝だか何だか知らねぇよ。所詮はこの世界の人間だろ?俺みたいな選ばれた人間とは格がちげぇんだよ格が。わかるか?お前らなんかとは違うんだよ。仕方ねぇなぁ…ビビり切ったお前らの代わりに俺がやってやるよ。神様に選ばれたこのマサキ様がこのチートでやってやるよ!!」


『ムーン・チートだの何だの…魔帝クラスのこともよくわかっていないし…あいつ多分ボスと同じ転生者だ。気をつけて、特殊な能力持っているから。ものにもよるけど最高で魔帝クラスの実力はあると思うよ。』


「そうなのか…ミチナガと同郷のものなら殺さない方が良いか?」


『ムーン・そこは別にどうでも良いかな?まあどうせなら生きたまま捕まえよっか。あの手のタイプは簡単に口割るから情報聞き出し放題。』


 どうやら7人のうち1人はミチナガと同じ転生者のようだ。久しぶりに出会った転生者ということで若干の喜びを見せたムーンだが、明らかに敵対しているため情けはかけない。一方ナイトはもしかしたら強いかもしれないという情報を聞いて胸を躍らせている。


「あんた強いみたいだけど悪りぃな。俺のチート能力はあんたを理不尽に殺すぜ。」


「そうか…楽しみだ。」


「けっ!余裕かよ。まあいいや、じゃあ俺の能力の前に…ひれ伏しな……」


 そういうとマサキは何やら詠唱を始めた。そんなマサキを守るために他の6人はマサキの前に立ち、マサキを守った。ナイトとしては何か終わるまでゆっくりと待つ気だ。ムーンとしては正直この召喚詠唱中に10回は皆殺しにできるなと呆れた笑いをしている。


「…我が求めに従え!来い!我が召喚獣!!」


 マサキが手を挙げると周囲から複数のモンスターが現れた。現れたモンスターはトロールやコカトリスといった少し珍しめのモンスターだ。しかも体格や色から考えるにナイトも見たことがない種類のようだ。


「こいつらはただのモンスターじゃないぜ。俺のために国が改良に改良を重ねたモンスターだ。俺はな!あらゆるモンスターを召喚することができる召喚士だ!しかもモンスターをテイムすることもできる。この先にとんでもない奴がいるらしいからな。そいつをテイムして俺がこの戦争を終わらせてやる!お前は俺の栄光の足がかりだ!やれぇ!!」


 モンスターたちがナイトに駆け寄る。コカトリスはナイトへ石化の邪視を発動する。さらにそこへ合わせたようにトロールがその手に持つ巨大なハンマーでナイトの腹部を穿つ。そこへさらなるモンスターたちが襲いかかる。


「…なるほど。この程度か。」


 ナイトは腹部をハンマーで殴られたとは思えない表情でため息をついた。しかもよく見れば殴られたというのに1ミリもその場から動いていない。肩に乗るムーンでさえも涼しげな表情だ。


 するとナイトは自身の両目の前に魔法陣を形成した。そしてそのままモンスターを睨みつけると全てのモンスターたちがたちまち石へと変わってしまった。


「……は?……え?お、お前!何をした!!」


「新種ということだから石化しておいた。あとで石化を解除するから回収しておいてくれ。」


『ムーン・こっちのことまで気遣ってくれちゃって…ありがとね。今日の夜はお肉追加しておくよ。』


「…久々に焼き鳥が食べたい。」


『ムーン・あ、おつまみみたいな夕食にしようか。お酒も飲んでゆっくりしようね。』


「お、俺を無視するなぁ!!」


 喚き出すマサキを尻目にムーンはどんどん石化したモンスターを回収する。わなわなと震えるマサキをよそに、他の者たちは格の違いを見せつけられ震え上がっている。そしてナイトは実につまらなそうにため息を漏らした。


「これでお終いか?それならお前らを捕らえる。」


「ふ、ふざけやがって…仕方ねぇ……まだテイムしていないからこいつを出すつもりはなかったが…お前に真の恐怖を味あわせてやる。」


 マサキは懐から本を取り出したそこにはいくつものモンスターの情報が記載されている。マサキはその中から一体のモンスターを選んで詠唱を始めた。


 詠唱は10分以上かかるものであった。さすがのナイトも待ちきれないという表情を見せる。しかし退屈しのぎにはなるかもしれないと回収を終えたムーンとともにトランプをしながら待っている。


 そしてようやく詠唱を終えたマサキがその手を挙げると巨大な魔法陣が形成された。先ほどまでとは明らかに格が違う。ナイトも期待に胸を膨らませる。


「絶望するが良い…いでよ!恐怖と死の象徴!全てを破壊し貪る女王!いでよ!アラクネ!!」


『ムーン・それもう倒した。』


「は?」


 マサキの気の抜けた声とともに魔法陣は消え去った。アラクネとは以前ミチナガに建国祝いにレンガの原料をプレゼントするために倒した神話級のモンスターだ。そんなものを召喚できるのかとムーンは内心驚く。


 しかし召喚するはずのモンスターがいないのであれば召喚することはできない。場をなんとも言えない空気が包み込む。そんな中ナイトは期待はずれだと肩を落とした。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 魔帝〜魔神クラス複数名って本当に凄いんだなぁと [一言] 理由の一切を無視してロボットのように判断する監獄神が一番厄介かもしれない
[良い点] さあさあ生かす価値無しむしろ生かすと厄介なマサキくんとやらをミチナガの前でいぢめキルしてやって新しい使い魔を産み出すのです!ハハハハハハハハハハhahahahahaha! [気になる点] …
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